【11/20発売】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。～レンジャースキルで「ヘッドショット系幼女」って呼ばれたりダンジョンの秘密に囚われたりする配信～

５０話 『２５０Fダンジョン脱出RTA』２

賢い僕は閃いたんだ。

今のこの状況は、多分るるさんの呪い様ってやつのせい。

で、なんでも今この配信は始原さんたちしか接続されていなくって他の人たちは締め出されて。

しかもこの配信に繋がってる始原さんたちのスマホとかPCとかもなんかロックされてるんだってね。

徹底してるね。

それがなんでこうなってるのかはさっぱりだけども「２５０Fダンジョン脱出RTA」とかわさわざ配信タイトル変えて、しかも設定とか全部ロックして変えさせなくなってる。

つまり？

『よく分かんないですけど、呪い様は僕に攻略されたがってる』

多分これで合ってるよね。

『攻略されたがっているんなら攻略しないと失礼ですよね』

実際、呪い様ってのが初めてここまで荒ぶったのって……最初のあのダンジョン、僕と近い階層でのことらしいし。

【どうしてそうなった】

【草】

【最後の発想だけ全く理解できないよハルちゃん……】

【駄目だ、この幼女好戦的すぎる】

【これが無事トレンド１位を獲得した「爆裂天使」……】

【ハルちゃんに攻略されるだって！？】

【ずるい】

【呪い様ずるい】

【俺たちも攻略……されてたわ、とっくに】

【ある意味この配信そのものだった】

【草】

『なんか知らないですけども、呪い様ってるるさんのときもそうでしたけど……僕に興味津々ですよね？』

【興味津々】

【そうではあるね】

【呪われるって普通はびびらない？】

【怖いとか言う発想はないのか……】

【ま、まあハルちゃんだし？】

【ゴースト系も物理で強制貫通するしなぁ】

【ああ……自分で始末できるから……】

『のろいさま……ですか、ハル様』

僕の言葉に反応したリリさんがこわごわと……やっぱ腰引けてるね君。

『よく分かんないけどそういうの。　外国でもありますよね、呪いとか言う概念。　ホラー映画とかじゃ定番の』

『え、ええ……』

【リリちゃんもドン引きのウルトラCな説明】

【でも言われてみるとそうかもって思えるな】

【実際この状況やばいし、せめて使える分のリストバンドで片方はすぐに戻るってのは正しい】

【ハルちゃんは？】

【ハルちゃんは……なんか無事に戻るでしょ。　いつも通り】

【それもそっか。　それならハルちゃんがんばって】

【草】

【視聴者に見捨てられ始めて草】

【納得と思い切りが良すぎる】

【でもハルちゃんだぞ？】

【それもそっか】

【なんか安心してきた】

【まぁ始原になった俺たち的にも、そうとしか思えないし】

新しい配信機材の新機能、コメントのホログラム表示。

実況機能は……ひとりになってからでいいや。

これ、結構便利だね。

これなら僕でもコメント見ながらな実況とかできそう。

『でも、私……助けに来てもらっておきながら』

『その方が僕が楽なんです』

僕が渡したリストバンドを両手におろおろしてるリリさんに向けて、ちょっと強めに言ってみる。

人に分かってもらえるかは分かんないけど、僕はなんかダンジョンじゃ何とかなる気がしてるんだ。

『これは僕のためなんです。　だから……ね？』

『……………………………………はい』

【リリちゃんかわいそう】

【かわいそう】

【助けてくれた相手が幼女だもん、すっごく抵抗ありそうだけど】

【助けてもらった以上強く言えない相手に言われちゃあなー】

【もし本当にここが２５０階層なら……レベルが高くても】

【ああ、隠蔽で何とかできるだろうハルちゃんならともかく、普通にパーティー組む子だとだし】

【正論でしかないのがまたかわいそう】

おとなしそうなリリさんの唇がぎゅっと歪んでる。

まじめな子なんだろうね……しかも相手は幼女な僕だし。

でも、狙ってやってるけども、その僕から「その方が楽」って言われたらどうしようもない。

卑怯だけども……これでダダこねるような子じゃないと良いんだけど。

なんかおどおどはしてるけども、なんとなくで良いとこの子って感じだし。

『……分かりました。　でも、決して無茶は』

『しません。　あ、僕、隠蔽だけは自信があるので、本気で危なさそうなら隠れて待ちますから。　ちょうどリリさんが僕のこと待ってたみたいに』

２５０階層ってどんだけ深いか分からないけども、多分何回か来たことあるレベルの深さでしょ？

それなら、戦うのめんどくさくなったときとか隠れながらやり過ごしたこともあるから大丈夫なはず。

……るるさんの呪い様が変なことしてこなければ。

『ほら、使って。　まずはリリさんが安全な場所に行ってください』

【でも……つかえるのん？　リストバンド】

【真上からずっと落ちてきたし、なにより配信映ってるから】

【あ、電波は通じてるか】

【なら大丈夫そうだな】

【ちょっと上の連中に連絡してくる】

【あ、えみるるの配信にも顔出しとこ】

【報道規制もせにゃあな……めんどうくさいが】

【他ならぬハルちゃんのためだ、仕方あるまい】

【おい、ハルちゃんに見られるから口調と内容は気をつけとけ】

【おっと済まん】

【始原が動き出した……】

【ああ……】

【もはや始原まで含めての配信と化しつつあるな】

【姉御は？】

【アンタッチャブルで】

【草】

『……どうか、ご無事で』

『はい。　リリさんも上に着いたら休んでてくださいね』

しぶしぶと言った感じでリリさんはリストバンドを装着。

……それからもじーっと見られてたから見返す。

銀色の髪の毛に蒼い目っていう、僕と反対属性的な部分とおんなじ部分に整った顔。

僕みたいな幼女相手でも……まぁ今は助けられた立場ってのもあるだろうけど、それでも眉毛も下がってるし、なんならちょっと腰が引けてる子。

あー、なんか新鮮。

ほら、るるさんとかえみさんはぐいぐい系だし、九島さんも九島さんでじっと観察してくる系だからね。

なんだかあれはあれでいいんだけどね……と、早く促さないと。

『さ』

『……はい』

多分るるさんたちと同い年くらいのその子はようやくにリストバンドをかちりと起動。

ひゅんっと……目を凝らすと上に飛んで行くのがよく見える。

暗いからスカートの内側は見えなかった。

残念。

「……………………………………」

……一応念のため、万が一にもしも、ダンジョンの底抜けた下なもんだからってエラーが起きて落っこちてこないかって見る。

……大丈夫っぽいね。

見えなくなって１分経っても落ちてこないんだ、最低でもさっきの場所までは届いたんだろう。

「あの子の情報、入ったら教えてください。　思い出したらコメント見るので」

【任せろ】

【思い出したらで草】

【ハルちゃん、ほんとに見ないもんね、画面……】

【けどハルちゃん、日本語に戻したんだ】

【ほんとだ、なんかちょっとくぐもってた感じなのが戻ってる】

【と言うか改めてすごい精度の通訳とAI音声だな……】

【ああ、言われなきゃどっちがどっかって普通分かんないぞ】

ふーん、やっぱお高いだけはあるんだね。

でもお店の人が「ちょうど１個だけ入荷できたんですけど……でも本当に買うんですか？　お金あるのかな？」とか舐めたこと言って来てたやつだ、まだそんなに出回ってないんだろうね。

【で、ハルちゃんどうするの？　本当にソロで上へ攻略？】

【もしこの階層にモンスター居ないんだったらここで待てば】

【あー、上からリストバンド降ろしてもらえば安全に】

「そういうわけには行かないみたいです。　だってRTAらしいですから」

【え？】

「RTAってできる限り最速でってことですよね？」

【ハルちゃん、それどういう】

「――僕たちが下りた場所から、地面。　崩れ始めてます。　走ります」

たったったっと走り出す。

……あの子がぎりぎりでリストバンド使ってくれて良かった。

【えっ】

【地面が崩れて……？】

【何そのスクロール系アクションゲーみたいなの】

【なんかすごい重低音がしてるんですけど……】

【無駄に良すぎる音質】

「よく分からないですけど、呪い様、僕にちゃんとRTAしてもらいたいらしいです……ねっ」

結構全速で走った僕は見えてきた階段目がけ、魔法のブーストも使ってのジャンプ。

……む、ちょっと魔力の残量やばいかも。

ちらっと後ろを見ると、薄暗い空間の真下にぽっかりとした漆黒。

「ひぇー」

【え……こわ、なにこれ】

【えぇ……】

【これ、ハルちゃんじゃなきゃ今ので終わってたんじゃ】

【リリちゃんの、結構強引に使わせてたのってこれのためだったのね……】

【ハルちゃん優しい】

まぁバレるよね……ちょっと気恥ずかしいから黙っとこ。

「２５０階層にボスモンスターとか居なくてよかったです。　じゃ、ここから上がっていくのでカウントお願いできるでしょうか」

【任せろ】

【ちなみにえみるるは４０階層に到達。　これで最速だから……】

【さっきの８０階層まで、単純に同じ時間掛かるね。　休憩も入れると早くて２時間くらいであのフロア到達？】

「でもRTAと言うからには、ちょっとがんばってみましょうか。　なんか挑戦されてますし」

魔力は多分あと１回大きな回避とかに使っておしまいだろうけどね。

【え？】

【待って】

【待ってハルちゃん、確かに危ないけど】

【なんでそんなに好戦的なのよ】

【草】

【えぇ……】

でも、助けが来るのは分かってるんだ。

じゃあ僕はできることをするまで。

「８０層にたどり着けば良いので、そこまでで全部使い切る感じで行こうって思います」

【まさかの全力宣言】

【まだ全力じゃなかったのね……】

【えっと……爆発しながら落ちる以上のはないと思うんですけど……】

……うん、いい。

こういうぎりぎりの戦いって男だったときでも最初の頃だけだったから……どきどきするよね。

こういうのが楽しいから潜ってるのかもね、僕って。

◆◆◆

５０話をお読みくださりありがとうございました。

ハルちゃんのお話は長くて１００話となる予定です。

残りの半分くらいもお楽しみください。

「TSダンジョン配信ものはもっと流行るべき」

「なんでもいいからTSロリが見たい」

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