怒涛のソロ活(末っ子4)

夏目碧央

第1話 役得

 まだ隣で眠っているテツヤ兄さんの顔を、肘をついてすぐ近くで眺める、役得の朝。あまりにきれいな顔にうっとり見とれていると、テツヤ兄さんは少し動いて、パッと目を開けた。

 ああ、なんて美しいのだろう。寝起きからこの美しさ。まるで照明さんがうまい具合に光を当てたみたいに、キラキラと輝いているような瞳。これを見られるのは、世界で俺一人だけ。歓喜が押し寄せる。

「おはようレイジ。ん、何?」

俺が黙っているので、テツヤ兄さんはちょっと笑って、俺に問いかけた。

「なんでもない。」

起き抜けのその笑顔も、俺一人のものだ。思わずこちらも笑みをこぼす。テツヤ兄さんの笑顔の前で、仏頂面していられる人なんて、きっとこの世にいないだろう。


 俺たちは、デビューして9年になるアイドルグループのメンバーである。7人のボーズグループの、俺は最年少メンバーだ。うちの会社では、年上のタレントの事を兄さんと呼ぶ習慣がある。2つ年上のテツヤ兄さんとは、最近恋人同士になったばかりである。世間では、俺とテツヤ兄さんをカップルだと信じる一部のファンと、テツヤ兄さんと同い年のメンバー、カズキ兄さんと俺をカップルだと信じる一部のファンとの間で、何となくバトルになっているそうである。だが、それはごく少数で、ハンサム世界一に選ばれる事もあるテツヤ兄さんには、本気で恋するリアコなファンが圧倒的に多い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る