第3話 試験終了

 ちょっとぐだってる謎回です。

 ――――――――――――――――――

 試験会場を離れると、ルーノが詰め寄ってきた。


「ねえ、あれ、どういうことなの?アーリー全属性!?しかも詠唱破棄も使えるの!?」


「え、えーっとですね、取り敢えず落ち着いてもらって…」


「落ち着いてなんかいられないよ!アーリーなら心配ないかもしれないけど、その年で全属性持ち且つ詠唱破棄ができるなんて、悪徳貴族の恰好の的だよ!心配するだけ無駄かもだけど!」


「ルーノ……なんて優しい子…とぅんく」


「……何言ってんの...?と・に・か・く!危ないんだから気を付けないとだよ!なんかアーリー騙されやすそうだし」


「俺そんな風に思われてたの。ま、だいじょぶっしょ。自分で言うのもなんだけど俺強いし、最終兵器として親がいるからね☆」


「最終兵器つよ……まぁ大丈夫そうだね。ていうか会場抜けてきちゃったけど大丈夫かな?」


「あ"ー...戻るか。面倒なことになる気がするけど」


 会場に戻ると案の定というかたくさんの人が群がってきた。


「な、なぁ、アリオスト・レグシェルって言ったよな、あのレグシェル家の!?」


「あの、私、さっきの試験での魔法、すごく感動して――」


「あの!ぜひ!魔法を教えていただけませんか!」


 なんかデジャヴ……。

 取り敢えずルーノに助けを求めよう。


「ルーノ!たすけ――」


「注目~!」


 前方から大きな声が聞こえた。見ると、試験官の1人らしかった。


「今からステータスの確認を行います。名前を呼ばれた人は前に出て来てください。まず――」


 流石は大半が貴族、といったところか。いつ呼ばれてもいいよう、みんな散っていった。何はともあれ助かった。勝手に拝んどこう。


「試験官さん、ありがとうございます」


「何言ってんの。そもそもアーリーが派手にやったのが原因でしょ?」


「まぁまぁ、試験で手加減しすぎるのもあれでしょ?」


「ルーノ!」


「アリオスト・レグシェル!」


「同じタイミングだね」


「そだね、健闘を祈る」


「ステータス見られるだけじゃん(笑)またあとでね」


 ―――――――――――――


 俺のステータスを見るのは、さっき助けてくれた(違う)試験官さんだった。金髪緑眼の美人さんだ。


「お願いします」


「それでは見せてもらいますね~。あぁ、隠蔽は外していいですよ~アリオスト君」


「へ?」


「あれ、お母さまから話聞いてませんか?学園長の前では隠蔽外していいよ~って話」


「あ~、なんか言ってた気がします……ということはまさか」


「はい、そのまさかです~。今は変装中なのでエルフの特徴とかは見えなくなっていますが、学園長のシュリテール・ウィーロンと申します~」


「なるほどそうでしたか」


「ですです。取り敢えず今はステータスを見せてもらいますね~」


「了解です。えーっと隠蔽を外して...っと。はい、これで大丈夫です」


 一応全部外した。


「失礼します……これは...!?なんですかこの能力値!?高すぎませんか!?想像魔法…?スキルも…おかしいものが多すぎます~これは確かに隠蔽必須です...」


 学園長はその後も俺のステータスを見てはうんうん唸ってを繰り返した。


「ふぅ…確認終わりました。どれだけ驚かせれば気が済むのか…アリオスト君、適性や称号など、気になることだらけですがここで話し込むわけにもいかないので、一度リリーに話を聞いてみようと思います。君はくれぐれも他人にそのまま見せないようにしてください。卒倒しちゃいますからね」


「はぁい...ありがとうございました」

 

 ―――――――――――――


「おかえりアーリー、長かったね」


「うん、ちょっとね」


 すると、ルーノがこちらを真顔で見てきて


「気にはなるけど聞かないことにしよう。そのほうがいい気がする。本能がそう言ってる」


「動機はあれだけどそうしてくれるとありがたいかな!」


「あ、終わったんじゃない?」


「流れるような話題転換…」


 あ、ウィーロン学園長が前に出てきた。


「試験はこれでおしまいです。今日は帰ってもらって構いません。結果とクラスは入学式の日に張り出されますので、楽しみにしていてくださいね」


 学園長が退出していく。去り際、かわいそうなものを見るような目でこちらを見てきた。その目は怒られるのかわいそう…ということを雄弁に語っていた。やめて、そんな風に見ないで!


「終わったね~。そうだ、アーリーってこの後予定あったりする?」


「ないけど...まさか...!」


「王都で遊ばない?」


「い、いいの?」


「?逆になんでダメなのさ」


「ありがとう…本当にありがとう…」


「何急に...こわいよ」


 何を隠そう俺、前世含め友達と呼べる存在はほとんどおらず、遊びに行くなんてもってのほか。密かに憧れを持っていた。


「いや、何でもない。ただうれしくて…楽しみだな!」


 ルーノは首をかしげていたが、何を思い出したかハッとした顔をして


「アーリー、今日は思いっきり楽しもうね」


 それはそれは優しい顔で言ってきた。


「なんだよその顔」


 ポンポン。肩をたたかれる。なんだ、その全部わかってるよ、みたいな顔は。


「とにかく行こう、遊びに!ね!」


「…うん!」


 そうして俺たちは街に繰り出した。


 ――――――――――――――


「やっぱすげぇにぎわってんなぁ」


「そりゃそうだよ。この時期は学園への入学があるんだから」


「あーなんか毎年祭りかってくらい騒ぐってやつ?変わってるよなーこの国」


「そうなのかな?ほかの国について知らないから何とも言えないけど」


「ま、今はそんなことより楽しむが先!試験で消耗したからとりあえず何か食べたい」


「そうだね、じゃあ僕のおすすめの店に連れてくよ!」


「ルーノってこの辺に住んでたのか」


「うん、実は僕グレイス商会ってとこの息子なんだ。知ってるかな?」


「待って、なんか知ってる気がする。思い出すからちょっと待って………あ!ちょくちょく依頼受けてたとこか!ライル草の!」


 あーすっきり。


「え、うちの商会からの依頼受けてたんだ!ライル草の依頼…まさか何回かに一回くらいあったすごい状態のいいライル草ってアーリーのだった!?」


「それが俺のかどうかは分からんけど傷とかは極力つけないように採取してたよ」


「絶対そうだ!何時も冒険者ギルドの方に依頼してるんだけど、大体の冒険者って雑なのかな。傷があるやつとかがほとんどなんだよね。そういえばあのライル草、レグシェル領から届いてたんだったなぁ。すっかり忘れてたけど」


「あー確かに他の人のはそうかも。うちの領にいる冒険者もガサツな奴多いし。偏見だけど(笑)」


「ふふ、そうなんだ。あ、ついたよ!ここが僕のおすすめの店!家族とよく来るんだ」


「おお!」


 たどり着いたのは、異世界でよく見るような(あ、ここ異世界か)食堂だった。


「平民の中では有名でね、すごくおいしい上に値段もあんまり高くないから学生でも来られるんだ。ここだけの話、一部の貴族も来ることがあるくらいなんだって」


「すごい店なんだ」


「うん。さ、入ろ!」


 店内はとても賑わっていて、みんな笑顔で食事をしている。そんですごい良いにおいする!


「いいにお~い。食べるの楽しみ!」


「でしょでしょ!僕の一押しはね~、これ!スーチェっていって、パンをつけて食べるんだけど、これがまたおいしくて!見た目はさらさらしてるスープなのに味は濃厚!」


「おお、聞いてるだけでおいしそう。よし、これにしよう」


「おーけーおーけー。おばさん!スーチェ2つ!」


「はいよ~って、グレイス商会んとこのルーノじゃないかい。そういや今日は学園の試験の日だったか」


「お久しぶりです」


「久しぶりだねぇ、ご両親は元気かい?」


「はい、おかげさまで」


「そっちの子は友達かい?」


「はい!彼は今日友達になった――」


「アリオスト・レグシェルと言います。よろしくお願いします」


「お、お貴族様だったのかい!?あたし失礼なこと言ったり…」


「あ、大丈夫ですよ俺そういうの全然気にしないたちなんで。ただのアリオストだと思ってもらって大丈夫です!」


「ほ、本当かい?それならいいんだけど…」


「大丈夫ですよ。アーリー最初からこんな感じだったんで」


「失敬な。もうちょっとちゃんとしてたでしょ」


「ちゃんと……?」


「変わったお貴族様だねぇ。ま、いいさ。ルーノの友達ってんなら今日はサービスしちゃうよ」


「わ、ありがとうございます!」


「すぐ持ってくるから待ってな」


 その言葉の通り、料理はすぐにきた。


「ほあぁぁぁ!めっっっちゃおいしそう!!」


「ふふ、すっごい声。食べよ食べよ!いただきます!」


「いただきます!」


 まずはスーチェをそのまま一口。口の中に濃厚でクリーミーな味が広がる。地球で言うシチューに近い。入っている具もいただく。お肉のようなこれはホーンブルかな?


 ――――――――――――――――

 ホーンブルとは

 王都から西に少し進んだところにあるシューカー草原に多く生息している大きな角を持つCランクの牛型の魔物だ。

 その攻撃手段は突進のみと単調だが、その速度は速く、体も大きいためパーティーでの討伐が推奨される。

 ――――――――――――――――


 因みにこの魔物、俺は倒したことがある。もちろんソロで。


 ……と、今はスーチェだ。次はパンをつけて食べてみる。

 おぉ、少し硬めのパンがスーチェに使ったことで柔らかくなり、中にもスーチェがしみ込んでいて、とてもおいしい。


 もぐもぐ、ごくごく。もぐもぐ、ごくごく…


「……はっ!もうない……だと!?」


 あまりのおいしさに無言で食べ続けていたら、もうなくなっていた。


「アーリー食べるの早いね。っても僕もそろそろ食べ終わるけど。そんで面白いくらいに無言だったね(笑)」


「いや、美味すぎて。お恥ずかしい…」


「ごちそうさまでした!あーおいしかった」


「食べ終わったかい。どうだった?うちの料理は」


「いや、もう最高でした!絶対また来ます!」


「そりゃ嬉しいね。待ってるよ」


「はい!では、また」


「さて、時間はまだある。何しようか。俺はあんまこの辺詳しくないから、ルーノに決めてほしいかな」


「いいよー、じゃあ、あっちの――」


 俺たちは王都で思いっきり遊んだ。


「あー楽しかった!次会うのは入学式の日かな。おんなじクラスだといいなー」


「そうだね!あ、僕こっちだから、またね!」


「うん、またね!」


 入学式の日が楽しみだ。

 ――――――――――――――――――

 ほんとぐだっててすみません……


 次回:なん、だと…!?


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 またお会いしましょう。ではでは~

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