第23話「ゼス、師匠の許可をもらい自警団に入団するのこと。(中)」

 自警団詰所にて、ゼスは緊張して扉の前に立っていた。

「(すぅー、はぁー)……よし、失礼しまべっ!?」

 盛大に、扉にぶつかるゼス。……扉は、外へ開く形式だった。

「あ、悪い。誰か立っていたのか」

 

「……あたた……(はっ)す、すみません、自警団の責任者の方に会いたいのですが……」

「ん?ああ、俺だが」

 自警団の責任者を名乗る男は、あまり冴えた面構えではなかった。むしろ、事務員といった方が似合う肩書であったが、その腕前は王宮直轄領の自警団協会でも屈指であった。

「そうですか!えーと、僕、ゼスって言います」

「ああ、知っているとも。その年でゼンゴウの腕前は珍しいからな」

 ぼりぼりと腋の下をかきながらあくびをする責任者。どうやら、夜警明けなのか寝ていないようだ。

「はいっ!!」

「で、何の用だ」

「師匠たちの推薦文をもってきました!」

 師匠「たち」。一応、シャッタ・フォウの他にも、ゲヘゲラーデンの添え状が存在した。魔法が使えるようになったからか、ゲヘゲラーデンも本腰を入れてゼスを鍛えることに決めたようだ。

「推薦文?」




「ふむ、自警団への入団希望者か」

「よろしくお願いしますっ!」

「……ダメ、とも言えんか。とはいえ……」

 なぜダメとも言えないのかといえば、シャッタ・フォウやゲヘゲラーデンの面目をつぶすということにつながるのはもちろんだが、ゼンゴウの腕前とあれば、それなりに役に立つことは確定的であったからだ。

「団長、なんなんです、入口で突っ立って」

 訓練用の槍を持って冴えない責任者を団長と呼ぶ筋肉のついた男。どうやら、本当に目の前の男が団長のようだ。

「ああ、ボーフゥか。ゼスが入団したいそうなんだが……」

「いやダメでしょ、ゼンゴウの腕前にはなったとはいえ、若すぎます」

 ボーフゥと呼ばれた男は、反対した。ゼスの年齢がその理由だが、それはつまり、ゼスの体がまだ出来上がっていないということも意味した。

「俺も、そう思ったんだが……推薦文付きである以上無碍にはできん」

「げっ、推薦文付きですか……」

 ボーフゥもまた、狼狽えた。眼前の小僧はどう見てもその辺の子供であった。一応、ゼンゴウの腕前と若干の魔法は使えるものの、だからと言って戦力になるとは言い難かった。

「まあいい、入るだけ入れ。審査は後でやってやる」

「ありがとうございますっ!」



「いろんなものがありますね……」

「あまりキョロキョロ見るな、一応、特秘物品もあるからな」

 特秘物品。いわゆる使用する際に守秘義務を伴う物品であった。妖刀の類などがそれに該当するが、そこまで重要なものはビダーヤ村には存在しなかった。とはいえゲヘゲラーデンがいる関係上、自警団が管理下におく魔法の道具なども存在していた。

「えっ」

 こんな田舎に特秘物品があるとは思っていなかったのか、案の定動揺するゼス。そして、それをチラっと見た団長は、

「さて……ゼス、お前、得物は剣であってたよな?」

「は、はい!」

「ならば……、ボーフゥ、相手してやれ」

と、先ほど訓練用の槍を持っていた男に相手をするように命じた。

「えっ、俺ですかい!?」

 ボーフゥと呼ばれた男は面食らった。無理もない、彼は自警団員の中でも有数の槍の使い手であり、もし勝利条件がボーフゥを倒すことであるならば、ゼスはまず合格し得なかっただろう。

「お前なら遅れはとらないだろ」

「それは、そうですが……」

「よろしくお願いしますっ!」

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