372話 【朗報・ノーネームちゃん、いじらしい】

「ハルちゃんが見てるー! ハルちゃハルちゃハルちゃんー!!」


「……あのうるささは、間違いなくるるさんだ……なんか髪伸びてるけど……」


【草】

【草】

【ハルちゃんのジト目】

【じとめ】

【ぺろぺろろろろろろ】

【あれ? ないないされてら】

【草】


【ノーネームちゃんに負担かけるなってんだろ!!】

【羽も輪っかも維持できないくらい疲れてるんだぞ!!】

【でも、ハルちゃんにくてって寄りかかってるノーネームちゃんがなんか妙にえっっっっっっ】


【あーあ】

【えぇ……】

【ノーネームちゃん? その状態でないないしない方が良いと思うよ??】

【そうだよ、今感動の再会なんだから】


「ハルちゃ――――――あなたたちは邪魔、消えて。 みんなすっ転んでどっか行って。 私とハルちゃんの再会を邪魔しないで」


どさどさっ。


静寂のあいだに出現していたでっかい木のモンスターが、またくるりと回転していく。


【ひぇっ】

【こわいよー】

【ああ、るるちゃんの闇成分が……】

【1度闇堕ちするとクセになるからな……】

【だよな、るるちゃんのこの声だけで……ふぅぅぅぅぅぅぅ】

【えぇ……】


薄暗い地上、さらには砲弾もブレスも何もかもが飛び交う大乱戦。


その中で、出てくる木々をくるりんっと……あれ、どうやってるんだろ……倒しては燃やしてるのがるるさん。


【感動の再会が……】

【まぁハルちゃんの配信だし】

【そうだったわ】

【るるちゃん、こんなに忙しい子だったのね……】

【今まではわりと静かだったからなぁ】


【……戻って来たんだな】

【ああ】

【厳密には2人とも異世界ないないされたんだけど】

【細かいことはいいじゃん】


【そうだよ、俺たちがハルちゃんを認識した、るるちゃんとのコンビだよ】

【ふたりはるるハル】

【再結成か】

【ぶわっ】


「……ノーネームさん?」


「るる」


「のぞんで」


「きた」


「……そうですか。 なら、しょうがないですね」

「ない」


ふいっと、るるさんからも僕からも目を逸らしているノーネームさん。


……ノーネームさん、ずっとるるさんいじめてたから引け目あるもんね。


ま、ここまで来たら、僕にも分かるよ。


ノーネームさんも、何か理由があってあんなことしてたって。

だから、僕は怒る気にはならないけど。


「後で一緒に謝ってあげますから、元気出してください。 るるさんは、いつまでも怒る子じゃないですから」


「ん……」


「3分くらいモフらせてあげたら元気になりますから。 すっごくくすぐったいですけど」

「む」


後ろから抱きしめられて、髪の毛とかはすはす嗅がれたりゆらゆらしてるだけでご機嫌になるんだ。


お酒飲んでるの見られたときには積極的にしてたもん。


【草】

【草】

【3分で良いのか……】

【もしかして:るるちゃん、ちょろい】

【草】

【ハルちゃん……学習済みなんだね……】


「あー!! ノーネームさんずるいずるいずーるいずーるーいー!! ハルちゃんに頬ずりしてるー!!!!」


「……こんな距離から見えるんですか……ノーネームさんも離れてください」


「む」


ぐいっ。


さっきからずっとほっぺたくっつかれてて暑いし、離そうとする。


「……え、なんでそんな力あるんですか」


ぐいーっ。


「むー」


それなりに力を入れても、離れないほっぺ。


「ちょ、ほんとなんで」


【かわいいいいい】

【かわいいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいいい】

【草】

【あーあ】


【ノーネームちゃん! 羽すらなくなってるんだから無茶しないの!】

【恥ずかしさを無理やりにでもないないでごまかすノーネームちゃんんんんんんん】

【そんなノーネームちゃんがかわいいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいいいいい】


【だから! もう!! ほんとに!!】

【こんないじらしさ見たらしゃあない】

【「む」って文句言ってるノーネームちゃん】

【かわいいいいいいいいいいいいいい】

【かわいい  あれ?】

【だから負担になるんだってば!!!】


「地上は……良く分かんない力を手に入れたっぽいるるさん、あといつも通りっぽいえみさんに九島さんも居るから大丈夫ですね」


「ほかも」


「あ、はい、いっぱい来てますね。 じゃ」


ふわりと見やると――増えてる増えてるドラゴンさんたち。


「僕たちは僕たちの戦い、しましょうか」

「する」


ノーネームさんは、魔力切れなのか飛べない。


だけども下に降りて預けるのもめんどくさいし、このままくっつかれたままでやっちゃおっと。


あれだけ離れなかったんだ、多分すぐには落ちないよね。


ね?


――しゅいんっ。


輪っかが出現。


いつも通りに数%の魔力量を意識して攻撃しようとしたら――


くいくいっ。


「? ノーネームさん?」

「さいご」


僕にしがみ付いたままの彼女が、じっと見上げてきて、言う。


「さいご、だから」

「……分かりました」


何が、最後なのか。


この戦いなのか、それとも――いや、きっと違うだろう。


なら、これ以上敵は増えず、今見えてるので、最後。


そう、思っとこう。


「――行きましょう。 ホーリー――……」

「ぜんぶ」


「……全部? 魔力を? 僕も、飛べなくなりますよ?」

「いい」


僕にしがみ付きながらも、真っ黒な魔力を――大丈夫かなって感じるくらいに吐き出していく、ノーネームさん。


まだ持ってたんだ、魔力……それに――もう、この子は。


本当に、いつもいつも言葉が足りないんだから。


けども、僕は知ってる。

この子は、とても良い子なんだ。


だから、


「……じゃ、使い切っちゃいましょうか」


しゅいんっ。


普段の何倍の大きさの輪っかが出現する。


きっと、魔王軍の攻撃は、これで品切れ。


少なくとも僕たちが回復するまでは、他の人たちのでも間に合う程度にしかならないんだろう。


理由はともかく、るるさんたちも出てきたし、るるさんたちに合わせてまたたくさんの――装備している人たちが出てきてるし、地上も大丈夫そうだし。


「こんなに詰め込むのは初めてだけど……大丈夫なんですか?」

「だいじょ、ぶ」


形成されていくのは、すでに小山をひっくり返したサイズもある、ふたつの鐘。


金と、金と黒のストライプの、ふたつの鐘。


――大丈夫。


ノーネームさんが、そう言うんだから大丈夫なんだろう。


だから、僕は全部の魔力をおなかの中から吸い上げる。


1滴も残さないイメージで――あ、羽だけは維持できたら、この世界に来たときみたいに滑空して軟着陸くらいはできるかな。


その程度だけ残して、ね。



◆◆◆



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