21話 「はじめてのだんじょんはいしん(全世界公開)」4

「……僕、帰り道でお祓い受けてこようかなぁ……」


【それがいいと思うよ】

【でも無理だと思うよ】

【だってホーミングるるちゃんだし……】


【深谷るる「ごめんね……本当にごめんね……」】


【るるちゃんが謝ってる】

【草】

【泣かないで】


【でもハルちゃんがこれだけ不運なのも、ヘタするとるるちゃん自身の配信始まって以来だし……】


【るるちゃんに魅入られし幼女、ハルちゃん】

【そう言えば僕っ子だったハルちゃん】

【それどころじゃなくてすっかり忘れてた……】

【普通ならロリが僕っ子ってだけで強すぎるのにな……】


【それを塗りつぶす個性よ】

【吹き飛ばすの間違いじゃ?】

【そうかも】


階段を下りたと思ったらモンスターがうようよいる場所。

それが3連続。


……さすがにそれ以上は無かったけども、今度は出てくるモンスターがどれも色違いとかちょっと見た目が違うレアなやつばっかりに。


色違い、レアと来たら当然強いのはダンジョンが出現する前のゲームとかと同じだけども……結構大変。


「弓矢は便利だけど矢が折れたら損だし、銃は弾が高いし……ただで拾える石、もっと集めなきゃ……」


【ハルちゃん、もっとしあわせになって \5000】

【おじさんのおこづかい、受け取って \10000】

【俺の小遣いも……ガチャなんか回してる場合じゃねぇ \3000】


【あ、投げ銭……登録者数はともかく、収益化申請、事務所でしてくれたんだね……】

【そうじゃなかったら気が付かなさそうなのがハルちゃんだもんなぁ】


【るるちゃんが救いの女神……いや、そもそもるるちゃんのせいだったわこれ】

【今この瞬間の全てがるるちゃんのせいという風評被害】

【風評か?】

【すまん事実だったわ】

【草】


【けど、かわいい声で言うからてっきりおねだりかと思いきや、ハルちゃん本人が画面見てないから本当のぼやきで草】

【何日か前まで登録者10人とかじゃ収益化とか頭にないだろうしなぁ……】

【つまり、これまで通りに収益化とか頭にない趣味配信な気分だと……】


【ハルちゃん……すっかり貧乏キャラが定着しちゃって……】

【このレベルなら普通に稼いでるはずなのに、どうして……】


【何でか知らないけど今日はやたらしゃべってくれて嬉しい……けどやっぱりハルちゃんは無言で良かったかも……】


【知らなければただ楽しめたのに……もう戻れない】

【一緒に沼に沈もう?】

【俺たちと来るんだ】

【始原さんたち……】

【きゅん】

【待て、そっちはときめく方向が違うぞ】

【草】


【なんかハルちゃんが口を開くたび、闇がひたすらにあふれてくるでござる】

【どうして……】

【やっぱりるるちゃん……?】


【でもお父さんの真似はするけどお母さんのはない……あっ……】

【シングルファザー、お父さんのためにダンジョン潜って……帰ったらえみお母さんに甘えて……?】

【あの柔らかいのに包まれて癒やされて?】

【できたらその光景も配信して?】


【三日月えみ「***************************************」】


【えみちゃん!?】

【今度はえみちゃんが……えみちゃんがるるちゃんの餌食に……!】

【草】


【深谷るる「ごめんなさい、ちょっとえみちゃん……ハルちゃんが心配すぎて」】


【優しい】

【優しすぎてストレスになってそう……】

【ハルちゃん、幸せになって……】


なんかモンスターが異様に強くなってきてる。

これは気のせいとかじゃない。


「………………………………」


腕のリストバンド。


僕の、普段とは違う焦りですでにスタンバイモードだ。


この状態ならタップすればすぐに脱出できるし、大きな衝撃でもオートで脱出させてくれるすごいもの。


【緊急脱出装置!】

【帰るの?】

【多分それがいいと思う……何かおかしいし】


【それに<URL>こっちとかの配信じゃ普通に潜れてるらしいんだよ……1階層ずつ、トラップも無しで。 やっぱるるちゃん、なんかしてるって】


【ハルちゃん救助隊……って言っても有志のだけど】

【その人たちが潜っても普通に1層ずつだから逆に時間掛かって追いつけないっぽいね】


【初心者用ダンジョンだけど各階層の広さは普通にあるからなぁ】

【全力で走っても……最低2時間は掛かるよね、ここまで】

【ハルちゃん、どんだけ階層スキップしちゃったんだろ】

【と言うか本当、今何階層なのよここ?】

【正確な階層はハルちゃんすら分からないゾ】


……電波は入ってる、充電はばっちり、「作動しますか?」も表示される。


壊れてないのを確認。

ソロプレイだからこそ命綱は何度も確かめなきゃね。


「まだダメージ受けてないのでもうちょっとだけ行ってみます。 この袋、まだまだ入るっぽいですし」


【前しか見てないハルちゃん……そこが好きよ】

【あの、同接……夕方になって何倍にも跳ね上がってるんだけど……】


【同接、えぐない……?】

【そりゃあ100万超えでも驚かない内容だし……】

【普通ならこれだけですっごく喜んで記念配信とかになるだけどね……】

【そこはほら、ハルちゃんだからさ……】


【前とは違ってニュースとかにはなってないのにあのとき並って……しゅごい】

【まぁ実質、えみちゃんるるちゃんの事務所の新人扱いだし】


【こんな新人が居てたまるか! 後続のハードル高いなんてもんじゃないぞ!?】

【草】


【ハルちゃんは……うん】

【なんかもう「ハルちゃん」っていう別の何かだから……】

【るるちゃんみたいな扱いで草】


【不幸るるちゃんに続いてヘッドショットハルちゃん……すごい時代だ】


最初はただ歩きで、しかも石拾いしながらとぼとぼ進んでただけ。

途中でおにぎりも食べたし、10分くらい横になった……寝てないよ?


で、この袋。


入れたものがどうにかなる的なトラップもないみたいだからって装備とかもどんどん入れて、最低限のもの以外しか手に持ってない状態で実質手ぶら状態。


だから普段よりもむしろ楽なまである……体の方はね。


心の方は……うん。


「やっぱりるるさんのせいかなぁ……これ」


【そうじゃない?】

【そうだよ】


【深谷るる「ごめんね……ごめんね……」】

【かわいそうなのがかわいくて草】

【ぺろぺろ】


また何か変なことになるかもしれない。

普段以上の警戒心で結構心は疲れてきてる。


あー。


「……残弾使い切って戻ろ」


【良かった……良かった……】

【帰り際にコメント見てくれたらなんとか……】

【でも既に遅いって言うね】


【ハルちゃんがソロでそれなり以上どころじゃなくやれるやばいやつって分かったから安心はしてるよ。 闇まみれだけど】


【俺、ハルちゃんが脱出したら今日の仕事がんばるんだ……】

【お前、絶対今日の仕事できてないだろ】

【だって気になるじゃん?】

【草】


【けどさ、言動も幼いし……まさか本当に合法ロリ?】

【本物のロリに決まってるだろ】

【ショタです!!!!】

【お前は落ち着けショタコン】


【まー、ダンジョンが現れて10年。 ダンジョンにぴったり合ってる天才が出て来てもおかしくはないわな、時代的に】

【やめてくれ】


【ダンジョンが出現する前の時代を知ってるお兄さんたちは何歳なんですかー?】

【やめろ】

【やめてくれ】

【おじさんたちはどうすれば……】

【まだ俺はお兄さんなんだ……おじさんじゃないんだ……】


ちょっと速かったりコアが頑丈だったりはするけども、やっぱり初心者用ダンジョン……ちょっと変だけど……だってことでモンスターもそこまで強いわけじゃない。


だから隠蔽と視界を最大まで引き上げた僕は、その分音を立てても問題ない形にする。


じゃ、息が切れない程度のジョギングだ。


2日くらい外に出られなかった分の体力使い切っちゃお。


【え? ちょ】

【なんでハルちゃん走り出したの!?】

【まさかの特攻】

【ハルちゃーん!?】


【いや、大丈夫だ】

【ハルちゃん、早く帰りたいときによくこれやるから】

【始原……情報助かる】


「ふっふっ」


子供の足で普通に歩く速度から、子供の歩幅だけども魔力ブーストで大人のジョギングくらいにスピードアップ。


これで移動時間を短縮してさっさと行けるところまで。

普段からよくやるやつだ。


町の中で普通に速く移動できるから案外重宝するよね。


【●REC】

【AI遣い、これは?】

【任せろ、吐息も完璧に作る】

【あなたが神か】


【深谷るる「あ、そういうのは事務所に申請してくださいねってえみちゃんとマネージャーちゃんが言ってます」】


【もちろんです。 公開の前にデータの提出もして許可をいただきますし、最大限の配慮と制限をこちらからも掛けます】


【えらい】

【と言うかるるちゃん、ログアウトしないとまた不幸が……】


【問答無用でBANされるよりはほどほどで許可取ったほうがいいもんな】

【そのうち絶対悪用されるけどな】

【まあ人気な子のは前から出回ってるし……】


【と言うかハルちゃん、足速くない……?】

【魔力でブーストして……いや、ソロでそれは危ないんじゃ……】


【ハルちゃんは疲れて気が抜ける前に撤退できるタイプだ。 安心してくれ】

【そうそう、これはただめんどくさいからさっさと終わらせようって思ってるパターン】

【うんうん、ハルちゃんは全力でめんどくさがりだからな】


【始原たちの理解力が高すぎる】

【草】

【それでこそ俺たちの始原だ】


「左」


しゅんっ。


「右斜め前」


しゅんっ。


「後ろから3」


くるっと回ってしゅんっ。


そうして目指す方向に近いところのドロップは取りに行くけども、外れたところまでは行かない。


ここからはスピードでの狩りなんだ、効率重視でね。


【えっ……何してるのこの幼女(ドン引き】

【なんか自転車くらいの速さで走りながら止まらずに撃ってるんだけど……】

【しかもパチンコじゃなくなって弓で……】

【わー、ようじょがくるくるおどってるー】


【俺弓道やってるけどあんなに速く番えられないし引けないし狙いも合わせられない】

【そういう競技じゃないからね?】

【アーチェリー……俺、もう止めようかな……】

【だから違うからね?】

【俺もメイン武器が弓だけど1から出直さないと……】

【ダンジョンでも普通は不要なスキルよ??】


【絶望を振りまくハルちゃん】

【モンスターどころか視聴者たちへもダメージを振りまいてる……】

【なにこの幼女……】


【待って、やっぱおかしい。 さすがにこのレベルのモンスター一撃ってのも、それがコモンの弓ってのも、腕の長さ的に威力が出ないはずなのも何もかも】


【知らない、こんなスキル知らない】

【さすがに動画だって思いたくなってきた、合成の】

【残念ながら配信なんだよなぁ……】


【これが全部計算ずくだったら俺、もう何も信じられない】

【大丈夫。 るるちゃんの伝染力だけは本物だよ】

【草】

【オチ担当のるるちゃん草】





「つよかった」


僕の目の前にはでっかい熊さん。


なんかいろいろ角とか生えてるけどなんて名前なんだろうね。

あんま興味ないからどうでもいっか。


【速報・ハルちゃん新種のモンスターもヘッドショット】

【Q.感想は? A.「つよかった」 ……かわいいね】

【かわいい(ぐるぐるおめめ】


【もはやどんなモンスターも瞬殺で全てが見せ場だった】

【ダンジョンに潜ってる高レベルほど見せ場って分かるあれだな】


【これがハルちゃん流のエンターテイメント……?】

【いや、ただの天然だろ】

【草】


「これってFOE? 突然変異のこわいやつ?」


【ハルちゃん、それボス……多分ボスモンスターよ……?】

【ボスモンスターが「こわいやつ」のひとことで片づけられて草】

【ネーミングセンスはとことん幼女】

【こんなのがダンジョンを徘徊していてたまるか】


【そもそもこの広間、階段下りてワンフロアって時点でボスフロアでしょ……】

【それはほら、ハルちゃんだから……】

【ああうん、なんか納得したわ】

【もうハルちゃんっていう何か】


【なにもかも常識が通じない。 それがハルちゃんだ】

【我流も極めたらすごいんだなぁ……】

【絶対マネしちゃダメだぞ? いや、ガチで】

【普通の人間ならこうなる前に大ケガで緊急脱出だ、安心しろ】

【草】

【安心して良いのか? それ】


ちょっと見て回ったけども、降りる階段は無し。


……たまにあるよねぇ、こういう部屋。


ダンジョンも工事中ってあるんだよね。


「ここから先の階層はまだ開かないみたいですので、そろそろ脱出装置で出ます。 次来るとき潜れるようになってるといいなぁ」


【いや、開かないも何もここが最奥なんだよハルちゃん】

【ここがボス部屋……なんで宝箱探さないのハルちゃん……】

【ハルちゃんの索敵能力なら探せば見えるはずなのにどうして……】


【……もしかしてさ? ときどきある、ダンジョンのボス部屋なのになぜかボスが居なくて宝箱とかドロップだけあるのって……】


【は?】

【いや、まさか】

【さすがに……なぁ?】

【ハルちゃんは確か3年くらい前から……え?】


【俺、ちょっとそういう噂のリスト作ってみる。 もしそれがこの前のダンジョンの近くだったら……】


【ハルちゃん、ダンジョン攻略したの分からないで引き上げてた!?】

【草】

【えぇ……】

【何そのもったいなさ過ぎるの……】

【やっぱりこの子ちょっとおかしい】


【悲報・ハルちゃん、保護されるべきだった】

【やっぱソロの人ってどっかがぶっ飛んでるんだね……】

【知りたくない情報を知ってしまった】


【これ、完全にソロの弊害じゃん……】

【ハルちゃん、保護してもらって……えみお姉さんたちに1からいろいろ教えてもらって……】


【ダンジョン協会も調査してたんだよハルちゃん……どうしてボスが居ないダンジョンがあるのかって……】

【まさかその原因がハルちゃんだとは……】


【ダンジョン協会で調べて回ってた人たち、何年分の仕事がパーになって泣いてそう】

【かわいそすぎる】

【しかも今からハルちゃんの検証があって地獄絵図】

【かわいそすぎる】


「じゃ、今日の配信はおしまいです。 ちょっと疲れたので地上に上がってから軽くお返事しますね」


【これだけのことをしでかして「ちょっとつかれた」ハルちゃん】

【最後まで疲れた様子ないとか……】

【本当に人間? ダンジョンで生まれたエルフとかじゃない?】


【えみお母さん、ハルちゃんすぐに捕まえて。 すぐに捕まえて即行連れて帰って悪い人たちから守って】

【これだけの実力があるのにこれだけ抜けてるの心配すぎるもんな】


【ヘタしたら「お嬢ちゃん、コンビニおにぎり買ってあげるから来てくれない?」でのこのこ着いていきそうなまである】


【ひらめいた】

【通報した】

【情報開示請求しとく?】

【姉御、やめてくれ。 本当に冗談だ】

【草】


【ハルちゃん、るるちゃんの不幸もらった代わりに面倒見てもらえて良かったね……いや本当に】



◆◆◆



21話をお読みくださりありがとうございました。


この作品はだいたい毎日、3000字くらいで投稿します。

ダンジョン配信ものでTSっ子を読みたいと思って書き始めました(勢い)。


「TSダンジョン配信ものはもっと流行るべき」

「なんでもいいからTSロリが見たい」


と思ってくださいましたら↓の♥や応援コメント、目次から★~★★★評価とフォローをお願いします。


※しばらくコメントや感想に返信が追いつきませんけれども、ありがたく読ませていただいています。

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