第1話 不幸な人間6

「……つ、着いた……」


 駅から出て、どれくらい経っただろう。

 家とは違う方角に足を進め、ようやく辿り着いた『願いを叶える心霊スポット』は――交通量の多そうな四辻の交差点だった。

 深夜であったとしても、車の往来がありそうな大通り。

 偶々なのか人っ子一人、一台の車の影すら見られなかった。けれど、

「あ……」

 交差点すぐの道端には、幾つかの花束やお菓子など、供養の残り香がある。

 それだけで、この場所が『心霊スポット』と呼ぶに相応しい場所なのだと再認識させられた。

 動画で見た内容よりも生々しい現実。

 願いを叶える為に来た人もいたのかも知れない。

 もしくは全くの無関係で……ただ事故に巻き込まれた人もいたのかも知れない。

 そんな人達のことを思うと、胸が痛む。

(でも、私にだって叶えたい願いはある)

「……ふぅ」

 ザワつく感情こころを落ち着かせるため、深呼吸を一つ。

 そして私は改めて『心霊スポット』での〝作法〟とやらを思い起こす。

 動画で話していた内容はどこか仰々しいものだったけれど、簡単に要約すると四つに分類されていた。


 壱――〝決められた場所〟を通ること。

 弐――〝願い事〟は人目を避けた時刻に行うこと。

 参――〝ナニ〟が遭っても、『中央』に留まること。

 肆――〝願い事〟は四回唱えること。


 やたら漠然としたところと、具体的なところが混在している不思議な〝作法〟だと思う。

 それでも手順を守ることで『願い』を叶えてくれるのなら、御の字だ。

 意を決して、私は四辻交差点の中央を目指して歩き出した。

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