第12話 ひたすら奥へ
時折見え隠れする冒険者達の気配に怯えながら、俺達は奥へ奥へと進んでいった。
時には火魔法で、別の相手には土魔法で、と魔法を使い分けていった。
その都度ドロップアイテムを回収していくが、殆どは魔石。
母ちゃん騒動のあった桜だが、今はそんな事もなく従ってくれている。
しかしなあ、俺が求めていたのってだったのかカピバラだったのか?
【使い魔は今求めている生物の姿で現れ、会話もできるが、使役した相手のいう事を聞いてくれる。対価は魔力。】
となっているんだよなあ。
《まだ近くに他の冒険者達が居るようですが、もっと奥へ向かわれますか?》
椿の提案だ。
実の所そろそろ休みたいのだが、俺の後方を付かず離れずついて来てる冒険者達の存在が何気に怖いのでうかうかと休めない。
仕方がないのでこうして奥へ奥へと向かっている。
どうした事かこのダンジョン、部屋が沢山あった場所から進んだはいいが、今まで分岐路はあっても何処かで合流していて、最終的に奥へ進むには何処かは必ず同じ場所を通る事になる。
下へ降りる階段はあるが、どうやら各階層それぞれ上り下り共に一ヶ所だけらしい。
俺はひとつ見落としていた事がある。
俺は魔法で魔物を簡単に仕留めているが、他の冒険者達にとって魔物は脅威、つまり仕留めるのに相当戦力がないといけない、という事だ。
しかも普通は魔法を使えないので頼りになるのは己の身一つ。
そして武具の存在。
で、何を見落としていたのかと言えば結局の所、俺の前方に立ちふさがる魔物を一つ残らず仕留めてしまっているので、後ろを付いてくる冒険者達は実際には一切戦闘をしないままここまでやってきていた、という事実。
《どうされますか?魔物を仕留めないまま奥へ向かう選択肢があります。》
椿の指摘で気が付いた。
魔物を残したまま進めば、追手と距離を得られる・・・・どうして気が付かなかったのだろう!
だが一寸待て。
先程までは俺のしょぼい魔法一発で、周囲の魔物は全滅していた。
だから俺は魔物と直接戦闘をしていないんだ・・・・つまり剣などの武器で、という意味でだ。
だからもし近くに魔物が現れた時、俺は回避できるのだろうか。
「私に乗って移動しておけば餅のロンで逃げられるわよ?」
餅のロンて。
それにカピバラって早く移動できるのか?
「だーカーラーカピバラじゃないヴァ!」
絶対カピバラですやん。
「桜、信じていいんだな?」
「召喚されちゃったからねえ。使役されているし嘘はつけないのだよマスター君。」
何故に上から目線?
「物は試しだ。安全な場所まで頼む。」
「任せて!」
俺は桜にしがみ付いた。
そして意外な事に、桜の移動速度は結構早かった。
俺の全力疾走よりも、だ。
そして気が付けば魔物を遥か後方に置き去りにし、数層は下ったようだ。
● とある冒険者達 ●
「うわ!姉さん魔物っす魔物!ヤバいっす!」
「分かっているわよ!何でいきなり魔物が残っているのよ!今まで全部やっつけていたんじゃないの?」
「それはそうだが現実はこうだ。もしかして何処かで死んでいるんじゃないか?」
「くっ!それを確認する為にもまずは目の前に居る魔物を仕留めないと・・・・中層の魔物、私達で倒せるかしら?」
「一体だけなら何とかっすが、今後も沢山いるようだと厳しいっす!」
「あー何でダンジョンって魔法が使えないのよ!」
「ダンジョンの下層、それも下の方だと宝箱に魔法を使えるアイテムが眠っているって噂っすよ。」
「下層!冒険者達が複数パーティーで挑み、それも半年以上の時間を掛けて辿り着くかどうかって場所じゃない!無理!!」
この後何とか魔物を仕留める事に成功する冒険者パーティーだが、彼等が弱いわけではない。
このダンジョンにおいては、冒険者の中でも強者に分類される彼、彼女達。
因みにパーティーランクはBである。
最初はFから始まり、上はA、そしてSという事を考えれば相当な実力なのであるが、そんなパーティーでも単独であれば中層が限度。
「お、終わった・・・・回復薬ってどれぐらい持って来ている?」
「急遽だったっすから、あと9個っすね。」
「・・・・半分になるまでは頑張りましょう。」
前途多難である。
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