第21話

 僕は無事に伊勢を平定した後、風魔小太郎を使って伊賀と交渉していた。その結果、3人の上忍のうち百地と藤林は僕と対面する事になった。もう一つの服部は三河の松平に仕えているらしい。僕の記憶だと分家とかそんな感じだと思うがまあ詳しくはわからない。


 そして、松平は今川の家臣で確か当主の竹千代は現在駿府にいるはずだ。まあ服部を味方につけているぐらいは気にならぬが。松平はそこまで力があるわけでもないし。


 それに、上忍3家のうち2家を味方につけたらかなり有益だ。恐らく今回の面会で彼等は僕を見定めてくるであろう。そして僕のことを伊賀を治める主として満足したら従い、そうでなかったら徹底抗戦だろう。彼らを味方につける事は非常に重要だ。徹底抗戦されたら恐らくゲリラ戦法を使ってくるだろうし面倒だ。犠牲も大きくなるだろう。


「若殿、藤林長門守、並びに百地丹波を連れて参りました」

「小太郎か、入れ」

「はっ」

小太郎に連れられて2人の痩せた汚い服を着た男が入ってきた。伊賀の実質的トップである上忍なのにこの有様とはかなり伊賀の困窮はすごいのだろう。服部が松平に仕えるぐらいだしな。


「其方らは百地丹波と藤林長門守か?」

「「はい」」

「余が今川左近衛権中将だ。帝より伊勢、伊賀、大和の三ヵ国の平定を命じられた。こちらが勅書だ。本題に入りたいところだが自己紹介してくれぬか?初対面ゆえ、どちらがどちらかわからぬ」

「拙者が百地丹波だ」

「拙者が藤林長門守だ」

「そうか。ありがとう。我が方についてほしい。某に従ってくれたら所領安堵は勿論、伊賀が豊かになるように支援いたそう。それに不作が起きても、作物を供与する。その代わり我らの臣下として働いてほしい。別に忍びだからと見下す意向はない。どうだ?今川に降らぬか?そうでなければ勅命に従い、其方らを滅ぼす必要がある」

「この風魔小太郎からも頼む。若殿は奇想天外の策を思いつき、我らを近くに置く。優秀だと判断したものを出世させるし今川の家臣たちも忍びを見下さず、重要だと理解して尊重してくれる。同じ立場だと見ている」

「風魔殿、そうは言われても我々は伊賀者、風魔殿は小田原であろう?」

「そうだが忍びとしては同じ。それに若殿のもとで働くのは非常に楽しい。風魔党は一同若殿に降ってよかったと考えている。それに藤林長門守、貴公は確か治める理由が欲しいのであろう?主君は勝手に攻めているのではなく、帝の勅命にて行っている。官位の都合もあり、国司になることはないだろうが、若殿はいずれ守護に任ぜられるであろう。それに公方様と義兄弟の契りも結ばれておいでだ。従ってみないか?」

「わかった。今川左近衛権中将様に藤林長門守以下一族郎党は従います」

「私、百地丹波も同じく、今川左近衛権中将様に従わせて」

「従ってくれて嬉しいぞ。我が親衛隊を連れて明日、伊賀に向かう。工藤昌豊、昌祐用意せよ」

「ははっ」

「伊賀にて改革を行おうではないか。百地、藤林頼りにしている。これから頼む」

「「はっ」」

僕は無事上忍2人を味方につけられた。


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