第二章
第13話 王都
私たちの住んでいる町シランから王都までは馬車で約5時間ほどの距離にありました。
「あれが王都だよ。」
ギルマスのジュダイさんが教えてくれます。
初めて見る王都は、高い城壁に囲まれていて、門のところには数名の兵士が配置されています。
城壁の外側は堀がめぐらされており、門に通じる橋は非常時には城側に巻き上げられ壁となるそうです。
「門は一か所だけなんですか?」
「いや、ここと反対側の2か所だよ。どうして?」
「締め出されちゃったらどうしようって……。」
「ああ、シャキは冒険者でもあるんだったな。まあ、お前の身体強化があればあれくらいの塀は飛び越せるんじゃないか。」
「無理ですよ……そっか、空を飛べば……。」
「えっ?」
「いえ、なんでもないです。」
馬車を降りた私たちは魔道具ギルドに向かい、そこでリンさんと合流しました。
「シャキの魔道具は、すっごい評判よ。」
「えへへ。」
「それで、認定式で着る服は?」
「ブラウスとスカートは持ってきましたけど。」
「駄目よ!陛下の前に出るんだから、ドレスじゃないと!」
「いや、ドレスは必要ないだろ。」
「ドレスなんて持ってないです……。」
「ギルマスの言うことなんて聞いちゃ駄目よ。シランの代表として恥ずかしくない恰好をしないと。」
「まあ、ここのギルマスに挨拶したら、好きにしていいからな。」
私たちはジュダイさんに連れられて、白いヒゲのお爺さんに紹介されました。
「ほうほう、プロフェッサーはこんな若いお嬢さんじゃったとはな。」
「シランから参りました、シャキと申します。よろしくお願いいたします。」
「いやいや、本名を名乗る必要はないよ。お前さんは今日からプロフェッサーなんじゃから。」
「えっ、そうなんですか……。」
「何か困ったことがあったら、遠慮なく訪ねて来るがよい。」
「ありがとうございます……そうだ!早速で申し訳ないんですが、熱に一番強い金属ってご存じありませんか?」
「熱に強い……わしの知っている限りではタングステンだと思うが、詳しく知りたければ刀鍛冶を尋ねるのが良かろう。」
王都ギルマスのシドさんは、私に刀鍛冶のお店を紹介してくださいました。
「じゃあ、ドレスを買いにいくわよ。」
「えっ、刀鍛冶のお店……。」
「そんなことをしていたら間に合わないでしょ。」
リンさんに連れられて服飾屋さんにやってきました。
「えへへ、私も一度買ったことのあるお店なんだ。」
カランと音をたててお店に入ります。
「すみません、この子、明日のマギ・デザイナー認定式に出席するんですけど、ドレス選んであげてください。」
ああ、夢にまで見たドレスが……。
「ご予算はいかほどでしょうか?」
「えっと、金貨3枚なんですけど。」
あからさまに嫌そうな顔をされてしまった。
「金貨3枚だと、この程度ですわね。」
見るからに安っぽいワンピースだった。
「ごめんなさい、結構です。」
私はそういって店を出てしまった。
「ちょっと、どうするのよ!」
少し歩いて、私は男性用の服屋さんを見つけた。
「ちょっと、ここ男物よ!」
「ここでいいんです。」
私は中に入って店員さんに伝えた。
「安いものでいいので、黒のパンツとベスト・上着と靴が欲しいんですけど。小物込みで金貨2枚で何とかなりませんか?」
「ああ、ちょうど小さくて売れ残っているのがあるから、それで良ければ試着してみるかい。」
「はい、お願いします。」
私は用意してくれたものを試着した。男物だが胸もきつくない。
「ピッタリだね。あとは裾上げだけで何とかなりそうだ。」
「じゃあ、これでお願いします。あと、メガネとか扱っているお店ありませんか?」
「フレームだけならうちにもあるよ。」
こうして私は明日の衣装を手に入れました。
文化祭でコスプレした経験が、こんなところで役立つとは思いませんでした。
【あとがき】
跳ぶ……ではなく、飛ぶんですかね。
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