ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜
やきいもほくほく
第1話
ここで、質問です。
もし、あなたが悪役令嬢に転生したとしたらどうしますか?
もちろん答えは全力でシナリオ回避するために奔走する。
『これで準備万端、絶対に大丈夫……!』
そう思っていたのに、やはり現実はうまくはいかないようです。
何故ならばヒロインと婚約者に、ざまぁされてしまう悪役令嬢にもかかわらず、その婚約者でガチで一目惚れしたからです。
そして今、断罪回避の一歩を踏み出したのですが……
「はじめまして、ファビオラ嬢……僕はマスクウェル・ハート・トランプです」
「はっ、わっ……───ッ!?」
「…………」
「……ファビオラ嬢?」
戸惑うマスクウェルの表情を見ながら口をパクパクと動かしていた。
「こら、ファビオラ!キチンと挨拶なさい」
「は、ひ………」
「ファビオラっ!」
「ファ……ファビオラ・ブラックでっふわ!」
「……ははっ、おもしろいご令嬢だね」
天使のように微笑むマスクウェルはこの国の王太子。
そんなマスクウェルに一目惚れしてしまったことで、今まで念には念をと練り上げてきた全ての作戦が無駄になってしまうとは思いもしなかった。
ファビオラに転生して早一年──。
乙女ゲームの悪役令嬢だと気づいたのは、侍女が転んだ拍子に熱々のダークチェリーパイがファビオラの顔面に叩きつけられたのが原因だった。
後ろに倒れ込んで後頭部を強打したファビオラはそのまま意識を失う。
しかし目が覚めたら前世の記憶が蘇っており、ここが乙女ゲームの世界だと気づく。
性格も考え方も百八十度変わったため、家族に何度も何度も医者を呼ばれる羽目になったファビオラは現在十二歳だ。
「ファビオラちゃん……!あなたは本当にファビオラちゃんなの!?」
「何度もそう言っているではありませんか。わたくしはファビオラ・ブラックですわ。お母様、落ち着いてくださいませ」
「だ、だが今までのファビオラとは何もかもが違うではないか!ドレスや宝石を毎日強請り、使用人達を影で虐げては、いつも問題を起こしていたファビオラがまるで別人じゃないか!」
「今では残った侍女は今やエマだけだ。そんなファビオラがダークチェリーパイを顔面に叩きつけられて後頭部をぶつけたことにより、別人になるなんて信じられない……!」
「それに関しては反省しております。今日から心を入れ替えて頑張りますと説明しているではありませんかっ!」
「ファ、ファビオラが……反省するなどありえない!」
「もうっ!お二人ともいい加減にしてくださいませ」
一年に渡り、このやりとりを続けたが今でも信頼されていない。
(どれだけファビオラって我儘だったのよ……!いや、記憶によるとかなり我儘だったけれども)
ファビオラは一代で成り上がった新興貴族の令嬢だった。
父は贅沢三昧で潰れていった貴族達から土地やらを買い取り、飛ぶ鳥を落とす勢いで領地を拡大している。
一人娘であるファビオラは生まれた時から苦労を知らず、湯水のようにお金を使う少女だ。
記憶から見てわかる通り、相当な我儘っぷりである。
裕福なブラック家で欲しいものをなんでも手に入れてきたファビオラに怖いものなどない。
自分のものを奪われることが何より許せない。
もし奪おうとするのなら叩き潰すまで彼女は止まらない。
『わたくしのものを奪おうなんて身の程知らずね……死んで詫びなさい』
そんな決め台詞と共に人を殺していく、過激な悪役令嬢ファビオラ・ブラック。
悪役令嬢ファビオラが死ぬ以外の選択肢はないのか……そう考えた結果、ある答えに辿りつく。
(わたくしは早々にこの物語からフェードアウトして貴族の令嬢として慎ましく普通の人生を生きるのよ!)
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