第6話 お礼もあるなんてすごいよ神様!
まさかこの名を直に見られる日が来るなんて。
超レア鉱石の数々……多くの採掘士が夢にまで見る素材が今ここに。
でも、なんでこんな物が俺のステータス欄の中に?
「当然であろう。なにせ神であるわらわがずっと傍におったのら。神力をずっと受け続けたおかげで地質が変化したのであろうな」
「すげぇな神……!」
「まぁダンジョンの構造次第ではそれ以上のレア鉱石を算出する事もできるであろうが、そこを得られるかはそなたの腕と運次第なのら」
「え、これ以上のレア素材が存在するの……?」
「当然なのら。なんならわらわが更に上位の素材を創製してもかまわぬぞよ! なんたってわらわは迷宮神! このダンジョンを産んだ親とも言うべき存在であるからな!」
すごいよウーティリス! すごいよ迷宮神!
想像を絶するすごさでもう言葉にもならない。
ダンジョンを産んだとなればなおさらに!
――え、でも待てよ? それって実はすごい迷惑な事じゃないか?
ダンジョンから溢れて増えた魔物の被害って尋常じゃないし。
今は魔物を駆逐するので精一杯な状況だし。
あ、ウーティリスが涙目になってきた。
すまない、そういう意図はなかったんだ。許して欲しい。
「ダ、ダンジョンはぁ、しげんをなくしたちじょうをはんえいさせるためにぃ、つくったのにぃ~~~! ぷぇ」
「ごめんごめん! わかってるって、実際に助かってるからぁ!」
そうか、やはりダンジョンはそういう意図で作られたんだな。
だから数千年もの間にも俺達みたいな資源採集を行う職がある。
おかげで俺達だけでなく多くの国が助けられているのは間違い無い。
その神に礼もしなきゃな。
当然ながら礼儀も通さなくては。
「と、とにかくだ、色々な力をくれてありがとう。そんな訳で鉱石は君に返すよ」
「ほへ? 別に返さなくてもよいぞ。わらわにとっては不要の長物だしの」
「え、じゃあ全部もらっていいのか……?」
「当然なのら。それがそなたへの礼の一環である」
「ええっ!?」
え、どういう事だ!?
レア鉱石がいらない!?
それってまさか……
「じゃ、じゃあ、俺はこれで大金持ちになっていい……っ!?」
「うむうむー」
「うっしゃあああーーーーーーっっっ!!!!!」
まさか偶然に神を助けたおかげで大金持ちになれるなんて!
まさに捨てる神あれば拾う神ありだ! うおーーーっ!
しかしこんな事があるなんてな。
決して信心深くはなかったが、誠実に生きてきて良かったとさえ思う。
やっと報われたと、そんな気がするよ。
でもこれからは迷宮神を信仰したいとも思う。
別れた後でもなお、彼女は確かに存在するんだってな!
「さて、それでは行くとするのら」
「ん? どこに行くつもりなんだ?」
「ラングと一緒に行くと決まっておろう。こんなかよわくスタイリッシュな美女を放っておくつもりか?」
「エッ」
え?
……いや待て、そんなの聞いていないぞ!?
たしかにもらうものもらったから放置、なんて事をするつもりはないが!
「せっかくわらわを掘ったのら。どこまでも一緒にイクと決めたのらっ……♡」
「そう誤解を生むような言い方はやめろぅ! あとそのクネクネした仕草もだめですっ!」
「えー別にいいりゃん~!」
コイツッ……本気だ!
本気で俺と一緒に来る気なんだッ!
……いやまぁ別にいいんだけどな。
こんな大量のレア鉱石ももらったし、養う事くらいはできるだろうから。
ちゃんと売り払えれば一生遊んで暮らせるだろうし。
そう思考したらさっそくウーティリスが目を輝かせている。
ピュアッピュアさを前面に押し出して期待しまくりじゃあないか!
「わかったよ。なら一緒に行こう。こんな無礼な野郎とで良ければな」
「かまわぬかまわぬ、それくらいがわらわには丁度よいわっ! アッハハー!」
神の力以外はこうして人と大差ない。
むしろ変に偏屈な奴よりはずっと話しやすい相手だし、苦労はしないだろうさ。
それに今までずっと一人暮らしだったからな、きっと楽しくなるに違いない。
「さて、それならルルイの分のノルマも渡して、さっさと引き上げちまうか」
「うむっ! しかし歩くのは難儀らからラングの背に乗せよ!」
「ボロのリュックに入れて背負う事になるがいいかい?」
「かまわぬっ。むしろ土臭い方がわらわの好みなのら」
「へぇ、さすがダンジョンの神様だ」
こうもなればオンボロ袋になんて執着もない。
だから袋の口をガバっと開いてウーティリスを中へ。
それで背負い上げれば、即席の背負い袋の完成だ。
クッソ重い鉱石を入れる袋だからな、この程度じゃ破れやしないぜ。
「よし、行くぞー」
「いや待て、なにか妙なのら」
「え?」
それで戻ろうかと思ったのだが、途端にウーティリスに止められてしまった。
一体何だっていうんだ?
「ダンジョンを通じて妙な気配が混じっておる事に気付いた。さっきまではなかったのらが」
「妙な気配?」
「うむ、これはそう……殺気であろう」
「殺気……? 魔物もいなくなったこの場所で?」
殺気、か。
たしか俺に剣術を教えてくれた師匠が言っていたな。
人や魔物が何かを殺したいと思う時に放たれる意思の力だと。
魔力と同じく、感情の昂りで無意識的にも発せられるって。
それがなんだって今のダンジョンに?
「……ウーティリス、その場所がどこかわかるか?」
「方角しかわからぬが、それくらいなら」
「どっちだ?」
「あっちなのら。畏怖を感じる者が二人。殺意を放つ者が二人。後者は剣を持っておるようなのら」
「そう、か……そっちはルルイ達の進んだ方角だな」
悪い予感がする。
方角的にも、条件的にも。
俺の第六感がそう告げて止まらない。
もしかしたらルルイ達に何かが起きているのかもしれない、と。
「行くのかの?」
「当然だ。そこにダチがいる!」
「そなたがただの採掘士であってもか?」
「言わせるな! 俺は何があっても仲間達を見捨てたりはしないっ!」
「クヒヒッ、上等らあ! 行けぇラングッ!」
言われるまでも無い!
だからこそ俺はすでに駆けていた。
暗闇に目が慣れた今だからこそ全力で、持てる経験の限りに。
その手に三度、マトックの先端を握り締めて。
どうか無事でいてくれよ、ルルイ、ヤーム!
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