子どもの頃は【てんとれ祭】

 家に帰ると、コモドドラゴン が寝ていた。ぼくの布団で。

 びっくりした。

 本当だったんだ。


 帰り道、

 兄が

「家に帰ると キミの布団で コモドドラゴン が寝ているぞ」

 って、言ってた。

 まさか、

 本当だとは 思わなかった。


 ただ、

 幼かったぼくは、コモドドラゴンを ドラゴンと聞き間違えて。


「コドモドラゴン、いた!」


 と、無邪気に はしゃいで。

 毎晩、一緒に寝たものだった。



 コドモドラゴンは、だんだんと大きくなって。



 ではなくなってきた。


 オレンジだった体が焦げ茶色に変わった頃に、コドモドラゴンは ぼくの前から消えた。


 こんな書き置きを残して。


『キミの 鼻毛には ウンザリだ』



 ぼくは 今まで鼻毛なんて気にしたことがなかった。


 だから、

 コドモドラゴンに嫌われたのが悲しくて、

 鼻毛を全部無くしてみた。


 そうしたら、

 近所のおねえさんに言われたんだ。



『明日はきっと 素敵な 髭が生えるでしょう』


 よし!

 それなら、

 きっと、オトナになったコドモドラゴンに会えるはず!




 え?

 コドモドラゴンじゃなくて、

 ドラゴンじゃないかって?


 まさか!

 コモドドラゴンに 出会ったら、

 こんなのぼくなんて

 ウリ坊と、間違われて食べられちゃうよ。


 ぼくは

 鹿みたいに早く走れないし。

 水牛みたいに力強くない。

 イノシシのように真っ直ぐでも、

 まだまだだからさぁ。



 ぼくが

 オトナになったら、

 オトナになったコドモドラゴンと一緒に

 コモドドラゴンを見に行こうかな。



 明日、髭が生えたら、

 ぼくは少しオトナになれる。


 きっと、家に帰ったら、

 オトナになったコドモドラゴンが

 ぼくの布団で寝ているんだよ。




 きっと、そうだよ!














【参考・引用/蜂蜜ひみつ/てんとれないうらない/

 第1話 キミの 鼻毛には ウンザリだ/

 第2話 明日はきっと 素敵な 髭が生えるでしょう/

 第114話 家に帰ると キミの布団で コモドドラゴン が寝ているぞ】


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