その手の温もり

12話

 家に帰った途端、どっと疲れが押し寄せてくる。


 友達と出かけるという一大イベント(当社比)で気を張っていたところにあんなことが起こったんだから、疲れない方がおかしい。


 服も着替えずにベッドに倒れ込む。


 結局、二人が何の話をしていたのかはわからないままだった。

 成瀬さんが何かを抱えていて、その「何か」について、桜井さんは事情を知っている。


 わかったことはそれくらいだった。

 

「はあ。うまくいかないな......」


 天井を眺めながらぼそっと呟く。

 

 私はいつもそうだった。

 基本的に他人に無関心で、他人との間にできた関係性を維持できない。ふと気がついた頃には周りと溝ができていた。だけど、それを埋める努力をしなかったし、しようとも思わなかった。


 だけど、今回は少し違う。自分でも理由はわからないけど、このままで終わるのは嫌だった。

 そんな衝動に突き動かされ、スマホのスリープを解除すると、無機質な文字が目に映る。 


『ごめんね。さよなら』


 ふっと息が漏れる。映画とかドラマでよくみるやつじゃん。


 何が「ごめん」なのか。

 なんで「さよなら」なのか。


 画面から顔をあげて天井を仰ぐ。


「わかるように説明してよ......馬鹿......」

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