第40話 超ウルトラスーパー目利きタイム

 まさか首都の地下に大型ダンジョンがあったなんてな。

 しかも大昔からずっと存在し続けるなんて規模が違い過ぎる。


 それにしても魔物や資源が復活する、か。

 なら宝も何度も出てくるのだろうか?


『そこまで都合の良い話などある訳ないのら』


 だよな。

 だとすると宝ははるか昔に取られてそれっきりだろう。


『まぁそうとも限らんが……しかし不可解ではある』


 なぜそう思う?


『わらわが考えた限りでは、コアを破壊しても消えないなどという事はありえぬのら。コアはダンジョンを維持するエネルギー源で制御ユニットでもあるがゆえ、失えばこの世界に顕現し続ける事は叶わぬはず』


 理屈はよくわからんが、異常ではあるって事だな?


『さよう。これは少し調査してみる必要があるかもしれぬな。もしかしたら何かわかるかもしれん』


 神々がこの世から消えた理由が、か。

 たしかに、それがわかるのなら望む所な話だ。


「ラング? どうしたの? もしかして私との結婚を了承って事でオーケー?」

「いいえ違いますぅー。ちょっと思う所があったから考えていただけですぅー」

「チッ!」


 危ない危ない、うっかり油断すると婚約成立してしまいそうだ。

 ここで考え過ぎるのはちと危険かもしれんな。


 ならさっさと用件を済ませてしまおう。

 本来の目的を忘れるわけにはいかないからな。


「地下ダンジョンの話、ありがとうございました。もしかしたら後で試しに入らせてもらうかもしれません」

「うむ、ぜひとも挑戦してみて欲しい」

「それでなんですが。どなたかが武具コレクターをやってるって話を伺ったんです」

「おお、それはワシじゃな」

「でしたら話は早い。実は買い取って欲しい装備があるんですが、いいですかね?」

「うむ、どんな装備かな?」

「これです」


 さすがにこの中でインベントリから取り出す訳にはいかない。

 だからと、あらかじめ用意しておいた輸送箱を持ち寄り、中から装備を取り出す。


「おお、その輝きはまさしく魔剣級と霊鎧級!」

「なんと……」「すごいわ!」


 さすがコレクターだけあるか、遠くから見ただけで当ててしまった。

 両親達の唸りも止まらないし、やっぱりそれくらいすごいんだろうな。


「そうです。裂空剣ディオスマイザと極光の鎧という装備ですね」

「ほほう、なんとすばらしい意匠よ。少し近くで見て良いかのう?」

「ええかまいません。なんなら手に取ってもらっても構わないっすよ」

「では遠慮なく」


 まぁもう俺達がベタベタ触った後だしな。

 チェルトの親族だし、遠慮なんていらないだろう。


「ふむふむ、おお、しっかり魔力がほとばしっておる。なかなかの造りよ。装備自体のクオリティも相当に高めじゃな。うむ、実に凝っていてかつ威力も相応であろう。実に良い装備じゃ」

『当然であろう。その剣はわらわが構想設計した武具の一つであるからな! このジジィ、なかなか見る目があるのら! なーっはっはっは!』


 実際に作ったのはどうせ別の神だろ?

 なーに誇らしげに語っているんだお前は。


「この鎧もすばらしい! 形状もさることながら虹色に輝く所がコレクター魂をくすぐるのう! 非常に硬い金属であるが軽量。おそらくはミルゴタイト級の素材を使用しているのであろうな。軽装系の剣士にはぴったりでその魔剣との相性もバッチリじゃろう」

『フフフ、やはりその装備に目を付けたか! 何を隠そう極光の鎧はわらわが鍛冶神のデザインにケチをつけて調整させた逸品なのら!』


 それ単純に嫌がらせだろ。

 作ってくれた神の気持ちも考えてやれよ。


『ラングのツッコミが厳しいっ!』


 ……とにかく、じいさんの目利きは本物みたいだ。

 いつの間にかルーペまで取り出してまじまじと眺めているし。

 なんだかここまで見られると緊張してくるな。


 果たしていくらで買い取ってくれるのだろうか。はうとぅぷらいすっ!?


「ふむ。だいたい読み取れた。どちらも良い物であるからして、買い取る事に異論はない。それと金額だが……」

「「「ゴクリ……」」」

「そうじゃな、総計で八〇〇万ルカといった所じゃの」

「は、は、はっぴゃくまんっ!!!!!」


 お、お、きた! きぃたああああああ!!!!!

 待ちに待った大金! 超大金!

 これで肉が喰い放題じゃねぇかああああああ!!!!!


 いやまてまて、これは溜めなければならない!

 いつか平等な世界が来た時のためにっ!

 ああんでも肉! 肉は食べたいっ!


「こ、この程度で喜んでおるのか……?」

「――え?」


 あれ? この程度って、どういう事だ?


「ふぅ~……値段交渉があると思って低く設定したつもりだったのじゃが、ラング君はやはりこの装備の価値をわかっておらんかったか」

「ええまぁ、たまたま偶然運よく奇跡的に手に入ったようなもんですからねキリッ」

「そ、そうか、ハーベスターだものな、当然よな」


 あ、危ない所だった。

 この流れだとうっかり入手手段を聞かれかねない。

 俺が魔王を倒して手に入れました、なんて言える訳もないからな!


「そんな正直なラング君に本当の価格を教えてしんぜよう。これは一つにつき約四〇〇〇万ルカ相当の装備じゃ」

「よよよ、よんせんまん……だとぉ……!? しかも一つで!?」

「さよう。特にこの剣は魔王討伐報酬の中でもとりわけ上位の装備でな、それほど出るものではない。世界で見ても、現存数が十本あるかないか、といった代物なのじゃよ。つまり超ウルトラスーパー激レア武器っちゅう事じゃ」

「んが……」

「実はワシももう持っとる。じゃが欲しい奴ならその倍を出す奴もおろうなぁ?」

「んばっ、ばいっ!? はっせんまん!?!?」


 もはや桁が違い過ぎる! 想像もつかん!

 あ、でもチェルトが「半生は遊んで暮らせる」って言ってたっけ。


 つまりそれがこの価格って事なのかよ!?

 とんでもねぇ代物を俺はずっと抱えてたんだなぁ……。


「充分に価値がわかりましたわ。勉強になりました。やっぱ俺はその辺り無知なんだなぁって痛感しましたよあははは……すんません」

「かまわぬよ。孫のフィアンセじゃしのう。じゃから四〇〇〇万で――」

「いや、合計八〇〇万で構いませんわ」

「なぬぅ!?」


 え、なんで驚くんだじいさんは?

 じいさんが教えてくれなきゃどうせ八〇〇万で買い取ってもらったんだし。


 それで俺が満足なんだからそれでいいじゃねぇか!

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