第10話 ギラギラ
テツヤ兄さんがうちに来た。俺は、怒りに任せて家で筋トレをしていた。懸垂を何回やったか覚えていない。1日経っても怒りが収まらず、ますます変な妄想をしてしまってじっとしていられなかったのだ。
「レイジ、ずいぶん汗かいてるな。運動してたのか?」
涼しい顔でやってきたテツヤ兄さんが、俺を見てそう言った。俺はテツヤ兄さんをぎらついた目で見た、と思う。ぎらついているかどうか、自分では分からないが。テツヤ兄さんは最初笑っていたのだが、俺の顔を見て、ちょっと怯えた顔になった。
「レイジ?どうしたの?」
「テツヤ兄さん、俺汗流すから。ああ、一緒にお風呂入ろ。」
俺はさっさと風呂場へ向かった。だが、テツヤ兄さんが来ないので、スタスタと戻って、テツヤ兄さんの腕を掴んで連れてきた。
「えっと、俺は別に風呂に入らなくても……。」
テツヤ兄さんが無垢な表情で言う。その顔を見た俺に、
「なんか、ぎらついてない?」
テツヤ兄さんが言った。やっぱりぎらついてたか。
俺はいきなりテツヤ兄さんのシャツを脱がし、自分も素早く脱いだ。俺はTシャツと短パンしか身に着けていなかったので、あっという間に脱げる。テツヤ兄さんのGパンを下ろし、後ろを向かせてアンダーウエアも下げた。そして、そのつるんとした丸みに口づける。
「あっ……。」
テツヤ兄さんが一つ声を上げた。俺はテツヤ兄さんを浴室に連れ込み、シャワーを出した。ちょっと冷たいくらいの水を頭からかぶる。シャワーの水がお湯に変わったところで、テツヤ兄さんの体にもかけた。じっくりとシャワーを当てると、テツヤ兄さんの胸が上下する。
「気持ちいい?」
「だから、目がぎらついてるんだってば……」
この人は俺のものだ。寝起きの顔を見るのも、抱き枕にされるのも、俺の特権なんだ。それなのに……。テツヤ兄さんの手を見ると、ああ、あの指輪が!さらに俺のぎらつきが加速した。獣のように猛烈に、テツヤ兄さんを抱いた。モデル業に差しさわりがあるかもしれないが、そんな事は後から気づいた事で、この時には何もかも忘れて貪った。全てが俺のものだ。ここも、ここも、あそこも、全部!
風呂から上がって、ソファに腰かけた。その俺の膝に、テツヤ兄さんは頭を乗せて寝転がった。テツヤ兄さんの顔を見下ろすと、目が合った。テツヤ兄さんはニコッと笑う。頬が赤くなっていて、愛らしい。俺はテツヤ兄さんの頭を撫でた。
「レイジ、どうした?まだ浮かない顔してるじゃん。」
テツヤ兄さんが言った。俺は、テツヤ兄さんの右手を掴んで持ち上げた。人差し指の指輪に触れる。
「これ、誠会の?」
聞くと、
「ああ、うん。」
テツヤ兄さんが言った。
「なんで今してるの?」
つい、いじわるな言い方になってしまった。相変わらず嫉妬深いな、俺。
「え?」
テツヤ兄さんは言葉を失った。しばし見つめ合う。
「……ごめん。何でもないよ。」
俺はそう言って、テツヤ兄さんの右手を放した。テツヤ兄さんはひょいと起き上がり、俺の隣に座り直した。
「そうだレイジ、今日はいい話を持ってきたんだ。」
テツヤ兄さんがちょっと嬉しそうな声を出した。
「いい話?」
「そう。今度ジュンさんとケイタさんが出る映画の試写会があるんだけど、俺とレイジを招待してくれるって。会社にも話は行くと思うけど、まずは直接知らせてくれたんだ。」
そう言われて、俺は喜んでいいものかどうか、迷った。でも、テツヤ兄さんだけが行くよりは、いいに決まってるよな。
「もしかして、今日ジュンさんたちと会ったの?」
「うん。ジュンさんとケイタさんに呼ばれてさ、お昼食べに行ったんだ。それで、試写会の後に誠会のメンバーで飲もうって話になって、レイジも連れておいでって言われたから、早速言いに来たんだ。」
そうだったのか。だから指輪をしてたんだ。で、今日は俺を誘ってくれなかったわけか。いじけるぜ。
「それでさ、その時に着る服の事なんだけど……。」
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