第12話

「実は、相談と言うのは、ゆめの事なんだ。」

「ゆめちゃんが、どうかしたのですか?」

「お前、あのRPGゲーム、知ってるか?」

「ええ、僕は何周もやりましたよ!レベルもカンストさせる位でした。」

「ストーリーは覚えている?」

「ええ、大体は覚えています。」

「勇者の証ってあったろ?」

「あのシーンはいいですよね〜。」


 白紙のコピー用紙の束を机に置くと、

 今朝あった事柄を丁寧に話す。


 "その男"は、まっさか〜と疑いもするが、僕とママの目は真剣だったので、信じようとしてくれているらしい。


「ゆめちゃんに「勇者の証」が出たと言う事ですか?」

「いや、正確には「移った」の言えるんだけど、こんな事が、現実的にあり得ると思うか?」

「そうですよね、「勇者の証」は、ファンタジー小説かゲームの中ぐらいですもんね。」


「ところで、その「紋章」は、勇者の証と同じデザインなんですか?」

「いや、それは僕が勝手に想像しただけのマークで、何処にも書いた事がないんだよ。」

「試しに書いて貰えますか?」


 鞄から白紙のメモ帳とボールペンを差し出す。


「確か、こんな感じだったと思うんだけど…」

 朧げの記憶から、何とかマークを書き出す。


「あれ?このマーク…」

 何やら書き足すと


「ほら、先輩。見覚えないですか?」

 と、メモ帳に描いたマークを見せる。


「・・・・・」

「ゲームで出てくる「法国」の紋章ですよ!」

「アッ!」


 確かに、昔やり込んだゲームに出てくる「法国」の紋章だった。


 そのマークは勇者ご一行が旅の途中で魔物退治を依頼される国の物で、このクエストをクリアするのに手こずった印象がある。まっ、クリア後に大幅なレベルアップしたんだっけ・・・。


「と、言う事は、ゆめは「勇者」ではない?」

「そういう事になりますね。」

「良かった…これで魔王と戦わなくて済む…」

「そうですね。良かったよかった。」


 二人が納得していると、


「ちょ、ちょっと、話がずれてるわよ!」ママが注意する。


 二人がハッと気づき、食後のお茶を啜りなおし話合いを再開する。


「でだ。お前、理系だろ?こんな事例や現象とか聞いた事がないのか?」

「そんなのある訳ないじゃないですか!」

「こんなの、御伽噺か呪いの類ですよ!」


・・・御伽噺…確かにゆめはそんな話が好きだ。

 問題の小説も、色んな噺を読み聞かせて、それをゆめがアレンジしまくった結果、違う噺になるから困ると言う事で、なれば!と、やり込んだゲームをモチーフにファンタジー小説を好き勝手に書いた物だ。


 しかし、現実問題あり得るのか?と考えても、実際に見てしまったのだから、信じるしかない。


 やはり、病院に連れて行くのが正解なのだろうか?いや、頭のおかしい親子が来たと門前払いされるのがオチだろう…


 色々考えても、打開策が浮かばない。


「すまなかったな。また何かあれば力を貸してくれよ。」

「大丈夫です!同じ大学のよしみじゃないですか!」


 とりあえず、今日は解散することにした。

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