393話 3人がごまかしてる

「おいしーい!!」


「ハル様はサニーサイドアップで?」

「はい、半熟が好きなんです。 あ、そうそう、ベーコンも混ぜてお願いします」


「ノーネーム様はいかがなさいますか?」

「おなじ」


「あの、私たちも良いのでしょうか……その、これ、最高級の……」

「ここまで来たのだから腹をくくりましょう、えみ」


広い部屋に案内された僕たちは、テーブルにぎっしり――ホテルの朝食バイキングみたいに並べられた食器から好きなものを尋ねられ、取り分けてもらってすっかりごきげんだ。


しかも目玉焼きとかオムレツとかは目の前で作ってくれるんだ。


うん。


ここ最近ずっと保存食とレトルトだったから、こういう生の料理が胃に染みるね。


や、ああいうのも好きだけども……ほら、いっつも同じだと飽きるし?


隣に座ってるるるさんは、最初こそ「あーん」とかしてきてたけども、相当おなかが空いてたのか食べるのに夢中になっている。


髪の毛も伸びてちょっとだけ雰囲気変わってたけど、こういうとこは変わらないんだね。


もくもくがつがつ食べてる子っていいよね。


【飯テロ】

【配信でご飯食べてるの見るのしあわせ】

【分かる】

【おいしそうに食べるのって、見てて嬉しいよね】

【分かる】


【るるちゃん……】

【嬉しくて涙が】

【早く元通りにぷにっとして……】

【るるちゃんの水着回であの幼児体型がががががが】

【草】

【ノーネームちゃん!! これはセーフでしょ!!!】

【るるちゃんの魅力! 今のは魅力だからぁ!!】


「ノーネームさんもおいしいですか?」

「おいし」


小さく切り分けてはもむもむと食べてるノーネームさん。


そういえばこの子も少食で、僕並みにしか食べないんだ。

そのへんは見た目とかそっくりなことと関係あるのかな。


「……良かったです。 ハルさんたちが無事で」

「えみさん」


入ってきたときの勢いで、長ーいテーブルのお誕生日席にるるさん、その両隣へ手を繋がれて引っ張られたままにノーネームさんと僕、さらにその横にえみさんと九島さんって席になっている。


僕の、角を挟んだ隣に座ってるえみさんは、さっきまでのヘンタイさんモードが収まってて静かだ。


……そういやこれ、配信されてるんじゃ……えみさん、隠さなくなったのかな……けどもさすがに相手が相手だから今だけがんばってるとか?


地球に帰ったあと、逮捕されたりしないようにがんばってね。


僕も応援はするからね。


「手は出されてないです」って言っといたげるからね。


「最後の別れ方があれでしたし……いくら配信で、結構普段通りに楽しそうにしているのを知っていても、不安なものは不安でしたから」


「あー、確か500階層のとこで」

「私たちが転移したあと、るるさんだけを……」


「……ほうだよハルちゃん!!」

「食事中は座ってましょうねるるさん」


「ほんなことより!!」

「まずは食べたものをちゃんと味わってから飲み込みましょうね」


この子は感情で動くからなぁ……こういうとこも、変わらないね。


「んむぅ……」


そうやって素直なところも変わらない。


……ああ、これがるるさんだったんだよね。


【草】

【完全に年齢逆転してて草】

【やはり時代はロリおねか……】

【ショタおね……】

【しっしっ】


【るるちゃんが元気で嬉しいし、ハルちゃんがいつもの対応でさらに嬉しい……】

【分かる……】

【ああ、2人はるるハル、およそ1年ぶりの再会な再開がたまらないんだ……】


【ハルちゃんはちょい嫌がってるけど?】

【それが良いんだよ?】

【分かる】

【すごく分かる】

【懐かない野良猫風味がいいよね】


【ま、まあ、本気で嫌だったら脱走するから……】

【分かりやすいね!】

【草】

【脱走の前科持ちだからね、分かりやすくて良いよね】

【るるちゃんには引き続きこれからもそのギリギリを攻めてほしい次第だ】





「………………………………」


そうしてみんな、おなかをいっぱいにしたところで。


何回か聞き始めてみたけども。


「あの、ところでるるさん、あの子たち」

「あー!! ハルちゃんの髪の毛ぼさぼさ!! 今クシ持ってくるから!!」


わざとらしく叫んで部屋から逃げて行くるるさん。


「………………………………」


【草】

【下手すぎる】

【るるちゃん……】


「九島さん」


「その前にこちらの下着を……袋に入れてありますから身に付けてください」


「子供たち」


「昨日までは服自体が手に入らなかったので仕方なかったとはいえ、いくらなんでもその容姿と注目具合で下着を着けていないのは恥ずかしいと考えてください。 ましてや今のハルさんは、世界一……いくつもの世界の中で最も注目される存在なんです」


「あ、はい」


さすがの正論。


九島さんは正論で攻めてくるんだった。


【草】

【ぐうの音も出ないド正論で草】

【あああああああ】

【あああああああ】

【どうして……どうして……】


【透けてないとは言え、ハルちゃんを見てるだけでいかがわしい気持ちになるからね、しょうがないね】


【まぁわりとマジで教育にも悪いもんね】

【視聴者のないない具合が加速しちゃうからね】

【ハルちゃんとノーネームちゃんがはいてない妄想だけでででででで】

【ノーネームちゃん? 休も??】


「えみさん」

「ハルさん」


すっ。


目の前で正座しているえみさん。


「……お願いですから下着をつけずにそのままで居てください」


「九島さん」

「待って! 待ってくださいハルたん!!! 違うの!」


【えみちゃん……】

【えみちゃん……】

【えみちゃんはもうダメだよ】

【完全にダメになっちゃったね……】


【全世界どころかたくさんの異世界にも言語翻訳されて生中継の中……】

【そういやそうだったわ草】

【えみちゃんはおしまい!】

【帰ったら本当にお巡りさん案件になりかねないのがなぁ……】


【それはどの意味合いで?】

【え?  過激派から襲撃されたり異世界から気合で乗り込まれて襲撃されたりって意味合いで】

【草】

【聖女様って言われてるうちはまだ大丈夫だから……】

【大丈夫? 異世界人たち、心の中じゃ怒り心頭じゃない?】

【えみちゃんも見た目は良いのになぁ……】

【もはや残念美人だとしか見えなくなっちゃったね……】

【ま、まあ、好感度も登録者もうなぎ登りだから……】



◆◆◆



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