第8話 冒険者登録2
―冒険者ギルドにて―
ローは悩んでいた。先ほどアリオストが持って行った依頼は、雑草だらけの場所からライル草を10本も見つけるというなかなかに難しいものなのだ。
失敗も経験だと思ったが、初めての依頼であれは酷だったろうか。
そんなことを考え、唸っていると、
「ロー?お前そんな唸ってどうしたんだ?」
「ギルマス。いえ、さっきアリオスト君が持って行った依頼、残っていたライル草のやつなんです。初めての依頼であんな難しいの、止めるべきだったかなと思いまして…」
「あー、よりにもよってあいつ、あれを持ってったのか。まぁそんなに悩むものでもないだろ。あいつなら多分…早々に達成して帰ってくるさ」
「まさかそんな…」
ガチャ。
「ギルマス。ローさんも、ただいま戻りました~」
「お、噂をすればじゃねえか。どうだった坊、依頼は達成できたか?」
「ええ。ちゃんと持ってきましたよ~ライル草10本」
はい、とアリオストはライル草10本を机の上に乗せた。
「おう、確かに。これで以来は達成だ。よくやったな、坊」
「えへへ、ありがとうございます!」
「え、ええぇぇぇぇ!?」
-アリオスト-
おわっ!なんだよ、ビビったぁ…
「どうしたんですか?」
「いや、え、だって、あの依頼、すごい難しくて残ってた物で…失敗するんじゃないかって心配してて、それを何でそんなあっさり…というか、どうやって見つけたんですか!?」
「え、あれそんな難しいものだったんですか」
じゃあ止めろよ!
「見つけた方法についてはちょっと...」
「き、気になる…!」
「ロー、冒険者は詮索禁止。これはルールだろ。それをギルドの職員が破るんじゃねぇ」
「うぐっ、す、すみません…アリオスト君もごめんねぇ…」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしていません」
あ、素材の換金してもらわなきゃ。
「あのぉ、素材の換金をお願いしたいんですけど…」
「そ、素材の換金?何か他の薬草でも採ってきたの?」
「いえ、なんか採取の途中でオオカミにあって、それを倒したのでその素材を…」
「オ、オオカミ!?倒した!?け、怪我はしてない?」
「はい、これが魔石と素材です」
「あ、精査しますね~...ってでかっ!これ、グレイウルフとかの魔石じゃないサイズですよ!?何を狩ったんですか?」
「あ、なんかレストウルフっていうやつらしいです」
「レ、レストウルフ!?Bランクの魔物じゃない!」
「そんなにすごいものなんですか?」
「すごいも何も、Bランクの魔物なら普通、最低二人以上でパーティーを組んで討伐するものなの。ソロで挑む人なんてなかなかいないわ」
「へぇ~というか、ランクってちゃんとあるんですね」
特に聞かなかったからないのかと思ってた。
「あ?ローまさかお前、ランクの説明してねえのか?」
「え?あれ、説明して…ない!?」
え、説明されるもんなの。オレシラナイ。キイテナイ。
じとーっとローさんの方を見ていると、
「おいロー!ランク説明は大事だって何度も言っただろうが!今の話を聞く限り、坊は魔物のランクどころか自分のランクも知らねえだろ!そんな状態で違依頼に行かせるんじゃねぇ!!危険だって何回も言っただろ!」
「はいぃぃ!!すみませぇぇん!!!」
「ハァ…ったく…ロー、お前さっきの素材換金してこい。すまんな坊。実はこいつ、まだ新人なんだ。まぁ坊の登録の時はいろいろあったしな…許してやってくれ」
「気にしないでください。それで、ランクって?」
「ああ、俺から説明しよう。まず冒険者のランクだな。冒険者にはランクがあって、7つに分かれている。Fから始まって、順番にE、D、C、B、A、Sと上がっていく。さっきカードもらったろ?あれは冒険者カードと言って、ランクが上がるごとに変わっていく。FとEは木。次に鉄、銅、銀、金、Sは
「順番に登録したばかりの冒険者はFからスタートで、坊は今ここだな。ランクを上げるには依頼をこなす必要がある。依頼にはランクの目安がついているから、自分の実力に見合ったものを受けろ。受けられる依頼は自分の一つ上のランクまで。Bランク以降は昇級試験があって、それをクリアしないと上に上がれないから気をつけてな。それと、Bランク以上の冒険者は、緊急依頼は必ず参加してもら。緊急依頼については説明が難しいんだがな...まあイレギュラーが起きた時だと思っておいてくれ」
「ふむふむ」
「んで、次に魔物のランクなんだがな、まあこれはざっくりとしか分かれていなくてな。E、Fランクの魔物は新人が一人でも倒せる程度の弱い奴らだ。Dから上は最低でも二人でパーティーを組むのが推奨される。AはAランクの冒険者が最低4人のパーティーで挑むのが普通、Sは騎士団が出動するレベルだな。まあそんなに頻繁には見つからんし、いてもSランクの冒険者にすぐ討伐されるがな」
「へぇ~なんかいろいろあるんですね~」
「へぇ~って坊お前な、Bランクの魔物をソロで討伐したんだぞ?しかも冒険者登録をしたその日に、5歳の子供がだぞ。これがどんな偉業かわかってないだろ」
「そうですね。というかあのオオカミ急に出てきたから焦って一撃で倒しちゃって、戦いらしい戦いしてないんですよね~」
「い、一撃か…ギーの息子ってことで何かやらかすとは思っちゃいたが…」
いや、父様何やらかしたんだよ。
「あはは」
「ギルマス~換金終わりました~」
「おう。坊、依頼達成の報酬とレストウルフの素材の換金額、合わせて金貨10枚に銅貨20枚だ」
「え、多くないですか?」
「馬鹿か。高ランクの魔物の素材ってのは高く売れるんだ。金貨20枚は妥当だよ」
ここでお金の説明をしておこう。この世界では金貨・銀貨・銅貨があり、
金貨1枚=小金貨10枚
小金貨1枚=銀貨10枚
銀貨1枚=銅貨10枚
といった感じだ。ちなみに金貨の上にはもう一つ白金貨というのがあり、金貨10枚で白金貨1枚らしいが、まあ俺には関係のないものだろう。
日本円で行くと銅貨が100円、白金貨は100万円くらいらしい。ちなみにこれは鑑定結果だ。優秀。同じ1枚の硬貨なのに価値にそこまで差があるなんてな…俺には想像ができん。
ということで俺は、7歳にして1日で20万円を稼ぐのだった。帰った後が恐ろしい。絶対母様になんか言われる。
「なんか大変なことになった気がします。帰ったら母様に怒られるー!!」
俺がうがぁぁぁっ!!!と頭を抱えていると、
「ガハハハッまぁおとなしく説教を食らっとくんだな」
「うぅ…とりあえず今日は帰りますね...」
「おう、気をつけろよ」
屋敷についた俺は家の中に入れないでいた。
(はぁ~...怒られないといいんだけど…)
ずっとこうしていても仕方がないので、ええい、ままよっ!と扉を開けた。
「ただいま帰りましたぁっ!!!」
「あらアーリー、お帰りなさい」
「母様」
「冒険者ギルドはどうだった?話を聞きたいところだけれど…取り敢えずは夕食にしましょう。その時に話しましょう」
「はぁい…」
―夕食の席にて―
「さぁアーリー、話を聞かせてくれ」
「えっとですね」
そして今日家を出てからのことを話すと…
「そうか。測定のほうは何とかなったか。しかしレストウルフか…」
「アーリー...」
ビクッ
「は、はい」
「貴方はやはりやりすぎてしまったのね。まぁいいわ。いつかこんな日が来ると思っていたもの」
あれぇ?思ったよりもあっさりしてるな。
「それでね、貴方報酬はどうやって持って帰ってきたの?」
「一応カバンの中で発動させたアイテムボックスで…」
「そう、それならいいわ。これからもそうしなさい。冒険者には素行が悪い人もいるわ。お金を取られたりすることのないようにね」
ひぇっ異世界こわっ
「分かりました。絶対そうします」
ぶんぶんぶんっと全力で首を振った。
「いやぁ、アーリーはすごいね。さすが僕の弟だ」
ロー兄様、ブラコンモードON。こうなると長いからなぁ。しかもめっちゃ褒めてくるから恥ずかしいし。よし、今日のところは逃げよう。
アリオストは「逃げる」を選択した!
「すみません兄様。今日はいろいろあって少し疲れたので…今日のところは一旦休みますね」
「あぁ、そうだね。ゆっくりお休み」
ほっ、うまくいった。
「ではおやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
―――――――――――――――――
作者です。
詳しくは出てませんが、兄様は今後もしっかりブラコンしてくと思います。
次回:神…?
またお会いしましょう。ではでは~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます