溶ける夏 アイスバース
自主企画「〇〇バース小説」
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330667784496459
⚠️BL
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真夏の何にもない平凡な日。いつもの様に友達の隼也とクーラーを付け始めた僕の部屋で勉強をしていた。部屋はまだ涼しくなく、暑さが残っている。
「あち〜」
そう呟きを零す隼也はワイシャツの第二ボタンまで開けて、団扇を扇いだ。暑さのせいで紅潮した頬や首筋を伝う汗が僕の視線を奪う。こんな気持ちを忘れる一心にペンを動かす。ペンの走る音やエアコンの機械音、団扇の扇ぐ音、外の蝉の声が静かな部屋に響く。お茶を入れたコップは飲み干して氷だけが残っている。コップはガラス製のせいで表面に水滴ができ、小さな水溜りを作り始めた。周りの音が聞こえなくなるぐらい深く集中していると、突然温かい手が僕の手を包んだ。驚き顔を上げると隼也がじっと僕を見つめていた。
「なぁ、好きな人いるの?」
首を傾げながら言う隼也にドキッとする。まるで心を見透かすような瞳に不安に思いながらも、好きな人という言葉に頬を赤らめた。だって好きな人は目の前にいるのだから。
「いる、よ。」
辿々しく言うと隼也はただ微笑んだ。その微笑みはどう言う意味なのか分からなかった。疑問に思いながらも隼也の言葉を待つ。
「俺も好きな人がいるんだよね。」
隼也は少し間を空けてそう言った。一瞬驚いたが平然を装い誰なのと尋ねた。隼也は口元に手を持っていき秘密かなと怪しく微笑んだ。僕は気になりどんな人なのか聞こうとすると、僕の好きな人を教えてくれたら教えてあげると言って躱わされた。僕は悩んだ。ここで隼也のことが好きって言ったのに、実は別の人が好きだなんて言われたら、僕は……。気になるけど自分を傷つけてまで知りたくはない。多分隼也の好きな人については知らない方が幸せだと思う。
「まあ、いいや。隼也の好きな人については。」
「ふ〜ん、意外と意気地なしなんだね。それは俺が別の人が好きなのかもしれないから?それとも……」
『アイスかもしれないと思った?』
隼也の言葉に驚き、固まった。“アイス”それは最近話題になっている言葉だ。アイスというと氷やアイスクリームなどを思い浮かべるだろう。でも違う。アイスとはとある人間のことを言っている。そのとある人間とは体温が少し低く、“ジュース”と呼ばれる人間と結ばれると溶けて死んでしまう、そんな特徴を持つ者だ。
「今回の場合は前者の方が正解かな? だってアイスかどうかより付き合えるのか付き合えないのかの方が重要だからね。」
僕の全てを見透かすような瞳に恐怖を覚える。隼也は僕の好意に気づいているのか?
「驚いているの? 俺への好意がバレていることに。気付いてないとでも思っていたの? バレバレだよ。よく俺のこと見ているもんね。」
「そ、それは……」
「大丈夫、安心して。俺も好きだから。両思いだね。」
「両思い……」
「そう、両思い。大丈夫、俺はアイスじゃないから。」
優しく僕の頬を包む手は温かかった。僕は隼也のことを好きでいていいんだ。
「…僕も、隼也のこと好きだよ。」
その言葉と同時に蝉の鳴き声は止み、部屋は静寂に包まれた。飲み干したコップの中で輝く氷がカランと小さく音を立てた。
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[あとがき]
この物語はハッピーエンドでしょうか?
それともバッドエンドでしょうか?
皆さんはどう思いますか。結末がハッキリと書かれていないから、どちらかなんて分かりませんよね。まぁ、バッドエンドが嫌いな人はハッピーエンドかもしれませんが。でもこれだけは絶対に正しいことです。
それは『隼也は絶対にアイスではない』ということ。
このことは確かです。でも主人公である僕はどうでしょうか? 主人公に関しての情報は隼也が好きと言うだけ。もしかするとアイスなのかも…? でもアイスはジュースと結ばれると死ぬのですから、隼也がノーマルの可能性も否定できません。
私はバッドエンドを想像して書きました。最後の静寂の中で鳴る氷の音。死を思わせるような感じにしたのですが、読み手によっては変わるでしょう。あやふやな終わり方は皆さんに色んな想像をさせる事が出来るので好きです。
この物語はここで完成ではなく、読者である貴方が結末へと導くお話です。皆さんの想像でこの物語を完結して下さると嬉しいです。
読んでくださりありがとうございました。
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