11-2
「そしてこちらは私の担任のリュウ先生ですわ。魔法学校の視察をしている時に私を見つけて推薦してくださったのよ」
「魔法省のリュウです。よろしく」
先生が笑顔で手を差し出して、私の意識はそっちにそれた。
「あ! リュウって苗字だったんですか? 名前だと思ってました」
「お名前ですわよ?」
「あはは、僕は苗字がないんだよ」
「え? どうしてですか?」
何気なく尋ねた後に、聞いたらダメなやつだったかも。とハッとした。
でもリュウ先生はにこにこと笑っている。
「魔法は一族によって特性があったりするからね、その全部を学ぶために僕は幼い頃から家を転々としてきたんだ」
「ええ! すごいですね」
「そうかな? 新しい魔法を習得するのは快感に近いからすごいと思ったことはないや」
へらへらしながら言うリュウ先生はだいぶストイックな人のようだ。
私も自分ではたくさん勉強してきたって思ってたけど、そんなの全然まだまだだったんだ。
もっと頑張ろう。
「ということで。そろそろ教室に戻ろうか寺島さん」
「はい先生。ではごきげんよう」
百華はスカートの端を持ち上げて優雅にお辞儀をするとリュウ先生と共に去って行った。
そうだ、私も早く課題をやらなくちゃ。
あと集めないといけないのは木の葉と石だ。
そこで、だ。
私は一つ考えた。
ザマス先生に言われた”魔力を集める力が強くてコントロールできていない”ということ。
「だから今日は魔力の少ない葉っぱと石を使ってみよう!」
私は早速めぼしいものがないかあたりを見渡した。
木の葉は色素が魔力の源となっている。
つまり色の薄い葉っぱの方が含まれる魔力は少ない。
ちなみに地面に生えている草は同じ葉っぱでも薬に関する魔力を持つものが多いのでむやみに採取しない方が吉だ。
「あ、あれいいかも!」
花壇に植わっている背の低い木。
冬でも丸い葉っぱがついていて、淡い黄緑に白っぽい模様がある。
私は花壇の方に行くと葉っぱを数枚採取した。
「おっ! しかも軽石まである」
木の根元には、ベージュの軽石が敷き詰められている。
石の魔力は密度と比例するから、きっと私には穴がたくさん空いているこのくらいがちょうど良い。
「よーし。材料は全部採取できたし、シトアの部屋に戻ろう!」
急いで部屋に戻るとシトアはまだソファでゲームをしていた。
なんだかまるで私のことは眼中にない感じだ。
なるほど。
最初の難関を越えないかぎり、私は生徒として認めてもらえないってことね。
大丈夫。このくらい一人でできる!
私は部屋の中央にある六角形の机の上に、採取した材料と魔法石辞典を広げた。
辞典によるとクォーツを作るには二つの工程が必要らしい。
まず風の魔法を使ってクォーツ草から水分を吸い出す。
そこへ凝固の魔法をかければ完成……だそうだ。
とりあえずやってみよう。
私は採取してきた葉っぱを手に持ち、ステッキで叩いた。
するとうまい具合に木の葉の魔力がステッキに引き寄せられて……引き寄せられて?
あれ、なんだか部屋の中がだんだん真夏のように暑くなってきた。
「コラー!! 熱中症で死ぬ気か!?」
「ええー!? なんでこんなに熱い魔力が集まってくるのおお!?」
「下を見ろ!」
シトアに言われて窓の外を覗き込むと、校舎のすぐ隣に赤く紅葉している木が植わっているのが見える。
そうか、無意識にこの木から放出されるパーティクルを集めてしまったんだ。
木の葉の魔力は色素が源。
つまり、紅葉した葉は熱風を巻き起こす魔力を持つ。
どうしよう、一回集めた魔力は元に戻せないよー!!
こうなったら早く使っちゃおう!
汗だくになりながら慌てて風の魔法を使うと、何故か魔法がかかったクォーツ草はぐにゃぐにゃと歪みはじめる。
ヘドロのように溶けたそれは、その辺のものを巻き込みながら私の目の前にやってきた。
「えっなんか変! うわぁぁでもまぁいいや、凝固凝固ー!!」
「あ、バカ! それに石の魔力をかけ合わせたら」
時すでに遅し。
シトアが何かを言い切る前に私は魔法を使っていて、得体の知れない爆風が押し寄せてきた。
「ギャーーッ!?」
「あぶねえぇぇ!?」
何かを察したシトアと一緒に机の下に避難した瞬間、天井の方でボカーーンと何かが大爆発を起こす。
部屋に煙が充満している。
だけどシトアが何かの魔法を使ったのか机の下は無事だ。
煙が鎮まった頃、私はシトアと一緒に机の下から這い出た。
部屋の中は無惨にも爆風に巻き込まれたものたちが散らばっている。
「おーまーえー!! 危ないだろうが!」
「ごごごごめんなさいーー!!」
ひえ、当たり前だけどシトアも怒ってる。
まずい、一発退場!?
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