【11/20発売】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。～レンジャースキルで「ヘッドショット系幼女」って呼ばれたりダンジョンの秘密に囚われたりする配信～

８６話 『５００階層RTA配信：低層』５

せっかく僕が採ったキノコは受け取り拒否された。

しょうがない。

確かにダンジョンに生えてるのってみんな毒々しいやつばっかだし、食べたことないなら怖がってもしょうがないんだ。

せっかくだからみんなに振る舞おうって思ったけども、別のときにひとりで食べよーっと。

【でもハルちゃん……もしかして、ダンジョン内の食材を漁るほどにお金が……？】

【いや、さすがに……違うだろ？】

【そうだと言って】

【お願い】

「ハルちゃん、違うよね？」

「何がですか？」

「……コメント、顔の前に映ってるよね……？」

「なんか読むのめんどくさいのでオフにしてます」

「え」

【草】

【なんでそんなことするの！！】

【まーたハルちゃん勝手に操作してるよ】

【配信中なのにめんどくさいという理由でコメントをオフにして読まない配信者がいるらしい】

【それは配信者なのか……？】

【ま、まあ、ハルちゃんのスタイル考えたら……】

【そうだった、元はコメント見ないスタイルだったんだっけか】

【違うぞ、最初と最後の挨拶のときに見てくれてたんだ】

【間違えるな】

【ごめんなさい】

【始原が無駄に偉そうで草】

【だって偉いもん】

【始原偉いもん】

【そうだぞ】

【お、祭りか？】

【どうやら暴れてほしいらしい】

【腕が鳴るわね】

【草】

【落ち着け始原】

【忘れてたけど始原って１０人とかいるんだったっけ】

【勢いで草】

【ああうん、始原はここぞとばかりにアピってくるから……】

「あと、コメントってスクロールするじゃないですか」

「……うん、コメントだからね」

「速いじゃないですか、すっごく」

「うん、特に今日はすごいね」

「僕がこういうフロートウィンドウに慣れてないのもあるんですけど」

試しにONにしてみると……すごい勢いのコメント。

「まずもって早過ぎて、普通に追うのはムリです。　かと言って集中力使えば全部読めはしますけど疲れますし、それだけしかできません」

「え、でも、ハルちゃんのとこにはスタッフさんたちがピックしたのが……」

「あ、その機能、間違って切り替えちゃって通常モードになってるんです。　だからこう、ぶわっと」

「えぇ！？　なんでそんな大切なこと言わなかったの！？」

「や、だってめんどくさいですし、こうしてオフにすればいいかなーって」

【草】

【悲報・ハルちゃん、配信者に向いてない】

【今さらだな……】

【ああ……】

【二言目には「めんどくさい」が出て来るハルちゃん】

【ハルちゃん良かったね……事務所に入れてもらえて】

【なによりえみるるに拾ってもらえて……】

【本当よ……この子、人の話聞かないめんどくさがりだもん……】

【このめんどくさがりっぷり、極めたら大変なことになってたよね】

【やべー幼女がもっとやべー美少女に】

【でも？】

【そんなハルちゃんも見てみたい】

【分かる】

【やめて、ロリはロリのままでいいんだ、成長させないでくれ】

【お前……】

【同意】

【否】

【何故】

【不明】

【混乱】

【草】

【ノーネームちゃんノーネームちゃん、ちょっと落ち着こ？】

【ノーネームちゃんがロリハルちゃんと美少女ハルちゃんとで揺れている】

【気持ちはよく分かる】

【ノーネームちゃん……少なくともハルちゃんについての思考と情緒だけならもう普通の人間じゃない……？】

【気持ちは分かるけどさ、でも育っていくのを眺めるのも楽しいんだぞ？】

【分かる】

【でも彼氏できたって報告のときと結婚するって聞いたときは心臓に来るぞ、気をつけろ】

【草】

【お父さん！】

【母親から見た息子も同じだから覚悟しておくように】

【お母さん！】

【　　　　】

【　　　　】

【　　　　】

【　　　　】

【ノーネームちゃーん！】

【草】

【死んでる……早過ぎたんだ……】

【ずっと空白連打してて草】

【ノーネームちゃん、ちょっと休も？　大丈夫、ハルちゃんみんなが見てるから。　ね？】

【えぇ……】

【なぁにこれぇ……】

【大丈夫？　この配信視聴者層独特すぎない？？】

【ノーネームちゃんが居る時点で今さらだろうが】

◇

「怒られました」

【草】

【かわいい】

【ちょっと涙声でかわいい】

【そそるよね】

【開示しました】

【だから止めろって】

あのあと、えみさんたちがしつこかったんだ。

キノコ採って食べてたことを九島さんにすごい剣幕で怒られて、怒られたら今度はえみさんに勝手に設定とか変えないでって何回も言われた。

で、この体は幼女だから背が低いわけで。

僕より背が高くなってる子たちに上から言われ続けて、なんかちょっと悲しくなったんだ。

だって僕、この子たちより年上なのにって。

【元気出して】

【なかないで】

「ハル様ー」

「……リリさん」

とぼとぼ帰ってきた僕をリリさんが呼ぶ。

ちなみにるるさんは僕の横で手を握ってる。

どうやら叱られ仲間としてがんばってくれたらしい。

【リリちゃん！】

【すっかり溶け込んでるリリちゃん】

【リリちゃんの声も良いよね】

【ハルちゃんの声は完全に幼女、るるちゃんは元気っ子、えみちゃんはお姉さんお母さんって感じで、リリちゃんは】

【控えめな感じ】

【それだ】

【いいね】

【属性が良い感じに混じっている……】

「……………………………………」

「はるさまぁ！？」

ぽふっ。

あー、リリさんの匂い。

【●REC】

【お、ノーネームちゃん復活だ】

【ハルちゃんがおもむろにリリちゃんに抱きついて……】

【さすがのハルちゃんも怒られたらしゅんとするんだね】

【一応人間だったんだね、ハルちゃん……】

【天使でも泣くと思う】

【それもそうだ】

「……あ、良い匂いだね！　ほら、離れるよハルちゃん！」

「……そうですね、もう夕飯でしたか……仕方ありません」

なんとなく悲しくなったからリリさんにぽふっとしてもぞもぞしてたけども、急に後ろから引き剥がされた。

……さすがに大の男が泣きべそかいてるのは見られたくないから全力で普段通りに。

【あああああああ】

【なんともったいないことを！】

【損失】

【悲】

【草】

【大丈夫だよノーネームちゃん、攻略は始まったばっかりだから】

【そうそう、これからだよ】

【みんながノーネームちゃん励ましてて草】

【でもるるちゃん、めっちゃ嫉妬してる】

【リリちゃんに抱きついてたハルちゃんを引っぺがして自分に抱きつかせようとしてるるるちゃん】

「……だからもう良いですってば……」

「良いの！　おもっきり抱きついて！」

「やです」

【尊】

【分かる】

【分かる】

【こういうのでいいんだよ、こういうので】

【ああ……！】

「ハル様？」

あ、ちょうど良いところに。

るるさんに抱っこされかけた僕はなんとかかいくぐり、その声のする方へ。

リリさんがちょいちょいと手招きする先へ逃げる僕。

追ってくるるるさん。

……そしたら良い匂い。

顔を上げると……両手にお椀なリリさん。

もしかして僕たちの持って来てくれたのかな。

「……おふたりとも、お顔をこちらへ」

「？　はい」

「？　うん」

【！！！！】

【ステイ】

【あっあっ】

【ハルちゃんるるちゃんリリちゃんが顔を寄せ合ってる！！】

よく分かんないけど、なんか嬉しそうなリリさん。

あー、持って来た携帯食料のお披露目が嬉しいのかな？

「えみさんには黙っていてくださいね」

「え？　……あ」

「……きのこ」

【えっ】

【悲報・リリちゃんも充分におかしかった】

【ああうん、ハルちゃんと関係ある子だからね……】

【まさかのハルちゃん推しのキノコ入りスープ】

【おいしそう】

【待て、ダンジョン内の採れたてだぞ】

【想像しただけで吐きそう】

【むせたじゃねーか！】

【草】

「付き……仲間の方に毒……味見をしてもらいましたから多分大丈夫だということですので」

「じゃあえみさんにも」

「いえ、恐らく生理的に受け付けにくいかと」

「なら、こっそり食べちゃいましょう」

【待って！？　今この子毒味って言わなかった！？】

【リリちゃん……それ、誰にさせたの……？】

【笑顔で適当な人に押し付けたんじゃ……】

【いや、何も言わずに提供したんじゃ……】

【あ、俺、リリちゃん視点から見てた。　あのごつい外人たちに振る舞ってた】

【振る舞ってた（強制】

【ごつい外人さんたち泣きながら食べてた】

【かわいそうだった】

【でも１回食べたらすんってなってた】

【もしかして:この子、ハルちゃん以外どうでもいい】

【ひぇっ……】

【悲報・るるちゃんよりやばいかもしれない美少女爆誕】

【なぁにこれぇ……（定期】

【ああうん、このコメントの混乱っぷりはいつものだねぇ……】

ん、普段の僕とは違う味付け。

「おいしいですね」

「ええ、食材として普通に美味ですね」

「採れたてだもんね！」

【ダンジョン産のキノコをほおばる３人】

【あ、この画面えみちゃんが発見した】

【えみちゃん全力疾走中】

【救護班ちゃんも全力疾走中】

【ああ……】

【もうだめだ……】

【まーたハルちゃんが泣きべそかいちゃう】

【でもそれが？】

【最高】

【だよな！】

【草】

◆◆◆

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