新ダンジョン探索-14-
ヘリには綾音さんの部隊の面々と、それにキャシーさんが既に乗り込んでいた。
綾音さん……いや部隊の面々が戸惑い気味にキャシーさんのことを見ている。
というのも、キャシーさんの服装は未だに先ほどの白のスーツ姿だったからだ。
キャシーさんはみなの視線に気づいたのか、
「このままダンジョンに直行という訳ではないんでしょ? 近くについたら着替えるわよ。わたしは野暮ったい服装……特に軍服はあまり着たくないのよね……はあ」
と、嫌そうな素振りを見せて、ため息をつく。
「……わかりました。ウォーカー少尉、その件は貴官に任せます。よしそれではみなはいいな、出発だ」
と、軍服……いや制服を着た綾音さんは表情一つ変えずにそう言う。
が……どこかその物言いは冷ややかなものがあった。
二人の間にはやはり不協和音が奏でられている気がする。
とはいえ、時間はまっていてはくれない。
俺の一抹の不安をよそにヘリはそのまま離陸した。
ふと、俺が横にある小さな窓から下の基地を見ると、基地の入り口にリムジンが止まっているのが見えた。
上昇するにつれて、徐々に下の景色は小さくなっていったが、俺はなんとなくその車に見入ってしまった。
というのも、あまりに基地に場違いな車種であり、何よりもこの車をどこかで見たことがある気がしていたからだ。
と、そのリムジンから和服の女性とパンツスーツを着たショートカットの女性が出てきて、何やら入り口の歩哨の隊員に詰め寄っている……って……パンツスーツの女性、隊員の襟首をつかんでいないか?
……あれってまさか花蓮さんと鈴羽さんではないか……。
俺がそう思った時、ちょうど気の毒な歩哨の若い隊員が慌てふためきながら頭上を指差しているのが見えた。
そして……鈴羽さんと花蓮さんが上を見上げて……。
俺は思わず、隠れるように窓から顔を離す。
電話でとはいえ、俺は事情を花蓮さんたちに一応話している……そう俺は最低限の筋は彼女たちに通したはずだ。
が……どうにも罪悪感……いや何かとても面倒なことになりそうだという悪寒が俺の背中をゾワゾワと走った。
「ケイゾウ、どうしたの? 青い顔を浮かべて、まさか、今になって怖気づいた訳じゃないでしょうね?」
と、突然、キャシーさんに話しかけられる。
「い、いえ……大丈夫です」
と、俺がそう言うと、キャシーさんは、何故か俺の体を足元から上まで一瞥し、
「……二見、あなたいくらなんでもダンジョンのことをなめすぎじゃないのかしら? いくらわたしでも、手ぶらではダンジョンに挑まないわよ」
と、彼女の横に無造作に置いてある迷彩柄の大きなコンテナのようなケースを親指で差す。
これがキャシーさんが先ほど言っていた最新鋭の装備とやらなのだろうか。
それはさておき、確かに今の俺の装備は、いつものTシャツとチノパンだが……別に俺も手ぶらという訳ではない。
いやまあ……見た目上はそう見えるのだろうが、俺は異世界時の装備一式を自分のアイテムボックスに収容しているし、そして、それは基本的にいつでも取り出すことができる。
ただこれまでのこの世界の様子を見るに、異世界での常識をもとにして、スキルや魔法を披露するのは周りにいらぬ誤解を招きそうな気がする。
ここはアイテムボックス云々は言わない方がよいか……。
俺が顎に手を置いて悩んでいると、周りの隊員たちの視線を感じた。
どうやら隊員たちもキャシーさんと同じようなことを思っていたらしい。
まあ……今の俺の格好はお世辞にも休みの日にそこらのスーパーに買い出しにいくオッサンの姿そのものだからな……。
「ウォーカー少尉、心配は無用です。二見……氏には、我々の常識は通用しない。前もその格好で我々の前で、十分に暴れ……いえモンスターと対峙していましたから」
と、綾音さんがフォローなのか何なのかよくわからないことを言う。
「へえ……アヤネにそこまで言わせるなんて……ますます楽しみね」
キャシーさんは興味深げに俺の方をますますジロジロと見てくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます