第27話「自警団、魔法使いを公募し高額の報奨金を掲げるも閑古鳥が鳴くのこと。」
そして、その日の午後の事である。
「なんだべなんだべ」
「自警団からのお知らせだってよ」
「あんまり良い立て札じゃねえなこれは。こんな木じゃ風呂の薪にもなりそうにない」
村は、平和だった。ショケンネズミが出たという騒動があったにも関わらず、村人の誰も死んでいないこともあってか、彼らは平和に暮らしていた。無論、それは自警団の犠牲、といっても死者が出たわけではないようだったが、あってのことだった。
「なんて書いてあるんだ?」
「……何々、魔法の使い手募集、依頼金は自警団の給金より一部を削って支給……
報奨金は働きにより、最大で……」
「魔法?」
「それ、本当に自警団のお知らせかぁ?」
魔法は現在、ゲヘゲラーデンに習いに行く者もちらほらいたのだが、誰も本気で魔法が使えるとは思っておらず、ゲヘゲラーデンに習いに行くというのは文字の読み書きや算術、都の作法などを習いに行くといった意味合いの方が近かった。
「さあみんな、牧場の世話に戻るべ。オマンマがなければ自警団も腹空かすでなぁ」
「ははは、違ぇねぇ。あの綺麗なおべべきたお嬢さんも、腹空かすのは同じだでなぁ!」
そして、自警団詰所では。
「団長、大変ですっ!」
「どうした、志願者で受付でも埋まったか!」
この自警団団長、自警団の団長だけあってそれなりの腕なのだが、冴えない見かけと革新的発想によって損をしているところも多かった。そして、それは……。
「いえ、それが……」
「閑古鳥ぃ?」
……今回も、団長は下手を打った。さすがに、一朝一夕で詰所が埋まるとは思っていなかったが、魔法が使える村人がいることを知っている彼は、一人か二人はいるはずだと思っていたらしく、完全に当てが外れた顔をしていた。
「ちょっと報奨金が相場と違いましたかねえ……」
「とはいえ、最大で2ゼカまで設定したんだぞ!?」
2ゼカとは2000ゼセであり、それは人ひとりが優に冬を越せる金額であった。
「あるいは、高すぎて警戒されたのかもしれません、それだけ危険だと感じ取られたやも……」
「なんてことだ……」
そして、自警団が謎の現象に苦戦する最中、半月が過ぎつつあったある日のこと。
「団長、ようやく自警団の依頼に応募する人が来ました!」
「おお、そうか!……遅かったが、まあいい。で、誰だ」
「それが……」
「ごきげんよう、お邪魔でしたかしら」
「貴方は、確か村長のところで……」
「はい、東の国より来ました、レイ・チンと申します。以後、お見知りおきを……」
レイ・チンと名乗ったその女性は、旅人にしてはいやに気品があった。案の定それだけで騙される団員も多く、
「団長、どうしやす」
「こんな美人さんが名乗ってくれたわけですし、今まで閑古鳥が鳴いていたわけですから……」
と、こんな調子であった。
「アンタ、魔法は使えるのか?」
「ええ、もちろんでございますとも」
と、ウインクをするものの、
「……わかった、だが今日のところは帰ってもらおう。アンタに頼むのはちょっと考えさせてくれ」
と返すのだった。それは、蝋燭の炎が輝くがごとく。
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