第61話 ウーティリス、妙にご機嫌なんだけど?

 エリクスとの戦いの興奮が冷めやらぬ中、俺は財宝を漁り続けた。

 時間的余裕はまだあったらしく、今回もすべて回収する事ができて上々だ。


 それで早々に家へ帰って来たのだが、やはり落ち着かない。

 ネグリジェ姿のウーティリスがベッドの上でポンポンと叩いて待っていたのだが、ツッコミさえままならなかったのだ。


「元気を出して欲しい、れすぅ~~~ぎゅーーーっ」

「お、これは嬉しいサプラァイズ……!」

「わらわと対応違くない!?」


 そんな俺をニルナナカが抱擁で慰めてくれた。

 すると心なしか気持ちが落ち着いた気がする。ホントありがたいな。


 やはり巨乳だ。巨乳はすべてを解決してくれる……!

 といってもニルナナカはもはや爆――いや、これ以上はよそう。


「さて、眠気も来ないし、獲得品でも確認するか」


 気を取り直した所でインベントリを開いてみる。

 すると今回は結構な財宝が取れていたのでつい笑みを浮かべてしまった。


・轟雷槌ザバルゼン

・千里の鉄靴

・ゴールドインゴット×3

・ルークゴールドインゴット

・天使の羽根のベッド

・マキシエリクサー×2

・白銀の羽根仮面

・山鳴猪の皮手袋

・エリクサー×2

・ミルゴタイト鉱×2

・業火の蓮杖

・涙を吹くハンカチーフ

・神木根刈鎌


 前回と比べてやたら装備、道具が多い。

 薬は薬で助かったのだが、今回は逆にちと少なめだな。


 よし、天使のベッドはニルナナカにあげるとしよう、


『なんらとぉー!? じゃ、じゃあわらわは……?』


 そのボロベッドでいいだろ。使い慣れてるんだし。

 なんなら二人一緒に天使ベッドで寝ればいいと思うの。


『ニルナナカの大きさでいっぱいいっぱいなのらぁ!』


 他の戦利品はすぐ使えそうにないか。

 手袋はどちらかというとハーベスター向けだが、ただの丈夫なモノってだけだ。

 仮面はちょっと派手すぎて俺に合わん。


 そうとなるとほぼ売りかな。

 機会ができた時にまたディーフさんの所へ持っていくとしよう。


 さてと……


「文字を見ていたら眠くなってきたな。いいか、寝ちまおう」


 いい感じに眠気も出てきたし、今日はこれくらいにしておこうか。

 不安も多いが、今はどうしようもないからな。

 明日チェルトが帰ってきたら、事情を話して全員で考える事にしよう。


 そうして立ち上がったら、ニルナナカがベッドの上でポンポン叩いて待っていた。


「癒して~~~差し上げますぅ~~~」


 つい唾を飲んでしまった。

 マジでいいの!? 癒されちゃっていい!?

 俺もう遠慮しないよ!?


「どうぞぉ~~~」

「……行くぜ、天使の楽園によ」


 ゆえに俺はもう欲望のままにニルナナカのベッドへ突っ込んでいた。

 しかしその直後、「わらわを捨て置くなど許せぬのらー!」という声と共に俺の記憶は飛んだ。


 そして朝、気付いたら溶けた堕肉に埋もれていました。


「お、お"ぉ~~~うぅ"~~~」

「天使のベッドで寝てもダメなのかコイツ……」


 そんな堕肉を押しのけ、何とか脱出。

 気付いたら俺まで全裸になってるし、昨日一体何があったんだ……?


 とりあえず、放り投げてあった下着を回収して装着。

 自分の部屋へと戻る。


 そうするともうウーティリスが上にいた。


「おっ、もう起きたのか! えらいぞラングっ!」

「なんだこの香り……もしかしてウーティリスお前、料理してんのか!?」

「うむ! 今日も元気らし、せっかくらからとのう!」


 お、驚いた。普段はグータラなあいつが朝飯を作るなんて。

 たしかに朝には強いらしいが、こんなのは初めてだ。

 なんか顔もすっごい活き活きツヤツヤしてるし、何があったんだ……?


 そんな訳でウーティリスが作った朝食を一口。

 うむ、旨い! これは良いお嫁さんになるぞう!


「そんなお嫁さんだなんてぇ♡ 今からでも婚姻届を出してきても良いぞぉ♡」

「誰との結婚届を出すのかは知らんけどな。あとそれ十年後にしような」

「わらわは十年後もこの姿のままなんらが……」


 そんな事はともかくとして、本気で美味しい。

 ウーティリスにこんな料理の才能があったなんて驚きだよ。

 これなら毎日作ってもらいたいくらいだな。


 さてと……腹も膨れたし、そろそろギルドに行くとするか。

 頃合いを考えたらそろそろダンジョンの報が入ってもおかしくないだろうしな。


 だからと俺は席を立って普段着に着替える。

 ウーティリスも乗り気みたいなのでもちろん一緒だ。

 ニルナナカは……帰ってきてから何とかするとしよう。


 そして玄関の扉を開くのだ。いつも通りに。


「やぁラング=バートナー! 今日もいい天気だねぇ!」


 だが家の前に、なんとあのエリクスがいた。

 ニッコニコな笑顔で、俺に挨拶しながら手を元気よく挙げて。


 お、おいおい……!? 冗談だろう!?

 いくらなんでも対応が早過ぎやしないか……!?

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