作文カロリー比較検討

@shasu

作文カロリー比較検討 全文

さくぶん文体比較

(作文カロリーテスト)


 残しておきたい物語はあるのだけど、作文するの大変だ!


 どうにかして作文カロリー(手間、作文時間および作文量)を減らしたいけど、自分で読んでて面白い文章でもあってほしい。比較してみようと思う。


 シチュエーションは以下


ーー以下ーー


 男魔法使い(風属性)カレントと超強い女魔法使い(炎属性)エリーナのコンビが、砂漠ダンジョンに現れた巨大ゴーレムと戦う話


ーー以上ーー


 これを記してみようと思います。


 大変なので人物描写は省きます。2人とも二十代前半くらい。


ーー 一人称 ーー

(えりーな)

 ゴゴゴーッと、砂の中からでっかいゴーレムが現れる。こいつをやっつければ良い訳ね! 遠くのカレントを確認すると、こっちに大きく手をあげた。周囲に人はいないわけね? 遠慮はいらないわけね? っしゃあ!

「全力か? 久しぶりだな」魔法剣が語りかけてくる。「ほんとにね」いつもせせこましいダンジョンの中ばっかだったからね。 

 剣の魔術紋に指を這わせて、魔力を現象に変えていく。魔力全開で炎の八首竜を作り出す魔法だ。ひっさしぶりの、大暴れだ!


(カレント)

 風魔法で周囲を飛び回り、周囲に人がいないことを確認した。手をあげて合図すると、エリーナがうなずいた気がする。

 エリーナのまわりに炎が渦巻いたかと思うと、爆発するかのように膨れ上がった。その形が、八首の竜の姿をとり始める。いや、ホントばかみたいな魔力量と魔法式だな。昔の俺、ほんとにこんなヤツに勝ったのか? もうゴーレムよりデカくなってる……。ん? ゴーレムのエリーナに近い方もう溶け始めてんじゃないか?

 なんか、数秒で終わりそうだな……。


41行、20分


ーー剣客商売の説明風三人称ーー


 砂漠の中から巨大なゴーレムが現れたが、それをエリーナは一蹴した。彼女の全開の魔力で展開された八首の竜は、ほんの数秒でゴーレムを屠り溶かしきってしまったのだ。彼女の力をわきまえているカレントによって周囲に人がいないことを確認済みであったが、もしこれを人の多いダンジョンで繰り出したなら、その被害は想像を絶するものであろう。

 ゆえにエリーナは日頃魔力よりも「手加減」に消耗しているのだ。

(こんなやつに、よく昔の俺は勝てたもんだ……)

 とカレントもほとほと呆れるような気持ちだ。あの時は迷宮式ダンジョンの中で、彼女も本気を出せなかったのであろう。


 戦闘のあと、暴れ足りないエリーナは八首竜を操ってカレントをおちょくったが、「ホントに死ぬとこだったぞ!」と後にひどく叱られた。ふん。ちゃんと死なないように遊んでたわよ……

 

33行、10分


ーーいつもの三人称ーー


 目の前の砂漠から、砂を巻き上げながらゴーレムが姿を現そうとしている。それをエリーナは遠巻きに見ていた。

 確認すると、風魔法で飛び回っていたカレントが手をあげてみせる。周囲に人はいないようだ。エリーナは知らず微笑んだ。久しぶりに本気が出せる、と。

「全力か? 久しぶりだな」

「ほんとね」

 語りかける魔法剣に答える。本当に、久しぶりだ。ほとんどのダンジョンは迷宮式なので、全力などだせば迷宮が崩壊してしまう。人が巻き込まれるリスクも高い。ここは開放形のダンジョンでしかも、人もいない。

 エリーナは魔法剣に指を這わて魔力をそそぐ。触れた魔法紋が輝き周囲へとひろがると、炎の渦と変わってエリーナを取り巻いた。炎の中にはもう「設計図」が入っている。あとは、エリーナが魔力をそそぐだけだ。

 周囲の熱が、光が、再び自分に取り込まれて魔力へかわる。自分の中で貯められ停滞していた魔力を、思い切りその巡りへと注ぎ込んだ。

「ハァアアアアアッ!」

 裂迫の気合い声も炎の中に飲み込まれ、炎が膨れ上がった。周りからはまるで爆発が起きたように見えたであろう。エリーナには「炎が喜んでいる」のが分かる。散れ散れに遊び回ろうとする炎を、魔力の神経を張り巡らして捕まえる。それでも炎は鎖を食いちぎろうとする。ふつうの炎魔法の使い手は、ここで畏れをなすものだ。強すぎる炎は、術者の中を巡りきれずに溢れだしてはその身を焼きつくす。エリーナの本当の強さは、最高峰の学院で学んだことでも、伝説の魔法剣に選ばれたことでもない。この、類い稀なる魔力量とその胆力であった。

 エリーナは炎を畏れない。それどころか親しみすらあった。その気性は、彼女の中に備わっているものとよく似ていた。(あたしの言うことを!!! 聞けええええ!!!)暴れまわる炎を、力いっぱいの魔力で押さえ込んだ。ようやく炎の群れは、その身に宿る設計図にしたがって形をなし、彼女の中を巡りながら広がってゆく。ふわりと彼女のからだが浮かんだ。収まる位置に収まり、自分自身が魔法の心臓となり頭となるのだ。そしてそこに現れたのは、炎からなる八首の竜であった。


77行、28分


ーー結果発表!!ーー


 戦闘の進行度を、戦闘準備、戦闘、戦闘後としてそれぞれ1、2、3とします。


*1行11文字(計算当時)


☆まとめ(記入時間、量、進行度)


○一人称

41行、20分

進行度1


○説明的三人称(剣客商売風)

33行、10分

進行度3


○いつもの三人称

77行、28分

進行度1



☆総合評価


進行度1に対するカロリー(手間)を計算する。


(行数+時間(分))/進行度


めんどい端数は切り捨てます。


一人称    60

剣客三人称  14

常三人称   100

(剣客商売の説明風三人称を剣客三人称、いつもの三人称を常三人称と略す)


 いや、自分でもビックリするぐらいの結果です。剣客三人称は常三人称(高校時代からの文体)に比べて1/7のカロリー(手間)でした。

 一人称は常三人称のおおわく半分くらい?

 やっぱいつもの書き方は作文の手間が多すぎて物語を記すにはむいてない感じか……。


 当時に書き上げた作品は前半のパートを常三人称と一人称で、後半を剣客三人称でやったので、書き上げることに一番貢献したのは、剣客三人称ということになります……。


 あと偶然、「事情を知ってる人」を一人称で書いたら、世界設定を小出しに説明するのにめっちゃ楽だった。新しい発見。次章もそうしようかな。


 因みに「書いてて・自分で読んでて楽しい度」では、圧倒的に常三人称が楽しくて、一人称もやってみると結構楽しくて、剣客三人称はだんだん欲求不満がたまっていきます。


 常三人称や一人称で早く進行できれば一番楽しいのに、人生ままならないね……。


 「僕の血を吸わないで」の阿智太郎さんみたいな感じを目指そうかと思っていたけど、物語をすすめるには剣客三人称なのか? あと地味に「山岳遭難系の本にありがちな語り方」も影響うけてる気がする……。てか今回、好み全開でそっちに寄せてったからな……。


 だけど結局、多くの物語を記そうと思ったら、大事なのは「語らない」ことなんだなと痛感しました。書くところと、書かずに余白にするところ。そして余白が想像の豊かさを生む。書かないことで記す。なんか感じ入るわ。


 そういう意味では、俳句や詩は極めてんなーって思います。


 まあ、余白があるのはいいねってのはよく分かりました。そのおかげで、おまけで随分あそばせてもらったかんね……。



ーー以下は参考・自己分析?ーー


○わたしの文体は三人称と一人称をいったりきたりするタイプ(魔術師オーフェン、スクラップド・プリンセス、特にフルメタル・パニックの影響を受けてる。最近の影響として、剣客商売にもこういう表現がある)


○一人称

 ずっと書けなかったけど、今回、「日記・記憶・独白」風を装えば書けることが分かった。ラッキー♪ でも油断すると常三人称に戻る。読み直して修正かけるの楽しいからいいけど。


「なろう系」の 謙虚堅実* や 野人転生 で一人称文体を読んでいたので、その影響を濃くうけてる。つか書けるようになる下地になった。


*「謙虚堅実をモットーに生きております!」のこと。なろう で読めます。悪役令嬢転生もの。逃亡してるけど、超楽しいのでお奨め! 二次創作を書きたいくらい。でも多分、麗華さま一人称では書けない。案はある。誰か合同やらない……?


○剣客商売風三人称

 今回の話を語りきれたのはこの三人称のおかげでした!


 池波しょうたろう先生やっぱすごいわ! ショタコンになっちゃう!(誤用)


 この三人称にくわえて、最近の山岳遭難系の本の語り方も影響うけてんなって思った。


○今後も初期の阿智太郎的な文体をめざすの?


 分からんなった。でも楽しさと進行効率かんがえるとやっぱ着地点ってその辺かなって。人生の中で作文する時間ってかぎられてるし。それでも書きたいストーリーはたくさんあるし(二次創作ふくめ)。できるだけ沢山のストーリーを書き出して、読み返してニヤニヤしたいし。


 まずは「僕の血を吸わないで」を読み返すことから始めるんだな……。

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