第4話 汚嬢様、実家に帰省する


 深夜のとある公園。

 一組の高校生カップルがイチャイチャしながら歩いていた。


「知ってるか? この公園って、昔はお墓だったらしいぜ」

「もうっ、そんなこと言わないでよー」


 そう、男子高校生から脅かされ、女子高生はバンバンと肩を叩いた。


「ごめん、ごめんって。もし、悪霊が出てきたら、俺が守ってやるからさ」

「ふふ、頼りにしてるよ」


 そんなイチャイチャしてるカップルの足元。

 男の足を『ガシッ』と何かが掴んだ。


「な、なんだ?」

「どうしたの?」

「いや、なんか……足元を誰かに捕まれてるみたいな……」

「やだー何それ。変なこと言わないでよ~」


 そう、二人は足元に目を落とす。

 そして、そこにあったのは……人の手だった。


「ひぃ⁉」

「きゃあっ!」


 人の手が、少年の足を掴んでる。

 少年たちが、叫んで腰を抜かしていると、ずぼっと地面から人間が生えてきた。

 右目は暗く、赤い瞳で、腹からは腸が見えている。

 右手は巨大で、骨が見え……その姿は、まさしくゾンビだった。


「……ひぃ、なななな、うわあぁ‼」

「ゾンビだあああ」


 そう言って、少年と少女は逃げ出していく。

 そんな二人に向かって、ゾンビ……絵里は叫んだ。


「失礼な! 私、生きてるのですわ⁉」


 ……

 …………

 ………………


 二人のエッチィ女の子から逃げ出した私は、穴を掘ってダンジョンから脱出したのですわ。

 え? なんでわざわざそんなことを下のかって?


 全裸だからに決まってるでしょうっ⁉ 


 入口からでたら沢山の人に私の全裸姿が見られてしまいますわ! そして、そんなことをされたら全裸姿をネット上に晒されて、私の尊厳がコテンパンにされてしまうのですわ! ……まあ、ちょっと興奮しちゃいますけれどもっ!


 ……はぁ…はぁ……はっ! 

 

 こほん、失礼いたしましたわ。


 まあ、そう言うわけでわざわざ穴掘ってダンジョンから脱出しましたの。

 

「全く、人間のか弱い女には(物理的に)骨が折れる作業でしたわ」


 そう言ってぽきぽきと腕を鳴らした、私はさてと、クラウチングスタートの恰好をしましたわ。


「……さて、幸いここは家に近く、人が少ない時間帯……全力疾走で走れば、誰にも会わずにお家に帰れるはずですの!」




閑話休題そうしてこうして




「……ふ、ふふ。あんまりうまくいかない物ですわね」


 ……公園から、家にたどり着くまで起こったことを説明しますわ。


 まず、酔っ払いに絡まれ、次にチャラ男に捕まり……警察に捕まりかけた上で、イヌに噛まれてしまいましたの……犬にかまれてしまいましたのっ‼ ちょっと、誰ですの! わんちゃんを放し飼いにしてる馬鹿! ちゃんとリードにつないでおきなさいですわ! ……全く。


 まあ、そんなすったもんだがあり、私はお家にたどり着きましたの。

 本当に、本当に大変でしたわ‼


 まあ、ともかくですわ……お家に帰ることができた! これは素晴らしい事なのですわ!


「さて、もうお家に帰ってお風呂入って……のんびりゆったりポテチを食べますのですわ‼」


 そう、歩き出した私はドアノブに手を掛け……絶望した。

 ええ、絶望したのですわ。


「鍵が……鍵が無いのですわああああああああああ‼」

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