第43話
そして風邪をひいてから1週間後、ついに咳が治って、仕事をできるようになった。みんな過保護すぎだ。布団から出てるようになったが、何にもやることがなくて、適当に明から来た本を読んでいた。漢文は好きなわけでもないが、まあまあ面白かった。それと、南方の国からの本もあって、僕は前世で、英語、フランス語、スペイン語、オランダ語、ポルトガル語、ロシア語、ウクライナ語が読めていた。それで南方の本は、ポルトガル語だったが、意味が分かって、そっちの情勢を知れてよかった。竹千代とか驚いていたけれどなんかわからないけれど納得していた。僕は天才だと思われているみたいでなんだかんだなんでも出来ると思われているみたい。謎すぎる。
「義兄上、彦五郎風邪から回復いたしました。」
「本当に良かった。心配したんだぞ。」
「別にそこまで深刻ではないので心配しなくて大丈夫なんですが」
「何が起きるかわからないではないか。」
「まあそうですが何度もなっているので感覚的に」
「まあ治って本当に良かった。」
「それで若狭の事ですが、父上に使者を1週間前に送っておいているので、後2、3日で返答が来るかと。」
「そうか。それは良い事だ。三好が挨拶に参るそうだ。」
「はっ」
「其方も同席せよ。余は上座に座る。其方は中座に座れ。三好は下座だ。其方は一門衆だからな。家格的の違う。」
「はっ」
そして三好長慶が義兄上に挨拶に来た。
「三好長慶、面をあげよ。」
「はっ」
三好は明らかに顔を顰めた。何せ最初入った時は、襖が開いていなくて、下座、中座しか見えなかったのに、のちに襖が開けられて上座まであったのだ。そして僕が嫡男なのに上に座っているのは気に食わないだろう。僕は他の幕臣よりも格上の扱いを得ている。また、僕は公卿だ。その意味でも他の幕臣とは立場が違うのだ。
「上様にいらしては誠にご機嫌麗しゅうございまする。」
「うむ、彦五郎のおかげで今日に戻れた。彦五郎は誠に天晴れだ。三好よ、其方が負けたせいで余は京を追われた。其方に味方もしれおらぬのにだ。一体どういう事だ?と責めたいところだが、彦五郎が取り返してくれたのだ。許そう。」
「はっ、ありがたきお言葉、今川宰相様もありがとうございます。」
「うむ、三好修理大夫、同じく義兄上の家臣ゆえ遠慮は無用。義兄上の好意を受けられよ。」
「上様、誠にありがとうございます。」
「うむ」
「上様におかれましては、京に帰還されたことを心よりお祝い申し上げます。」
「彦五郎のおかげだ。三好も励め」
「はっ」
三好長慶は屈辱に塗れた様子だった。これがどうなるのやら、わからぬが何も結局協力しなかったから仕方あるまい。義兄上を政治の駒と思っているようだしな。
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