03 鹿児島中央駅に到着して速攻で感じたこと
新幹線の終着駅が鹿児島中央駅だった。ホテルは、そこから市電で高見馬場に二泊分予約していた。
到着したのは午後三時すぎ。まずはチェックインしよう、車中にいるときから思っていた。
現地に着いてからは早くも心は翌日に予定している知覧へと飛んでいた。とりあえずはホテルに着いて、重いリュックを下ろしたかった。バスロータリーに辿り着いて、そこから伸びる広い道路中央に据えられた銅像をあつめたオブジェに息を呑む。
「若き薩摩の群像」というタイトルがまぶしい。
銅像の一体一体に見守られながら、交番へと足を運ぶ。
わたしを見て、カウンター内側にいらした若い警官が「どうしましたか?」と声をかけてくださった。彼は、こちら側へと対応するまで一人のご婦人に対応していらしたようだった。ご婦人はカウンター越しに、なにかの書類を書いている。
「お忙しいところ、すみません。あのー。高見馬場というところまで行きたいのですが……市電やバスの乗り口が、よくわからないのです」
バスや市電の停留所看板を見ればいいじゃねえか馬鹿野郎、と普段のわたしなら言ってしまうけれども、まず駅前の人の多さに圧倒されてしまったのだ。うっ、と身も心もすくんでしまった。ついつい安易な方法「他人に頼る」ことを選んでしまった。
若い警官は一所懸命に伝えてくれようとしていた。が、わたしの伝え方も不足があったらしい。なんとなくだけど、市街よりも離れたところに住んでいる人に対しての説明っぽかった(汗)。
「すっ、すみません。わたし、鹿児島にはじめて来たんです」
警官さん説明しなおし。
これもまた一生懸命!
カウンターで書類を書いていらしたご婦人が声をかけてくださった。
「用事がなかったら、連れて行ってあげられるんだけど、ごめんなさいね」
いえいえ、とんでもないことです!
「よい旅になりますように」
にっこり微笑んでくださった、あのご婦人はとてもきれいな方でした。
警官とご夫人にお礼を言って、交番を出た途端。なぜか不意に泣きたくなった。
一所懸命に身を乗り出して説明していただいている最中、当然のことかもしれないが始終が薩摩弁? だったのだ。それが本当にあたたかくて、懐かしい感じがしたのだ。その言葉の響きも含めて、自分にかけられたやさしい時間が心底ありがたかったのだ。
さて。
脳みその中身が鹿児島到着前から「早く知覧の記念館に行きたい、明日のために自身すべての管理を徹底する!」ということだけで、いっぱいになっていたわたしは。
——遠く郷里を離れて鹿児島に集められた男の子たちは、とても心細かっただろうな。彼らにやさしい気持ちで接する薩摩の方々の振舞いや言葉の響きは、とてもとても有難かっただろうな。
そんなことを想像しながら、夜を過ごしました。
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