【中編】王女に転生したセクシー女優はめくるめく官能の世界を堪能したい!

由友ひろ

第1話 セクシー女優が王女に転生しました

「アァァァッ……」


 絶叫と共に暗転、私は二十七歳の人生に幕を下ろした。


 いやあ~、いい人生だったと思うよ。太く短く、好きなことして生きてこれたもん。


 十八歳の時にGカップ女子高生(本当は卒業してたけど)セクシー女優として華々しくデビュー。きっかけは街で声かけられたからなんだけど、高校卒業してアルバイトしながらプラプラしてただけだから、高収入のバイトとして即決した。何より、H大好きだったしさ、好きなことしてお金貰えるとか、天職じゃんって思ったね。


 たださ、この業界って常に新しい娘が入ってくるんだわ。二十歳過ぎたらもう若手じゃなくなって、鳴かず飛ばずで五年。別に楽しく気持ちよくなって生活できるだけの仕事をこなせれば良かったんだけど、仕事もあんまこなくなってさ。これはヤバイと思って、ない頭を捻ったね。勉強も努力も大嫌いな私が、珍しく頭をふり絞ったよ。


 で、「サキの一般人と生○メしてみた」シリーズを考えだした訳だ。

 簡単よ〜。一般公募で相手役の素人さん募るの。シチュエーションは、街でタイプの男性引っかけてお持ち帰りするって感じ。後は相手をその気にさせて本番。撮影は本人には了承済みだけどほとんどは隠し撮りね。無人のカメラだけ一台ベッド正面においとくけど、実際はいろんなとこにカメラ仕込んであるの。相手は一般人だしさ、バリバリ撮影って感じだと、緊張してわざとらしくなったり勃たなかったりでさ。隠し撮りがよりリアルで良かったみたい。作品の売りの一つが「生○メ」だったけど、これは実際はちゃんと避妊具を使用した。何より一般人さんのが性病怖いもん。


 これが評判良くて、見事返り咲いたって訳。


 で、二十七歳の誕生日の今日、念願だったAV業界一の絶倫神テク男優シンさんとの共演が叶ったの!

 もう……とにかく凄かった。マジ神テク!左利きって器用だって本当ね。

 前戯も凄かったけど、シンさんのシンさんがこれまた素晴らしいイチモツで……。思い出しただけで昇天しそう……って、本当に昇天しちゃったんだった。テヘッ。


 多分ね、日頃の不摂生がいけなかったんだと思うの。栄誉は酒でとれ!的な生活してたからさ。でも太りたくないし、運動するなんて努力も嫌で、適当なサプリとカロリーバーで生きてたもんね。

 興奮し過ぎて逝っちゃった。本当の意味で。


 で、今なんだけど……。


 なんで動けないの?目も見えないんだけど。身体中痛いし。なんで?どういうこと?

 目隠しして緊縛プレイ?

 生き返ったと思ったら、いきなりSMプレイなの?!楽しめるなら目隠しも緊縛も嫌いじゃないけどさ、状況がわからないとかさすがに怖いんですけど。


 ★★★


「オンギャ~!オンギャ~!」


 この逞しい泣き声は私ね。

 AV女優相田咲希あいださき改め、シャーロット・キスコチェ零歳。キスコチェ王国の第二王女だって。王女よ、王女!凄くない?!


 お目々もパッチリ開いて、ボンヤリとだけど周りも見えてきた訳よ。まだ寝返りはできないけどさ、顔は動くから周りを一生懸命観察したよ。


 まずここ、キスコチェ王国って、周りは畑か山ばかり、山間にある平地にチマっとある小国で、自然豊かって言えば聞こえはいいけど、あまり発展した国じゃないとみた。世界史とか苦手だったけど、そんな国聞いたことなかったし、なんとなくだけどここは地球とは別の惑星、もしくは異次元みたいな感じじゃないかな。

 なんでって、太陽が青いんだよ。しかもバカでかい。初めてお散歩に連れてきてもらった時、驚き過ぎて号泣したね。泣き過ぎてヒキツケ起こしちゃって、それ見て驚いたママリンまで卒倒して大騒ぎになったよ。


 当たり前だけど、私にはパパリンにママリンがいる。パパリンは王様なんだよね?と疑問に思うくらい人の良さそうな普通のおっちゃん。趣味農業って、王様が農業に勤しんじゃうくらい平和ってことかな。

 ママリンは、あのパパリンのお嫁さんがこんな美人でいいの?ってくらいの美人さん。パパリンが茶色の髪の毛に茶色の目、日焼けして肌もこんがり焦げ茶色な、全身地味な茶色ティストなのに、ママリンは薄紫色のサラサラロングストレートに緋色の瞳。この色味だけでも地球にはいないよね。お妃様なのに趣味が料理とパパリン観賞。うん、あのパパリンにどこにそんなに惚れ込む要素があるかな。不思議だよ。


 あと忘れたらいけないのが双子の兄姉。二人ともママリンそっくりな見た目の美形さん。性格パパリン似でおっとりしていて優しい兄のスチュワート(スチュー)と、夢見がちなティアラ(ティア)。二人共私のことが大好きだ。


 これからの異世界王女様生活、すっごいすっごい楽しみ!あっ、……力み過ぎてウン○出ちゃった。


 ★★★


「ロッティ、ほらこのリボン結んであげるわ」


 私は鏡の前でムーッと唇を尖らせていた。その後ろで、ヒラヒラレースのピンクのリボンを持って私の髪の毛をとかしているのは、我が美貌の姉ティアラ。四つ上のティアラはますますママリンそっくりになってきて、その美貌たるや言うまでもないけど、ホッソリとしてるけど豊かに張り出した胸とか、小ぶりだけどプリンとしたヒップとか、女神も裸足で逃げ出すダイナマイトボディーの持ち主だ。


「ほら、可愛い!」


 どの口が言うかな?

 同じ鏡に写るとか、嫌がらせとしか思えない。


 鏡の中には、クルンクルンの天パーの茶髪(パパ遺伝子)にどんぐり眼のお子様が写っていた。頬にはソバカスが散り、口はやや大きめ、十三歳にもなるってのにツルンペタンの寸胴体型。ママリンの遺伝子どこいった?!

 桃色の瞳は珍しいみたいだけど、それ以外はどこにでもいそうなお子様だ。


「ティア、ロッティ!大変だ」


 いつも穏やかなスチュワートが、珍しく慌てて部屋に入ってきた。


「どうしたの?畑に害虫でも出た?」

「パパリンが肥溜めに落ちた?」

「ロッティ、いい加減パパリンじゃなくてお父様って呼びなさいな」

「パパリンはパパリンじゃん。お父様ってがらじゃなくない?」


 一応ね、人前ではちゃんと国王陛下って呼んでるよ。第一さ、どっからどう見ても気さくな農夫のおいちゃんで、お父様なんて畏まった雰囲気全然ないもんね。


「畑は無事だし、父上も今月は肥溜めに落ちてないから。とにかくちょっと大変だから来て!」


 何がどう大変なのかわからないが、ティアラと手を繋いでスチュワートの後について行く。スチュワートが向かったのは謁見の間だった。


 この広間を使ったのは何年ぶりだろう?他国からの使者を招くなんてことは、私が覚えている限り一回もなかった。でもさ一応ね、一ヶ月に一回は掃除して換気をしてたんだよ。今月は三日前にやったばっかだったからセーフだったね。


 玉座にはパパリンが、その隣にはママリンが座り、数段の階段下の広間には、甲冑を着た騎士が膝をついていた。


 甲冑って、式典の時に見たぶりだわ。式典様の甲冑と違い、ちょっと薄汚れた感じとか、日常使いなのかな?農業主体のキスコチェ国では有り得ないことだ。


「国王陛下、ティアラとシャーロットを連れてきました」

「あぁ……ティア、ロッティ」


 ママリンが椅子から立ち上がり、私達の方へ駆け下りてくると、その飽満な胸に私とティアラを抱きしめた。今にも倒れてしまいそうなくらい蒼白で、身体もカタカタ震えている。


「お母様、いかがなさいました?あの方はいったい……」


 曲がりなりにも一国の王に拝謁するというのに、旅装のままの甲冑姿でいること自体礼儀に反している。しかし、それが許されるとしたら、うちみたいな小国ではなく、大国の使者様なのかもしれない。そう思ってよくよく見てみると、甲冑に紋章が描かれていた。二重の波線の上下に鷹の紋章。

 あれって……なんだっけ?ここまででてるんだけど……。


「リズパン王国!」


 そう!それだ!ティアラは勉強熱心だから、すぐ見てわかったみたい。私だって、言われたら思い出したけどさ。


 一瞬にして蒼白になったティアラは、フラっとよろけて倒れそうになったところをママリンとスチュワートに支えられた。


 リズパン王国、確かリズパン川に沿って栄えた王国で、現リズパン国王が好戦的な人物とかで、周りの小国を侵略して大国になった国だとか。いまだに領土は拡大し続け、逆らう国は武力で制圧し、戦わず降参する国はリズパン王国に吸収されるものの自治が認められるとか。そのかわりに、必ず人質としてリズパン国王のハーレムに王族女性を献上しなきゃならないらしいけど。

 勉強嫌いの私がなんでこんなに覚えているかというと、リズパンのダニエル王に興味があったからだ。ダニエル王はとんでもない好色家で、妃十五人、夫人は数え切れず、国を侵略する度に女を蹂躙する獣のような王だと聞く。三十八歳にしていまだに絶倫。彼のハーレムにいる夫人は数えくれないくらいだというのに、全員を満足させて余りある性欲だとか。


 素敵……。


 前世の神テク男優シンさんくらい立派なテクとブツをお持ちなんじゃないだろうか?

 よく「死んじゃうゥゥッ」とか最中に言うことあるけど、シンさんのは本当に死んじゃったくらい最高だったからね。あの時は不摂生が祟って逝っちゃったけど、今の私は健康そのもの。パパリンの作る野菜と、スチュワートの獲ってくる新鮮なタンパク質、私やティアラの取ってくる山菜やキノコのおかげで(王族なのに自給自足とか、多分うちくらいだよね)、ちょっとやそっとじゃ死なないと思う。


 ならばここは!


 私はシュタッと手を上げた。

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