430話 溶けてた僕とサキュバスっぽい何かと

「うーん」


僕は悩んでいる。


なんでかこんなとこで子供たちが謎の浮遊物Xに乗りながら魔王軍なドラゴンさんたちに囲まれてるんだもん。


助けない選択肢はないけども……うーん。


『――――――――…………』


「……ん? なんだろ、この声」


ドラゴンさんたちのレベル的には子供たちはすぐにでもぱくりんちょだけど、とりあえずのところでそこそこちくちく痛い攻撃が続くあいだは積極的には手出しできない状態っぽいから、僕は意識をもうひとつの存在に向ける。


「……え、魔力があまりすぎてて困ってる? なにそれこわい……なんて贅沢な悩みなんだ……」


よく聞き取れないけども、そんな感じのお悩みがびびっと電波のようにたゆたっている。


なんかこう、ほっとくと精神まで干渉してきそうな電波っぽい何か。


けど実に都合が良いことに魔力の足りない僕と、余ってる先方とで利害はぴったり一致。


……これが魔王さんの罠とか……は無い無い、世界征服とかするタイプのはそんな回りくどいことしないから。


そんな頭回るタイプ、こつこつタイプは内政に励むから主力をこんな野放しにせず、索敵特化のモンスター使うもん。


「僕だったら喜んでもらいに行くんだけどなぁ。 この子たちから目は離せないし……ん?」


ざざっ。


この空間へ、干渉してくる存在がある。


それも、わりと近くに。


「………………………………」


耳を澄ませ、「索敵スキルって設定した魔法」でそれを探る。


【怒】


「あ、ごめん。 なんか結構寝ちゃってたみたいだね」


【長】


【心配】


ぴこぴこ。


目に見えない文字が、脳内に直接表示される。


「……ふんふん、そっか。 それなら大丈夫だね」


あの子たちには、もうすぐ救援がたどり着く。


それが、その情報により確定した。


「それまで守っててくれる?」


【♥】


「……いつぞやにサキュバスさんのせいで覚えちゃった感情、そろそろ手放しても良いんだよ……?」


【幸福】


「や、それでしあわせなら良いんだけどさ……」


僕の相方さんは、ちょっと変わってる。


いろいろ変わってるけども、とりあえずで――普通に話せるクセに、掲示板とかコメントってのにハマってこんな会話したがるのとか。


まぁただのマイブームなんだろうけどね、これについては。


「……んじゃ、魔力、もらいに行こっか。 けど大丈夫かなぁ……」


ばさっ。


僕は片翼ずつの翼を広げ、戦闘空域から離脱――気流に乗りながら、その声へと近づいていく。


「……この香り……サキュバスとかインキュバスでしょ? 今の僕、魔力少ないから魅了されないかなぁ……あ、やば」


僕は慌てて体を小さくして――ちょうどさっき見たみたいな子供たちの年齢に。


服も調節して……これでよし。


「あの子たちくらいの歳なら、魅了されても最悪なことにはならないでしょ。 けど……あー」


くらくらする頭を両手で支えつつ、【補助】【大丈夫】うんうん大丈夫だから心配しないで、君にはそっちにお仕事あるんだからほどほどにね。


けども。


「……あー。 この魔力、消化するまでは僕じゃなくて私になっちゃうや」


メス堕ち。


そんな単語が脳裏に浮かぶ中、僕はその声の主へ――できたら対価にえっちなこと要求されない方が良いなぁ、でもサキュバスさんからなら良いかなぁ、でもインキュバスさんからのは絶対ヤだけど今の私はメス堕ち状態だからどうなるんだろうなぁ。


「これ、早いとこ離脱しないとやばい……一生メス堕ちしちゃう……」


【歓喜】


「やだよ……この状態で男に会ったら即オチでメスになっちゃうもん……」


【♥】


「ていうか早くこっち来て助けたげて? あの子たちの体力と魔力が先に尽きちゃうよ」


【――――――――了ょうかい」


ずずず。


何もない空間の中に出現した何もない空間から、黒い翼と黒い服、紅いおめめが出現する。


「ほら、あの子たち。 お願いね」

「ん」


ふわり。


彼女が、飛んでいく。


「あっちにも連絡しといてねー」


「りょ」


「……まーた変なの覚えて……まぁいいや。 さーて、魅了されてメス堕ちしきらないうちにさっさと魔力もらってこよーっと」


【お】

【配信が】

【ってノーネームちゃん!?】

【ハルちゃん!? ハルちゃんはどこぉ!?】

【え? え?】


【ノーネームちゃんがちっちゃくなってるぅぅぅぅ!!!】

【かわいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいい】

【草】


「……ノーム様!? 小さくなって!?」

「そんなに激しい戦いが……!?」


「ああ攻撃しないで! 大丈夫! 大丈夫だからぁぁぁ!!」


ふと振り返ると、結構な大騒ぎになってる様子。


「あ」


……そうだ、僕が小さくなるとあの子も一緒になっちゃうんだった。


「………………………………」


……まぁいいや、たいしたことじゃないし。


なんか盛大な勘違い起きてるけどもなんとかなるでしょ。


『――――――――……』


「はいはい、今行くって」


何もない空間に漂う、それはそれはおいしそうな匂い。


その1番に深いところ――そこへ私はたどり着き、差し出されていた手と触れ合った。



◆◆◆



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