第4話

と、いうことで先日、俺は有明さんと恋人になった。

ゆくゆくは一緒になる。

神様のお嫁さんになるのだ。

有明さんの元で一緒に暮らす、夢の日々。

でもゆくゆくだ。

お世話になっている御爺さんを見送ってからじゃないと駄目だ。

御爺さんを一人にするって選択は俺にはない。

俺のことを親身になって考え思ってくれているのは、有明さんと御爺さんだけなのだから。

この話を御爺さんにしたら、すごく驚いて喜んでくれたのが嬉しかった。

今すぐじゃないって部分も納得してくれた。

有明さんもそうしなさいって言ってくれたのが、すごく嬉しかった。

でも、恋人になったのだから俺はしたいことがあった。

デート、だ。

有明さんとデートがしたい!

ずっとデートがしたかったんだ。

お山の散歩はあくまで散歩。

お付き合いしてないからデートとは言えない。

俺はそう思っていた。

だからデートに行きたいですって言ったら、有明さんはものすごく喜んでくれた。

プランは俺が考えてもいいですか?って聞いたらますます楽しみって言ってくれた。

俺は必死に、デートプランを考えた。

初デート。

大事だ。




有明さんはいつも月喰山の登り口、石段近くに佇んでいる。

恋人になる前、俺は登り口近くの駐車場に車を止め、有明に声を掛け周囲を散策おしゃべりするってのを繰り返していた。

他所へ連れ出してはいけない。

と言うのが俺の中にあった。

けれど本人から「キミとだったら遠い街に遊びに行くのだって平気だよ?」と教えてくれた。

つまりお泊りデート可。

想像するだけで胸のドキドキが治まらない。

とはいえ今日は初デート。

そんな遠出はまだ早い。

ただでさえデートっていうワードで緊張しているのだ。

デートすることに、慣れないと。

はぁ、緊張する。

車をいつもの処に止め、下りるとすでに有明さんの姿を確認出来た。

石段の元、緑に映える真黒な着物をすらり身に着けている。

ああ、今日も綺麗だ。

俺は待たせたくなくて駆け寄った。

すると有明さんがすぐに気付いてくれた。


「ふふ、おはよう」


「おは、よう」


ございます、というの言葉を飲み込む。

恋人になったのだから敬語は無し、と有明さんに言われたからだ。

でもまだ慣れない。

有明様を有明さんと呼ぶのも緊張する。


「鵜篭クン、今日は宜しく、ね?」


有明さんがニコリと微笑んでくれた。

俺より背も高ければ体格も良いのに何処か儚げな男性。


黄色い左目。

今日は優しい鴇色の右目。

それ以外の色は白黒。

人間ではないと一目で分る美しいひと。

月を喰らう、神様。

真っ白な御髪は艶がありすぎて今日も眩い。

優しい、俺の、恋人。


「鵜篭クン、今日は何処へ…でぇと、連れてってくれるのかな?」


「あ、はい。えっとですねっ」






この後みっつのデートコース落ち同じオチ、が続きます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る