350話 疲れるけど全部まとめてなぎ払った

土曜更新の349話は投稿ミスをしていたので差し替えてあります。

まだの方は1話戻ってからこちらをお読みくださいませ。



◆◆◆



羽の力を地面と水平に、僕は地面と真っ直ぐに飛ぶ。


そうして魔法――は使わず、まずは近いとこの獲物たちに高速で接近、肉薄し。


「えいっ」


ひゅんっ。


石を3発込めたスリングショットで、僕自身の加速度で追加のダメージを出しながら人に覆いかぶさっていたモンスターを吹き飛ばし。


「威力は最小限に……アイスニードル」


ホーリージャッジメントの何十分の1かの出力で、ちょろちょろって氷の矢を残りのモンスターたちへ。


びしゅびしゅって僕の進行方向へ飛び散っていく血と肉と臓物。


うん、ぐろい。


ぐろいけども、人がこうなるくらいなら僕がこうしてあげなきゃね。


【ろろろろろろろ】

【ぐ、ぐろい……】

【ていうか、久しぶりの石さんとアイスニードルだな】

【石さん……!】

【ハルちゃんのお気に入り】


【俺も石ころになってハルちゃんに投擲されたい】

【分かる】

【えぇ……】

【分かるのがなんかやだ】

【草】


【来世は石ころになりたい】

【物言わぬ石ころになりたい】

【そして一生に一度で良いから、ハルちゃんに握ってもらって投げられたい】

【それはきっとどの人生よりも最高なんだろうなって】


【ひぇっ】

【やばすぎる発言が一瞬で画面を埋め尽くしてて草】

【こじらせてる人たちがこわいよー】

【そっとしといてやれ……特殊性癖をこじらせたんだ……】


【しかしあいかわらずの命中精度  アイスニードルも、狙った本数を狙った場所に……】

【すっごく器用になったハルちゃん】

【真剣なんだろうね】

【人への誤射も怖いしな】


「大丈夫ですか……って、言葉が通じないんだった……」


ちょっとは血しぶきとかがかかっちゃったからか、呆然としてこっちを見てる人たち。


「あ、髪とか目、肌の色とか服装がまた違う……」


今度はシャツとズボンっていう見慣れた格好――だけども、なんか耳がとんがってて背が高い人たちだった。


人?


……まぁ人で良いでしょ、人っぽければ。


「あー……まぁいいや、あとはノーネームさんになんとかしてもらお」


我に返って這いつくばり始めた人たちに、ノーネームさんたちを指差しておいて、僕は上空へ飛び立つ。


体を伏せてるあいだは安全だろうし、そのあともきっとノーネームさんたちの方へ行ってくれるだろう。


【エルフ】

【エルフ!?】

【実在してたのか……】

【マジか】

【とうとうファンタジーが現実に】


【それ言ったら女神とか実在してるよ?】

【なんならドラゴンも魔王も実在してたな】

【そもそもダンジョンって時点でねぇ】


【人間の何割かが魔法使える時点で、俺たちの世界はもうとっくにファンタジーに突っ込んでるんだもんなぁ】


「………………………………」


ほんの数秒で高度……100メートルくらい?まで来てぐるりと一望。


「うわぁ、地獄絵図。 10年前の再現だなぁ」


僕自身は直接見てないけどね。


運良く僕の住んでた近くにダンジョンは、10年前には出現しなかったし、当時はテレビとかでもかなり報道制限かかってたらしいし。


「すぐ行かなきゃいけなさそうなのが……うん。 多過ぎ」


100組とかそれ以上とか。


確かにこれは、ノーネームさんが申し訳なさそうに言いよどむのも分かる。


こうして召喚――ノーネームさんの力だろうね――しても、すぐに食べられちゃうんだもん。


けども、ひと組ずつとかで出す方法はなかったんだろう。


あるなら、絶対にしてる。

めんどくさくたって、してるはず。


だってノーネームさんは、人が大好きだから。


「――じゃあ、ちょっとがんばろ」


頭の上の輪っかをむんずと掴んで下にぶん投げ、両手を地面に向けて。

多分こうするとちょっと時短だよね。


【草】

【輪っか!? 輪っか投げたのこの子!?】

【女神とか天使の象徴を、まるでゴミみたいに投げおったこの幼女】

【草】

【チャ、チャクラムとして……だよね?】


「ホーリー……じゃない、ジャッジメント」


なんとなく、いつもの大魔法なホーリージャッジメントだと過剰な気がして、短縮版で省エネ版って考えたら口から出て来た言葉。


普段よりも少なめの魔力が吸われる感覚、それらが腕を伝わって手のひらへ、手のひらから光の矢になって、射出。


それは綺麗にぶん投げた輪っかの中心を通過すると――分裂。


だいたい287本になったそれらを、加速した僕の意識が287分割されてそれぞれの集団の、それぞれのモンスターたちの、それぞれの食べようとしているところへ飛翔。


……ぐ……これは結構キツいかも……。


【ジャッジメント】

【ジャッジメントって……】

【ノーネームちゃんの過去?であったあれ?】

【やっぱりハルちゃんたちの仲間だったか】

【これでハルちゃん側からも確定か】


結構キツいけども、まだ初心者から中級者のとき、遠距離スキルを鍛えるために何時間も延々とモンスターを狩り続けてたあのときみたいだって思えば何とかなる気がする。


「「「――――――!!!!」」」


そうして、287のグロいシーンを一気見すると同時に――今出現した人たちが、食べられるのをどうにか阻止した。


「ふぅ……久しぶりにがんばった」


集中力使って脳も疲れただろうし、ちょっとお酒飲もっと。


『――――――!!』

『――――――?』

『――――――!!!』

『――――――、――――……』


索敵スキルでも、敵影は近くに無し。

なら、ほんのちょっとだけリラックスしても良いよね。


きゅぽんっ……ごくっ。


「ぷはぁ」


【草】

【草】

【勝利の美酒を楽しみ始めたハルちゃん】

【てことは、今ので全部……?】

【倒したみたいだねぇ……】


【なぁにこれぇ……】

【あ、久しぶりに聞いたかも】

【あの、一撃で倒せるんならなんで石さんを……?】

【最初は急いでたから……?】

【たまには石さんを弄びたいっていう遊び心では?】

【草】


【ごらんよ  見渡す限りにスプラッター、そのあちこちで平身低頭してる人たち、それを見ながらお酒かっ食らってるハルちゃん】


【いつものことでは?】

【いつものことだよね】

【何の不思議もないよ?】

【もうそれでいいや……】


【この余裕っぷり……さすがは2度までも魔王を退けたロリ女神だな!】

【これは伝説になる】

【神話では?】


【化物に滅ぼされそうになった人々の前に現れ、一瞬で化物を滅ぼして空で勝利の美酒を味わう女神……宗教画になりそう】


【それがあのでっかい石碑だったり……】

【草】

【お酒の部分は削除して方が良いと思うよ? 多分……】



◆◆◆



『ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。』https://kakuyomu.jp/works/16818023211929600076も同時投稿中。男の娘にもご興味のある方は、ぜひお読みくださいませ。



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