第9話 テストの後、アルバイトです。
中間試験も無事終わり、春の暖かな空気は一変、じめじめとした雨の多い季節に変わっていた。
「じめ~としてきたね~」
「ね~」
「そうだなー」
俺、カトちゃん、康ちゃんの同中三人組で昼休みを過ごしていた。お昼はもう既に食べ終わっており、机に覆いかぶさりだらける。
「もっと暑くなるなんて考えたら夏は来てほしくないよね~」
「俺は今テストの点数に打ちひしがれてるから夏の話をしないでくれ…」
「あら、和栗くんは勉強が得意でなくって?」
後から合流してきたのは夜巳さんと由ちゃん。
午前の授業で返却されたテスト用紙と睨めっこしていた康ちゃんに夜巳さんが意気揚々と声を掛ける。
「そうなんだよなー」
「和栗は運動神経に特化した脳筋だから勉強は中学の時からからっきしだよね。ここに入れてたことに驚いたもん」
「まああんときは頑張ったなー。絶対合格してやるってさ。あれ以上はもう頑張れないな」
「ちなみに平均何点くらいだったの?」
「今回は60点くらいだったかなー」
「高いじゃないの!!」
「わ、びっくりした…どうしたんだよ」
大きな声は教室に響き、クラスメイト達の注目を集める。
「ごめんなさい。でも高いじゃないの!どうしてそんなに落ち込むのよ」
「いや、低いだろ?じんたんや加藤と比べたら」
「俺は80ちょいだったかな~」
「私はケアレスミスが無ければ全教科100点だったかな」
「あの、そこまでにしてあげて…早伊香は勉強が苦手だから」
突けば倒れそうなほど弱弱しい夜巳。
「あー誰だって苦手なもんはあるからな?次があるなら次頑張ろうぜ?」
「あ!なら期末に向けて勉強会しようよ」
「いい考えだと思う!ね?早伊香も期末試験頑張りましょ?」
「やっと中間が終わったのにもう期末の話とかやめてくれよー」
康ちゃんの一声によって笑いに包まれる。
放課後になり康ちゃん、夜巳さんは部活へ。由ちゃんは先生に頼まれごとで学校に残るらしい。俺はというとカトちゃんと一緒にバイト先へと向かっていた。
「え!?まだ言ってなかったの」
「うん。言ったら絶対来るから。恥ずかしいじゃ~ん」
「そうかもだけど、あれは…」
学校を出る前に仁太を捕まえた時、由花を見かけ「また明日」と伝えた。あの時の彼女は絶対に勘違いをしたような顔をしていた。訳を聞きたかったが早々にその場を離れた由花を追うわけにもいかず、仁太のバイトの時間も迫っていたことからそのまま学校を後にしたのだった。
「明日ちゃんとバイトの事話すんだよ?私も由花に話してみるから」
「うぃす」
ちょうど話し終わったところでバイト先に着く。そこはカトちゃんの家でもあり、カフェでもある。カトちゃんのお父さんが経営しており、バイトを探しているとカトちゃんに相談したところ「なら家で働くかい?」と誘われたことをきっかけに働きだした。
「おかえり仁太、モモちゃん!!」
「モモちゃんはやめろ!」
「相変わらず仲が良いですね~」
「でしょ!!「どこ見て言ってる!?」」
店長でありカトちゃんのお父さんでもある大樹(だいき)さん。見ての通り娘であるカトちゃんの事を溺愛している。俺の事も本当の息子のように接してくれる恩人である。
「さて、今日も働きますか~」
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