第47話 大腿コア、出土!

 代替コアがあると思しき場所を掘ったら、ケツが出た。

 まさかダンジョンコアの代わりにケツが働いていたなんてな。


 つまり大腿だいたいコアって事かよ!


「しかしなんだろう……ウーティリスと比べて、やたらデカい……!」

「なしてわらわと比べるのら」


 だがそのサイズは圧倒的に巨大だ。

 双丘の一瓜が俺の頭より大きい。

 あとなんかものすっごいぷるんっと柔らかそう。


 ――おっといかん、これ以上特徴を挙げたらまずい気がする。


「な、なんじゃ、こんな所にどうして尻があるんじゃ!?」

「どういう事なの……あ、ラング見ちゃダメよ!」

「もう手遅れだ。あとそうも言ってられん」


 そうだ。これがウーティリスと同じなら掘り起こしてあげた方がいい。

 ダンジョンコア扱いされているならなおさらだ。


 そこで俺はマトックを短く持ち、矛先で削るように掘り始めた。

 幸いこれでも掘削力は維持されていて、ごりごりと岩塊が削ぎ落ちていく。


『あ、あ、いいれすぅ~~~その調子、れすぅ~~~』

「お、声が聞こえたな」

「声? 何を言っておるのか」

「さぁ……」


 どうやら二人にはこの声が聞こえないらしい。

 となるときっとウーティリスの心の声も聞けないだろうな。


 だが待ってくれ、待ち遠しいのはわかるけどケツを揺らさないでくれ。

 この大きさは俺にはちょっと危険だから!


『大人しくしておれ、このデカケツゥ!』

『あらぁ~~~その声はもしかしてぇ~~~』

『なんら、わらわの事を知っとる奴か』


 そうそう、そうやって引き付けてくれよウーティリス。

 俺が掘り当てるまで待っててくれよな。


 しっかし、意外に大きいぞこれ!?

 人間の平均サイズよりもずっと!

 この大きさたまらね――いや、ちょっと大き過ぎないか!?

 師匠よりもずっとデカいじゃないか……!


 ふう、なんとか腰回りを掘りきる事ができたぞ。


「ラング君、急いでくれ! 魔物がやってきたぞ!」

「わかってます! だけどこいつぁ……」


 だけど大き過ぎてウーティリスみたいに引っこ抜くのは不可能だ。

 この調子だと胸部辺りが絶対ネックになる!


「くっそぉ! 急ぐしかねぇぇぇ!!!」

「ええい、わらわにもピッケルを貸せ! わらわも掘るぅ!」


 こんな時くらい神の力でドーンってやれないのかよ!?

 神様ってやつは意外に不便だな!


 仕方ないので言われた通りにピッケルを渡すと、ウーティリスも必死に反対側面を掘り始めた。 


『くすぐったい、れすぅ~~~』

「我慢せい! もうすぐなのら!」

「ああくそっ、暴れるなって言ってるだろ!? 肉が引き千切れそうだぞ!?」


 くっ、ダンジョン相手だとウーティリスみたいな強靭さは出せないのか!?

 まったく、面倒な制約だ! あと暴れるから掘りにくい!


 それにウーティリスと違って言う事を聞かない奴だ。

 なんだか掘り起こすのが面倒になってきたぞ!?


「いかーん! 敵の勢いが活気づいてきおった!」

「ちょっともうギリギリだよーっ!」


 くそっ、勇者組ももう限界に近い!

 これは間に合うのか!?


「うおおおおおおおお!!!!!」

「にゃにゃにゃにゃあああ!!!!!」


 下半身出たっ! 足も太い!

 あと上半身をどうにかすればいいのか!


「大型もきおったぁ!!! 抑えきれんぞぉ!?」

「もうだめっ、ラングーーーッ!!!」


 く、ダメだ、間に合いそうにない!

 こうなったら俺もまた戦列に加わって――


 うっ!? なんだ!?

 またデカケツが輝き始めて!? うおおお!?


「ギ、ギエエエエ!!?」「ギョエエエエエッ!!!」

「なんじゃ、魔物が消し飛んでいく!?」

「なにこれ、なんの光なの!?」


 そうして間もなくして光は収まったが、危機も去った。

 周囲に集まっていた魔物が一瞬にして消え失せたのだ。


 なんだっていうんだ、今のは?


「ほほう……まさかお前だったとはのう。まぁええか。ならほれ、下半身は出とるのだから後はもう自分で出られよう?」

『はぁーーーい』


 でも一方のウーティリスはいつもの調子を取り戻していたようだ。

 デカケツに一発ビンタをかまし、ぶるるんっと震わさせている。


 するとデカケツがウーティリスの声に呼応して、自分で踏ん張り始めた。


 だがその途端、「ゴゴン! ゴゴン!」と地鳴りが上がって地面もが揺れ始める。

 まるで力が籠るたびに震えるケツと呼応しているかのようだ!

 一体どれだけの力で踏ん張ってるんだよ!?


 ――あ、これはちとまずいかもしれん……!


 ケツが揺れるにつれ、周囲の岩にどんどんと亀裂が帯びていく。

 しかも遂には壁面すべてに亀裂が走り、天井にまで届いて瓦礫を落とし始めたんだが!?


「な、なんじゃあ!?」

「やばいって、離れよう!?」

「うおおおおっ!」

「ま、まってぇ、わらわをおいていかないれぇ~~~!」


 やっぱりだ!

 この規模はヤバいぞ! このままじゃ生き埋めになっちまう!


 そう察した俺達は咄嗟に飛び出し、その場から一気に離れた。

 出遅れたウーティリスも首根っこを掴んで一斉退避だ。


 そうしてその間もなくにケツ周りの壁面が弾けるように崩落。

 掘っていた跡をも巻き込み、崩れ、先の空間がとうとう瓦礫に埋まってしまった。


「な、なんだったんじゃ、今のは……」

「わかんない……」


 一方の俺達は通路に逃げ込んでなんとか無事。

 それで振動も収まったので、恐る恐る崩落跡へと近寄っていく。


 そうした途端の事だった。


「なんじゃ、瓦礫がっ!?」

「持ち上がって!?」

「吹き飛んだぁぁぁ!?」


 あとはもうただ戦慄するばかりだ。

 常識外れな事ばかりが起きて、それでもって人影が現れたのだから。


 神々しく輝く白い翼を広げながら。


「太陽神ニルナナカ~~~堂々復活れすぅ~~~!」


 ただし豊満ボディも眩しいっ! 色んな意味で!

 師匠をも越える超ボリュームのおかげで俺の顎は開きっぱなしだ。

 もっとも、大き過ぎて俺の好みの範疇から外れてはいるが。


「おーニルナナカ、久しぶりらのう」

「あーやっぱり~~~ウーティリスちゃんらったぁ~~~!」


 そうか、太陽神はウーティリスとマブダチだったっけか。

 たまたまの偶然だが、運良く再会を果たせたんだな。


 まさか神がダンジョンコアの身代わりになっていたとは驚きだが。

 だけど助けられて良かったよ。


 これでもう神が一人じゃないって証明ができたのだから。

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