あべこべ世界で見下されている奴隷達の『価値の低いスキル』を、俺のExスキル『能力100万倍』で、超優秀なスキルに変えちゃいます!ただし『性欲100万倍』という、極悪な副作用も付加されますが...。

たけ

第1話 始まりの洞窟

 俺は秋枝アキエダ智也トモヤ。19歳で関東国際医療大学の作業療法学科に通っている。今年の春に岐阜から東京に出て来て、一人暮らしを始めたばかり。


 東京って本当にすごい街だよ。岐阜とは雲泥の差だ。電車やバスが次から次へと走ってくるし、駅は迷路みたいに複雑だ。


 大学では少しずつ友達もできてきたけど、まだ馴染めていない感じがする。医療系の大学だから全体的に女子が多い。


 俺が専攻している保健学部作業療法学科に、男子は40人中10人しかいない。そのうち俺を含めて3人は地方出身で、他の7人は東京生まれ東京育ちだ。


 女子と話す機会も増えてきたけど...。


 最近、すごく可愛い看護学科の女の子から、声をかけられることがある。でもそれは罠だと思う。どんな罠かは知らないけど。


 俺なんかに興味があるわけないし、何か企んでるんじゃないかと疑ってしまう。そんな感じで警戒心ばかり強くなってしまった。


 そんなに卑屈にならなくてもと思うかもしれないが、自分で言うのも何だけど、俺は見た目が最悪なんだよね...。


 背は低くて目は細い。鼻は丸くて、食欲旺盛で太り気味。モテ要素ゼロって感じ。昔から「ブーちゃん」ってあだ名で呼ばれている。子豚のブーから来てるらしい。まあ否定できないけど。


 はあー、俺も可愛い女の子と付き合いたいな。でも...こんな見た目だし。「性格が良ければ外見なんて!」と励ましを受けるが、じゃあ付き合ってくれよ!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 季節は、少しだけ大学生活が慣れてきた6月。授業とほぼ毎日バイト兼、教授のお手伝いに呼ばれている。


でもまだ一年生の俺が、なぜ毎日のように教授に呼ばれるかと言うと、実は俺にはすごい特技があるからだ。


何と俺は、すべての言語が理解出来るし、話すことも可能だ。


 それを知った強面コワオモテの佐々木教授に、毎日の様に翻訳のバイトを手伝わされている。


 ただ、しっかりと報酬はくれるし、ご飯もおごってくれる。


 フランス語やドイツ語は時給で3500円。ポルトガル語やスペイン語は、時給4000円をくれる。高額だ。ただ医療系の情報誌だけあって英語やドイツ語、フランス語が多いかな。


 俺がなぜ、すべての言語が話せる様になったかと言うと、それは今から五ヶ月ほど前にさかのぼる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 五ヶ月前。俺の実家には裏山があり、手つかずの森林がそのままの状態で放置してある。松茸山でもなく密猟が来ることも無い。そんな裏山で、ぼっちキャンプを楽しむのが俺の趣味だ。


 東京に旅立つ日が近づいてくると、今までお世話になったこの山が無性に恋しくなった。だから今日、高校生活最後のぼっちキャンプを決行することにした。


 今は、ひたすら奥地を目指し歩き続けている。


 東京に向かう前に、今までキャンプをしたことの無い奥地で、高校生活最後の思い出を作ろうと決め、今日の寝床を探し回っている。


 高校生活最後にふさわしい場所は、なかなか決められない。


 やばい!本当に日も傾いてきた。そろそろ寝どこを決めないと。そんな焦りが出たのか、岩肌に足を取られてしまった。


「うわー!」


 斜面に生えている草や、むき出しの岩や木の根っこに身体をぶつけながら、5mほど下まで転げ落ちてしまった。


「あいたたた...」


 不幸中の幸いなのか骨などに異常は無い様だ。全身擦りむいたけど、骨折や打撲などの痛みではない。手足も動く。ただジーンズがダメージジーンズになってしまった。母ちゃんに怒られそう。


 山肌には木々の根っこが姿を現し、また岩もむき出しになっている。「よくあんな場所から転げ落ちて、大した怪我も無くすんだな」と、他人の事の様に感心してしまった。


 元の場所にまで登って行こうとした瞬間、見慣れない洞窟が右手に見えた。


「あれ、あんな所に洞窟なんかあったか?」


 この山に関しては、親父と小さい頃からうろつき回っている。親父は看護師として昼夜問わず働いているが、休日は裏山に入り、「鍛錬だ!」と山を駆け回るトレイルランニングオタクである。


 ひたすら山中を走り回り、疲れると山草をちぎって持ち帰って来る。


 妹のユメは親父が山に入ると、「うわー今日も山菜か。も―お母さん!肉も出してよ!」と文句を言う。妹よ。あまり肉ばっかり食べると、兄と同じ体型になるぞ。


 この山の隅々まで親父と共に走り回ったが、こんな場所に洞窟など、あった記憶は無い。それも昨日今日で、出来た感じではない。


「一応、洞窟の中を調べてみるか。親父に報告しないといけないし」


 洞窟の中に誰かが隠れていたら怖いので、次に行う行動を口に出してみた。


「熊とかいないよね...」恐る恐る、そーと中を覗いてみると、奥行きは5mぐらいだろうか?こぢんまりとした空洞であった。そして中には熊はいなかったが、三体のお地蔵様が身を寄せ合うように置かれていた。


 三体とも表面がこけに覆われていて、かなり古い物の様だ。ずっと誰にも気づかれずにいたのかな?何だか可哀そうに見えてきた。


 大きめの葉っぱでお地蔵様の表面のコケを落とした後、使い込んだタオルで申し訳ないが、表面を念入りに拭いた。あと、ポケットに入れておいたチョコレートを三等分して、お地蔵様にお供えをした。


「ふ~何とか終わった。すみません。手持ちがないので。また親父と一緒に掃除とお供えに来ます」


 手を合わせながら心の中で念じると、その三体のお地蔵様がピカ―!と急に光り輝き出した。


 な、何だ、爆発するのかと思い、とっさに洞窟から逃げ出そうとすると、お地蔵様が突然俺に向かって話しかけてきた。


「心優しき少年よ。我々が探していた者であろう。奥の扉を開き不遇な扱いを受けて苦しんでいる者達を救って欲しい。奥にある扉の先は異世界じゃ。気をつけるのじゃぞ」


「其方が異世界で、力を発揮しやすくするために三巻の巻物を用意した。其方に力を授けよう!」


「その巻物を開く時、強力な力を得るだろう。その力をナイメール星で不遇な目に遭っている者達を、一人でも多く助けてやるのじゃぞ」


 お地蔵様は話終えると不思議な光は消え、俺が話しかけても反応は帰ってこなかった。仕方なく頂いた巻物を開いてみることにした。


 巻物には「言語能力」「鑑定(ON/OFF)機能付き」と書かれており、最後の一巻には「能力100万倍」と書かれている。言語能力は仲間にも分配することが出来るらしい。


 すると驚いたことに、巻物に書かれた文字が宙を舞い俺の身体に入ってきた。そして俺の脇には、何も書かれていない巻物が三巻残された。


 ど、どう言う事だ?


 驚いていても何も変わらない。俺はお地蔵様たちに言われた通り、ゆっくりと扉を開けてみることにした。


 するとそこは、ここと同じ様な洞窟の中。空気も同じくひんやりしていた。一体何なんだろう?この山の別の出口にでも繋がっているのか、また同じ様な場所に出た。


 ほっとしたのか、がっかりしたのか、複雑な心境でいると、背後に只ならぬ気配を感じた。


 本当にそれは直観的なものだった。ざわっとした胸騒ぎを感じ、斜め後ろを振り返ると、俺より少し小さめの物体が、木の棒を俺に向かって振り下ろそうとしていた。


「おわ!」と反射的に出た、大きな声に驚いた茶色い子供の様な汚らしい者は、一瞬怯んで動きが止まった。その一瞬の隙を突いて、俺はその振り下ろす力を利用して、背負い投げを喰らわせた。


 俺は虐められない様に十年間柔道で体を鍛えたんだ。外見で判断するなよ。


 うちの裏山に変なユーチューバーでも入って来たのか?そう思って、スマホから警察に電話をかけたが、繋がらなかった。


 しょうが無く地面に投げつけた相手をよく見てみると、驚いた。どう見ても人間じゃない。鼻が尖っており、眼が異様にデカい。体臭と口臭が異常にきつく、気持ちが悪くなる。しかも洋服は汚れたぼろ切れしか身にまとっていない。


「し、しかしここは何処なんだ?本当に裏山なのか?」俺は驚き、独り言を呟いた。 すると、俺の呟きに答えるかの様に、声が聞こえた。


「鑑定結果。ナイメール星のケインズ村の外れ」


 どうやら俺の「ここは何処だ?」の声に、鑑定が勝手に反応した様だ。


 超便利な機能だな。

 

 手あたり次第、調べてみると様々なことに答えてくれた。


 えーとこの草は「ファイアリーフ。赤く燃えるような葉を持つ雑草。食べると辛い」とか「スターベリー。星型の実をつける雑草。実は甘くて食べられる」など教えてくれる。


 また面白半分で、異世界と地球をつなぐ扉を鑑定してみたところ、なんと取り外しが可能であった。


 つまり、扉さえ持って帰れば、自分の部屋からこの異世界の洞窟に来ることも出来る様だ。すごく便利。でもお地蔵様には、なかなか会えなくなるのかな?寂しいな。


 あと横たわっている人?を鑑定してみた。鑑定結果はゴブリンと出た。


「ゴ、ゴブリン...」


 本当に小説の様な世界に来てしまったのか?呆然と足元のゴブリンを眺めていると、突然ゴブリンが霧状になり、黒い球体を残して消えてしまった。


「き、消えた?」


「落ちつくのじゃ少年よ。地球と異世界側の洞窟に結界をはった影響で、ゴブリンが消滅したのじゃ。これで二つの洞窟は、其方と其方の仲間にしか入れないし、認識も出来ない。安心して使うがよい。我々は少し休ませてもらう。またいつの日か会おうぞ少年」


 色々とありがとう。お地蔵様たち。


 ただ、何だかんだしていたら、洞窟の外はもう真っ暗だった。


 知らない土地で、暗闇をうろつくのは危険すぎる。それに火もない。


 今、無茶をして洞窟の外に出たところで、たいした武器も持っていない。村までの行き方も分からない。つまり危険極まりない。準備をしっかりして、もう一度来ることにしよう。


 はやる気持ちを抑えて、いつもうろついている裏山側の洞窟へ戻って来た。こちらの世界も同じように真暗であった。


 時間の流れは殆ど同じなのかな。


 もう面倒になり、キャンプ道具を洞窟の中まで持って来て、ここで寝ることにした。おやつに買ったどら焼を、三体のお地蔵様に供えた。なんとなく喜んでいる様な表情に見えたのは俺だけだろうか?


 結局次の日も、異世界につながる扉を開けることはなかった。準備が全然できていないからだ。しっかりと準備をしないと。怪我をしたり殺されたりしたら元も子もないからね。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 更に身体に起こった変化は、荷造り中に気が付いた。


 もう使わないであろうと思われた、高校時代の教科書や受験用の参考書をひもで縛っている時、ふと見た英語の教科書を開くと分かる。分かってしまう。


 うん。日本語の小説を読むかの様にスラスラと。俺は呆然とした。もうスラスラと読み上げられる。


 その姿を見た妹の夢が「お兄ちゃん。山のキノコでも、手あたり次第に食べたの?だめだよ」と心配してきた。優しい妹である。


 妹の夢は、俺とは外見が180度違う。手足が長くすらっとして二重で美人さんである。父方に似た様だ。俺は完全に母方である。


 でもその時の俺は、夢の声など耳に入らず自身の変化に驚いていた。これがあの巻物の影響か?


 更なる確認がしたくなり、そのまま近くの図書館へ向かった。もう驚き!どんな国の文字でもサクサク読めてしまう。進路を考え直そうかと真剣に悩んでしまった。


 これで異世界に行っても、会話で困ることは無いだろう。今からでも異世界へ行こうと思えば行ける。ただ、実際の俺は異世界どころじゃない。


 明後日には東京に向かわなきゃいけない。急ピッチで引っ越しの準備を再開しないといけない立場だ。異世界へ通じる扉も、忘れずに東京に持っていかないと。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 引っ越しも無事に終わった俺は、裏山から持って来た異世界につながる扉を使って、空いている時間を利用し、時々異世界散策に出かけた。


 まずは洞窟内に何か物が落ちていないか調べてみた。


 俺は洞窟の内部をくまなく探し、ゴブリンが貯めたと思われる物品を色々と見つけた。役に立ちそうな物といえば、異世界の貨幣が瓶の中に、結構な量が貯められていた。


 さらにポーション(中)が2本も置いてあった。


 ポーション(中)は、傷ならばどんな症状でも回復可能な様だ。切断した場合でも24時間以内なら、このポーション(中)で治るらしい。その為、非常に高価な物で貴族でもなかなか手に入れることが出来ないらしい。


 ゴブリンのおかげでお金は勿論、ポーションまで手に入ってしまった。でも本当にゴブリンだけの仕業なのか?ゴブリンがポーション(中)を?それも2本も?


 もしかしたら...お地蔵様たちの仕業かな?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 もう当面、ぼっちキャンプができないと諦めていたが、より簡単にぼっちキャンプができる環境になってしまった。


 異世界には食べられる山草が数多く生えており、ファイアリーフやスターベリーを始め、てんぷらに適した、濃厚な味わいのレインドロップフラワーや、旨味がぎっしりと詰まったクラウドリーフなども生えていた。


 時間をみては異世界へてんぷらの食材を集めがてら、洞窟周辺をうろついた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 さて話は戻って、土曜日の朝。バイトは今日明日とお休み。そして今日の目標はケインズ村に入る事。


「さあ今日こそケインズ村に入村だ!スムーズに入れるといいけど」


 周囲を警戒しながら、洞窟から少し離れた場所にあるケインズ村を目指す。と言っても、崖の上から見えるんだけどね。


「ほへーでかい」


 遠目で見てもデカかったが、近づくとより大きいのが分かる。その広大な土地を魔物避けだろうか?周囲をぐるーと石垣で囲んである。


 出入口の部分だけが頑丈そうな木の門で出来ており、そこには旅人らしき者や馬車が、ケインズ村に入るために並んで待っている。


「うわー沢山いるな。村の中に入るだけでも時間がかかりそうだ」


 仕方がないので並んでいると、並んでいる者全てが女性であった。へー以外だな。異世界って男性冒険者の方が多いと思っていた。


 それに皆、俺をチラチラと見て来る。チャックでも空いているのかな?ただ皆、凄くたくましい身体をしている。180cmぐらいある者なども結構いる。


 俺より全員がデカいと思うし、横幅もデカいだろう。あとあまり人の顔をどうこう言える立場じゃないけど、その...綺麗な子が少ないみたいだ。


 ぼけーと人間観察をしながら並んでいると、すごくマッチョで俺よりも背が高く、狐目で団子鼻、たらこ唇の女性が、「し、失礼するけど、あ、あんた男性だろ。男性はあっちだよ」そう言って別の入り口を指さした。


 遠くで分かり辛かったが、出入り口が男女別々の様だ。


「ほ、本当だ。あ、ありがとうございます!」


 その女性にお礼を言いお辞儀をした後、男性専用出入り口に走って向かった。


 すると、「キャーキャー!」と先ほどの場所から聞こえる。何かあったのかな?


 男性専用出入り口に着くと、待っている人は居なかった。その割には女性の出入り口に比べると綺麗だし扉も豪華だ。何だか扱いが全然違うんだな。


 門番の方から、「だ、男性の方が徒歩でご通行ですか?誘拐、強姦の被害に遭われない様にご注意をして下さい!あなたほど美しいお方は特に注意が必要です!馬車を手配いたしましょう!」


 誘拐?強姦被害?誰が?俺が?バカにしている感じはしないけど...。本当に心配してくれているみたいだ。背がすごく高いし筋骨隆々だ。俺より絶対に強いだろう。


 ただ...俺と顔面偏差値は変わらない様だ。お互い苦労しますな。


「ありがとうございます。本当にすぐに帰りますので。あの...馬車じゃなきゃ通ってはいけないのでしょうか?」


「い、いえ滅相もございません!通行税は必要ありません。『真実の石』に触れて頂けますか?」と言われた。


 女性達は5日間の滞在で鉄貨5枚、日本円で5000円程度必要だって言っていたけど、男性は無料なんだな。地球と扱いが違うのかな?地球なら逆だよな。


 そして「真実の石」に触れても問題が無かった。その為、無事に門を通過し、異世界の村の中に入って行った。


 うわー!異世界の村だ。テンションが上がるな。町は賑わっている。


 大きな建物が並び、更に商店街みたいなものも見える。


 商店街様な場所では、野菜や肉を売る者や冒険者や家族連れ、子供たちの笑い声が聞こえ、活気にあふれている。


 でも何だか想像していたのと違う。薄々感じていたのだが、なんだかおかしくない?


 なんだか村にいる女性達が、地球の男性の様に体格がいい。背が180m位あり筋骨隆々の者や、ただ単に太っている者等。


 男性は村に入ってから、稀に見る程度。女性に比べると1/10ぐらいしかいない様だ。それに女性と比べると線が細く、痩せている者が多い。背も俺よりもちょっと高い。二重の者が多い印象だ。


 俺みたいなコロコロとして、小さく、そして一重で不細工の三拍子が揃った男性は、稀な様だ。


 しかし俺から見ても、「不細工やなー」という者はちらほら見受けられる。まあ、虐げられている様子は見うけられない。地球より、俺側の人間が結構いる。


 暮らしやすいかもな。


 ただ女性は皆強そう。狩りや力仕事は女性の仕事なのか?冒険者風情は、女性に多く見られる様だ。


 俺が彼女たちと戦ったらどうなるんだろう?いくら柔道経験者とはいえ、もって20秒ぐらいだろう。


 それに何となく分かる。こっちの世界の女性は戦い慣れている。それも俺とは違い、生と死のぎりぎりの戦いを。とてもかなったもんじゃない。


 ただ先ほどから、すごく女性達からの視線を感じる。


 服装が奇抜すぎたか?と俺は反省した。街中を歩いている男性も女性も、原色に近く無地の服装を着ている者が多い。


 グレーの生地に、ワンポイントのイラスト付きのTシャツでも、目立つ目立つ。


 洋服を地味にすればよかったと後悔していると、次の瞬間驚くべき言葉が俺に飛びこんできた。


「あの人カッコよくない?」そう聞こえた。


 村に入ってから女性達は遠巻きで俺のことを「カッコいい」や「おしゃれ」それに「素敵」と言う。「ステーキ」と間違えていない?


 からかっているのかと思い女性たちの方を向くと、恥ずかしそうに下を向く者や、隠れてしまう者など様々な反応が返ってきた。


 でも地球の様なではなく、どちらかと言うと非常に好意的な反応であった。


 中には俺と視線が合うと、笑顔で手を振ってくる女の子までいた。


 ただ...その手を振ってくる女の子や街中にいる女性たちがその、可愛くない。お前が言うなと言われるが。俺にそっくりな子だらけ。いやもっとレベルが高く、段違いな子までいる。


 そして女性の多くは、出入り口で見た者たち同様、狐目で団子鼻。スタイルもバストとウエストヒップの境が、筋肉の塊で分からないか、太っていて分からないかという、トキメキが湧かない女の子だらけであった。


 な、何が起こっているんだ?


 あまりの衝撃に呆然としていると、俺の正面から女性が近づいて来ていることにさえ気づかず、ぶつかってしまった。


「きゃっ!」とその子は地面に横たわり、俺は尻もちをついた。


 それが、この世界では最低最悪なスタイルと顔面の持ち主、メルとの出会いであった。

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