198話 僕は囚われの姫――じゃ、ない
ノーネームさんは、押されて防衛に回っている。
それを見て舐め切っているドラゴンさん。
……ううん、きっと正当な戦闘力の判断なんだろう。
もう全力じゃなくなって、ノーネームさんの周りをとんでもないスピードで飛び回ってブレスをかけたりして、なぶりにかかって。
そうやったかって思ったら、たまに突撃して正面からやり合う。
完全に、ドラゴンさんのペース。
ここはドラゴンさんのホームだ。
「……ノーネームさん……やっぱり、実力差が……」
【ノーネームちゃん……】
【やば】
【レベルとスキルダウンしてるとは言え、ハルちゃんにそこまで言わせるだなんて】
【攻撃手段があったとしても……なぁ】
【ドラゴンそのものが遠距離攻撃の塊だもん】
【思えばノーネームちゃん戦のときも、みんなに足止めしてもらってた形だったしな】
【ってことはさ あのでかいの、さっきハルちゃんがダメージ与えてたけど、あれも実はほとんど平気だったり?】
【あっ】
【そうなんだろうなぁ……】
【あのドラゴンの感覚としては「なんかかわいいペット見つけた」って感じなんだろうなぁ……】
【「爪で引っかいてきて痛かったけど、かわいいからいいや」程度の認識……】
【まるでかわいい捨て猫を拾おうとして抵抗されたみたいな】
【あー、顔とか腕とか引っかかれたけど、痛いけど痛い程度だし、それも込みでかわいいからお持ち帰り……】
【ああ、野良猫……】
【ハルちゃんだから……】
【また繋がっちゃった……?】
【繋がってしまったな……】
【けどそのペットに子供産ませるとか……やだ、ドラゴンってば変態?】
【そうなるな】
【ケモナー?】
【この変態!】
【草】
【ハルちゃんを返せ!】
【おとなしくノーネームちゃんにやられろ!】
【あ、でもそうなるとノーネームちゃんも変態ちゃんだわ】
【ひでぇ】
【草】
【ノ、ノーネームちゃんは手を出さない系の紳士だから……】
【YESハルちゃんNOタッチ……さすがだな】
【一貫しているのは偉い】
【ノーネームちゃんえらい】
【これまでハルちゃんとるるちゃんにちょっかいはかけてるけど、ただ遊んでただけっぽいもんな】
【ああ、さらって産ませようなんておろろろろろろろ】
【おろろろろろろ】
【あああああああ】
【NTRがぶり返してて草】
またお互いに吠えながらぶつかっては離れ、ブレスを放っては躱してを繰り返す戦いが続く。
でも、劣勢ははっきりしていくノーネームさん。
多分、なぶられ続けて……いずれは。
「……このままじゃノーネームさんが……でも、今の僕になんか」
【だよなぁ】
【今のハルちゃん、囚われの姫だもんなぁ】
【ああ……ドラゴンたちが取り合う、な】
【天使な金髪幼女を我がものにせんと争うドラゴンたち……これ、普通にお伽話とか神話の世界だな】
【ここだけ価値観とか世界観そのものが違うよな】
◇
「……………………………………」
戦いは、圧倒的にドラゴンさんが有利。
『はは! どうやら貴様、戦闘経験が無いようだな! なんと哀れな……我と対峙せずに数千年ほど鍛えておけば、そのような無様は晒さなかったものを! 時機! 全ては時機が我に向いていたのだ!』
【ノーネームちゃん……】
【なんかもう、一方的にやられてない?】
【負けてるな……】
【そもそもの体格差がえぐいもん】
【大人と子供だよな、あれじゃあ……】
【ノーネームちゃんがかわいそう……】
【あの 合衆国軍の新兵器2発をはじき返せる力持ってるノーネームちゃんを、あんだけ軽く追い詰めるって】
【ああ、やばいな】
【根絶やすとか、ハルちゃんの聞き違いとかじゃないっぽいな……】
【つまり?】
【あのドラゴンが出て来たら――地球、マジで終わる】
【あのドラゴンほどじゃなくても部下のモンスター?が来たら現代兵器なんて……】
【10年前の再現どころじゃねぇな】
【10年前のがただの前兆レベル】
【ダンジョンの外にモンスターが溢れたあの惨劇が、ただの前哨戦……】
【飛行系がわんさか空を覆い尽くして、空から制圧しに掛かってくるとか……】
【ノーネームちゃんがんばえー!】
ぎゅっ。
気が付けば僕は、両手を握りしめていた。
……弱い僕が、悔しい。
そんな、ダンジョンに潜って慣れてきてからは忘れていた感情。
何が「ちゃんと準備していたら大体のモンスターはコアをワンショットでキルできる」、だ。
なにもできてないじゃないか。
いくら力があっても、そのポテンシャルがあっても……肝心なときになかったら、それは無意味。
あんな「システム化されてたし、難易度調節されてたダンジョン」の中だけでいい気になってただなんて、僕は――――――。
「………………………………?」
……そういえばさっきから、ノーネームさん。
「同じ方向にばかり、攻撃を避けてる……?」
それに、なんだか「わざと時間を引き延ばして戦っている」ような。
根拠の無い直感で、そう感じるんだ。
ということは、ノーネームさんの避けた方向に何かがある。
「……ん」
「忘れちゃってた夢の中の感覚を思い出した」感じに、索敵スキルを発動。
そうして、「それ」を見た僕。
――なんとなく、直感で、根拠のないただの感覚で。
その先に「こことは違う空間」があるんだって。
「ノーネームさんは僕をそこへ逃がしたいんだ」って。
そう、理解した。
……ごそごそ。
僕は、急ぐ。
僕がそれに気がつくのが遅れちゃって、ノーネームさんの負担が多くなっちゃってるから、早く、早く。
【あれ?】
【なにやってるのハルちゃん】
【急に座り込んで、きちゃない袋漁ってる】
【何か思いついた?】
【いや、でも、この状況じゃ無理だろ……】
【ああ……】
【そもそもハルちゃん、このバリアみたいなのにしまわれちゃってるもんなぁ】
【ないないされてるもんな】
【ないないって言うな! 怖いだろ!】
【草】
【お前、こんなときに……】
【気持ちは分かる】
【だけど、このドラゴンが勝って……ハルちゃんとの約束反故にして攻めてきたら】
【「ないないされてた方が幸せだったな」とか、冗談じゃなく言われるようになるかもな……】
【もしかして:ないないはノーネームちゃんなりの愛?】
【愛ではあるだろ 愛でてるって言ってたし】
【大事にしてるって言ってたもんな!】
【草】
【こんな場面なのにあいかわらずの雰囲気で草】
【俺たちには観てるしかないんだ……なら、こうして気分だけでも、な】
◆◆◆
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