異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の冒険者パーティを助けたら世界的有名人になってしまい、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
-03- オッサン、S級冒険者の美女とホテルに行く
-03- オッサン、S級冒険者の美女とホテルに行く
という訳で、俺はまあ……異世界暮らしの反動で味が濃いものを求めている。
牛丼……という言葉が喉まで出かかったが、さすがに花蓮さんのような女性と牛丼チェーンにいくのはなあ……
「洋食……ですかね」
和食……よりやはりここは味が濃い洋食を食べたい。
「……かしこまりましたわ。わたくし……いえ西条家の総力を上げて最高の洋食を敬三様にご提供いたしますわ」
「え……は、はい」
俺はその花蓮さんの妙な迫力に一瞬不穏なものを感じてしまった。
「鈴羽。聞こえましたわね。敬三様に最高のおもてなしができるように各所に準備をお願いしますわ」
「はい。かしこまりました。花蓮様。ここからですと都内にあるインペリアホテルの最上階の個室が場所としてはよろしいかと。あとはシェフの手配ですが……お時間はどれくらい頂けますでしょうか?」
「敬三様は非常にお忙しい方ですわ。可能な限り早めに準備をお願い」
「かしこまりました。それではすぐに手配します」
「鈴羽。頼みましたわよ」
「はい、花蓮様。お任せください」
そう言うと、鈴羽さんはハンズフリーの状態で、イヤホンで何やら連絡を忙しなくとりはじめる。
俺は、二人のそのやり取りと気迫にしばし呆気にとらわれていた。
が……ようやく我に返りあわてて、
「あ、あの……花蓮さん……。そ、そこまでしてもらわなくても——」
「敬三様。どうぞ気になさらないでください。大したことではありませんわ。それよりも——」
花蓮さんはそう言うと、体をより密着させてきて、その長く端正な両手を俺の膝に置く。
「え……か、花蓮さん……ど、どうしたんですか?」
俺が戸惑っていると、花蓮さんはさらに和服をずらして、両足を大胆に露出させる。
シルクのような色艶のある花蓮さんの美しい足があらわになる。
目をそらさなければならないのだろうが、俺はその艷やかな足から目を離せなかった。
「見てください……この足……傷ひとつありませんわ」
花蓮さんはそう言うと、俺の方を見つめて、頬を触り、少し顔を赤らめながら微笑する。
「それにこの顔も。全て……敬三様のおかげですわ」
花蓮さんは自分の体を俺に預けてきて、彼女の柔らかい感触が和服越しに——
とその時、俺はバックミラー越しに鈴羽さんと目が合う。
その目は刺すような冷ややかなものであり、俺は慌てて花蓮さんから離れる。
花蓮さんは、露出させていた足を戻して、体をもとに戻して、
「あ……も、申し訳ありませんわ。ついこんなに近づいてしまって……」
と、先程よりもさらに顔を紅潮させている。
「……花蓮様。シェフの手配がつきましたので、このままホテルに向かってもよろしいですか?」
「え!? も、もうですの? さすが鈴羽ですわね。でも……もう少し——いえ……何でもないわ。ええ、すぐに向かって」
「はい、かしこまりました」
そのまま車はものの十数分で、どこかの駐車場に止まった
残念ながら……いや幸いなことに花蓮さんはそれからはずっと俺とは一定の距離を保ったままであった。
「花蓮様。着きました」
鈴羽さんはそう言うと、運転席から降りて、わざわざ後部座席の扉を開ける。
花蓮さんが出た後、俺も後に続くが、こんな対応をされたことはないので、どうにも申し訳ない気持ちになる。
鈴羽さんは俺に対しても一応頭を下げてくれているが、その目線はやはり冷たいものがある。
なんとなく鈴羽さんからはよく思われていないというのが、この短い時間でもだいたいわかってしまった。
まあ鈴羽さんの立場からすれば当然と言えば当然の反応である。
なにせ長年仕えているであろう大切な主人の元に、突如俺みたいな素性不明のオッサンが近づいてきたのだ。
彼女が警戒するのは当然だろう。
俺は、この男装の美女から気まずい感じで目をそらし、車を降りる。
視線を上げた俺の目に飛び込んできたのは、豪奢なホテルであった。
25年間、異世界にいた俺でも名前が思い浮かべることができるほどの、国内有数の都内の某ホテルであった。
俺がそのホテルの威容に思わず圧倒されていると、ホテルの従業員らしき人物が駆け寄ってくる。
「こ、これは……花蓮様。花蓮様自らご来店いただき、我がホテル一同誠に光栄でございます」
従業員……いや上下ともに正装をして蝶ネクタイという風貌に、年齢も俺より上くらいだから、少なくとも一従業員ではなく大分上の人間……もしかしたら支配人なのかもしれない。
そのホテルの支配人が最敬礼といった様子で花蓮さんにお辞儀をしている。
俺はその支配人の対応を見て、あらためて花蓮さんの社会的地位の凄さを知り、圧倒されていた。
と、支配人は俺の方を一瞬だけ見て、すぐに目線をそらした。
単なる花蓮さんの部下か何かで相手にする価値がないといったようなそんな目であった。
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