第45話 目指せ代替コア!

 代替コアは最深部には無かった。

 しかしそれらしい気配をウーティリスが見つけてくれたおかげで道は拓けたぞ。


 だからとさっそく足元に直通の道を掘ったのだが。


「気を付けよ、この先はおそらく魔物がおろう」


 本当なら土の中を掘り進めたかったが、今回はそうする訳にもいかない。

 ダンジョンから外れればウーティリスの感知能力が極端に落ち、正体不明な代替コアの存在を見失ってしまいかねないから。


 ゆえにこの先はダンジョン内部へと続いているのだ。

 だとすれば魔王の間である最深部と違い、雑魚の魔物がわんさかいるのは当然な訳で。


「だったら私が先行するからラングはサポートをお願い!」

「わかった。だが無理はするなよ? ここは上級よりも難易度が高いらしいぞ」

「ええっ!? そ、そうなの!? わ、わかったがんばる!」


 しかしチェルトは慌てるものの躊躇わず〝下〟に続く穴へと降りていく。

 さすがだな、自信とかよりもメンタルだけで乗り込みやがった。


 なので俺も負けじと彼女に続いて穴へと飛び込む。


 我ながらよく安定した角度の穴だ。滑らない程度にちゃんと形成してある。

 宝めがけて何度も掘ったしな、体がもうだいぶ覚えているようだ。


 お、さっそくチェルトが交戦に移っている。

 穴の向こうからも魔物が侵入してきていたらしい。


 しかしまだ未熟な所もあるのか、ディーフさんのようにはいかない。

 一匹二匹と討ち漏らしてしまい、魔物が俺へと目掛けて走り込んでくる。


 だがそれを魔掘具を横薙ぎする事で〝掘って〟やった。

 一瞬で消滅、アイテム化してインベントリ行きだ。ざまぁみろ!


 ――ただ、このままでは多勢に無勢か?


「ごめん! 思ったより魔物の数が多いよ!」

「くっ、チェルトだけじゃ荷が重いか!? だったら!」

「どうする気なのラング!?」

「狼狽えなくていい! うおおお、ブチ抜けぇぇぇッ!!!!!」


 ゆえに俺は再び魔掘具を奮った。

 チェルトをも巻き込み、魔物どもを一挙にして掘り尽くしたのだ。


 もちろんチェルトはまったくの無傷で無事だがな。


「な、なにが……魔物が、消えた!?」

「安心するな、まだ来るぞ!」

「う、うん!」


 とはいえこれも些末な量でしかない。

 気付けばまたわらわらと穴の先から魔物が現れ、こっちへ向かってくる。

 いずれも天井を歩ける虫型……言いたかないがあまり良い光景じゃない。


「これじゃラングが調査する時間を稼げないっ!」

「まずいのう、これはちと戦力不足かもしれぬのら」

「くっ、さすが超級、伊達じゃねぇって事か!」


 それに相手も一匹一匹が強いらしい。

 チェルトが一撃じゃ倒せないくらいの強さだ。

 たとえレア度の高い武器を持っていても、チェルト自身が振り回されている。


 やはりA級にならないとここでの戦いは厳しいか……?


「……ヒョオオオオオ!!!!!」

「なっ!!?」


 だがその時、何者かが頭上から降って来た。

 しかもまるで穴を飛び降りるように突き抜け、魔物に向かって突っ込んでいく。


 そして幾閃。


 なんと魔物達が一瞬にしてにバラバラとなっていく。

 俺もチェルトも、その光景を前にただ唖然とするばかりだ。


「こんな面白い事をしておるのなら何故ワシを誘わぬかぁ!」


 バ、バカな!? ディーフさんだと!?

 あの斬神鉄ディーフがいきなり参戦してきやがった!? 想定外だっ!


 まさかもしかして、俺達の行動が見破られていたのか!?


「お、おじいちゃん!?」

「おじいちゃんではない、ディーフと呼べぃ! 今のワシは戦友ぞ!」

「だが頼もしい! チェルト! ディーフさんと協力して道を切り拓いてくれ!」

「わ、わかったわ!」


 でもおかげで助かった。これなら先に行けるぞ!

 俺の正体がバレるかもしれないが、もうそんな事など見られた今はどうでもいい!


「ふはははは! 心躍るぞ! 久しいのう、この敵の強さ! 全盛期の頃を思い出すわァァァ!」

「さすがおじ――ディーフね! 一気に勢いがこっち側に向いたわ!」

「よし、このまま一気に穴を抜けよ! 二人はわらわ達を守るのら!」

「なぁにお前が仕切ってんだ! ……まぁいいか、抜けるぞっ!」


 勢いづいた事で俺達はあっという間に駆け抜けられ、とうとう穴の奥へ。

 中間層のとある部屋へと三人揃って降り立つ事ができた。


 しかしまだ魔物の勢いは衰えない。

 むしろ敵が一層強いとさえ感じるほどで、六本足の獣や甲殻爬虫類までが見える。

 見ただけでヤバイって思える奴らばかりだ。


「おおおっ!? こやつら、なかなか強いぞ!?」

「おそらく代替コアの力をふんだんに受けているからであろう! 気を抜くと危険なのら!」

「この甲殻堅い!? 剣が通らないよ! 攻撃は避けられるくらい遅いけどっ!」


 勢いで飛び込んでみたが、これはまずいな。

 ならいっそ代替コアをスキルでザクッとやって早々に撤収するか!?


「それはならぬぞラング! 代替コアの正体がつかめぬ以上、スキルを使ってしまうのは危険なのら!」


 それもダメか!? クソッ!


「ちぃ、意外に面倒なこった! なら俺も戦いに加わってやる!」

「そうしてくれぬか! これではおちおち穴も掘っておられまい!? せぇぇい!」


 それにディーフさんも割とキツめだ。それだけ魔物の勢いがすごい。

 小さな小部屋かと思っていたが、こいつらは周辺一帯から一気に集まってきているようだ。

 まるで代替コアを必死に守ろうとしているかのようだよ。


 こうなったら……戦いでも俺の本領を発揮してみるとしようか!

 ただし、あくまでも採掘士としてな……!

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