知覧特攻平和記念館を拝観いたしました

優美香

01 きっかけになった書籍がある

 記録を載せることを赦してくださるカクヨムサイトに感謝いたします。 


 どれくらい前になるだろう……。いつ購入したのか記憶がない書籍がある。きちんとカバーをかけて、読むときは手を洗ってしまう。薄い本だが、ページをめくるたびに背筋も伸びていることに気づかされる書籍なのだ。

 引っ越しのたびに何十冊も本を捨てたり服を捨てたりするのが常だが、ごくわずかな書籍たちは、なぜかずっと手元に置いておいている。

 あらためて奥付を見てみる。どうやらわたしは、初版を買っていたらしい。それまでの人生で、一番苦しかった時期だった(現状でも、さほど変わりはないかもしれないが)。

 その本の表紙いっぱいに広がる青空と遠浅のコバルトブルーの海と、いかにも静かな波のさざめきの写真……たぶん、その静けさと穏やかさに惹かれて購入したのだろう……今は、そんなふうに思う。

 そして、その第一印象は正解だった。少なくとも、わたしにとっては。なにもかもが欠けることなく備わっていた。


 いつまでも、いつまでもお元気で——特攻隊員たちが遺した最後の言葉

 編者は、知覧特攻平和記念館。


 昭和二十年三月から六月にかけて、沖縄周辺の海にいたアメリカ艦隊へと特攻、散華していかれた陸軍所属特攻隊員たちの遺書を集めたものだ。


 カバーをかけたこの本の背表紙が目に入るたびに、その時々で誰かに言われているような気がする。

 ―—「それで、いいのかい?」


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