第361話 桜エリアに眠る力
翌日。私は、桜エリアの神桜都市を巡っていた。途中で団子屋があったので、団子を買って食べ歩いている。
「【心眼開放】でも何も見つからない。サクヤさんと知り合いになるための街って感じなのかな。条件さえ整っていれば、神の力が手に入るわけだし」
「そこの可愛い嬢ちゃん! こっちの肉串はどうだ!?」
「へ? 私?」
「あんた以外にそんなやついないだろう? ほれ! どうだ!? 甘いもん食べた後はしょっぱいもんが食いてぇだろ!?」
「う~ん……じゃあ、いただきます」
「あいよ!!」
気の良いおじさんが肉串を売ってくれた。可愛いからと肉串をおまけしてくれたので、ちょっと量が多かったけど、ゲーム内だから気にせずに食べられる。香辛料が利いていて美味しい。団子との食べ合わせは、そこまでよくなかったけど。
その後も歩いていると何度も呼び止められては、色々とおすすめされた。和服などもおすすめされたので、アカリとお揃いになるような浴衣なども購入した。まんまと商法に引っ掛かっている気もするけど、本当に欲しいものしか買っていないので、大丈夫なはず。
一通り調べて回ったけど、特に何かがあるわけじゃなかった。綺麗な場所ではあるので、のんびりとしたデートには使えそうだけど、それなら現実でデートするからなぁ。
まぁ、アカリへのお土産が出来たので、それで良しとしよう。
大分時間を使ったけど、神桜都市は調べ終えたので、残りの時間を桜エリアの探索に使う。ラウネとエアリーとソイルを召喚して、全ての事を調べながら歩いていく。そうして小高い丘まで着いた。小高い丘には一際太い桜の木が生えていた。ソイルとラウネが何かを感じ取った。
『この木から何かを感じるの』
『土の中にも……力が眠ってる……』
「力? エアリーは何か感じる?」
『いえ、土や植物に関する力かと思います』
「なるほどね」
二人だけが感じられる力があるらしい。それなら、その力を自分のものに出来たりはしないのかな。
「二人とも、その力を吸い取れたりしない?」
『やってみるの』
『うん』
ラウネは桜の幹に手を触れ、ソイルは地面に足を着けて、目を閉じる。すると、ラウネとソイルに力が移動しているのが、私の目にも見えた。同時に周囲に花が咲き乱れて、桜の木にも新しい花が咲き始める。
そして、ラウネとソイルの姿にも変化が訪れる。少しだけ身体が成長していく。それに合わせるように、半透明だった姿も濃くなっている。種族の名称も変わっており、地の神霊ノームと花の神霊アルラウネとなっていた。つまり、二人とも進化したという事だ。
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ソイル:【魔導王】【大地魔法才能】【根源(地)】【完全支配(地)】【地神霊】【神霊体】【神力】【神土】【採鉱冶金】【土質調整】
ラウネ:【根源(植物)】【完全支配(植物)】【支配(毒)】【無限毒】【花神霊】【神霊体】【神力】【異常花粉】【花粉爆破】【光合成】【給水タンク】【状態異常の魔眼】【魂吸収】【生長自在】【肥料創造】
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二人とも進化してスキルが変わっていた。しかも、【神力】を得ている。
「おぉ……二人とも成長したねぇ」
それでも、私よりも頭一つ分小さい。エアリーと比べると一・五倍くらいになっているかな。ちょっとお姉さんになっているのも分かる。二人とも容姿が整っているから可愛い。二人の頭を撫でてあげる。進化しても撫でられるのは嬉しいようだった。
「でも、どうして進化出来るような力が、こんなところにあったんだろう?」
『分からないの。でも、この木はずっと力を溜め続けていたみたいなの』
『どこかから……力が地面に……流れてるみたい……』
「力が? 神様の力と言えば……サクヤさんがいるからか」
サクヤさんが土地神という事もあり、この地域に神の力が広がっているのかもしれない。そう考えると、他の場所でも同様に神様がいれば、皆の進化に繋がるかもしれない。今度、サクヤさんに土地神について訊いてみるのもいいかもしれない。
「エアリーは、何かの力を感じた事とか無い?」
『どのような力か分かりませんので、私は何とも言えません』
「そっか。じゃあ、これまでの場所にはいなさそうだね。取り敢えず、これ以上何もないみたいだから、ボスエリアに行こうか」
『はい』
『うんなの』
『うん……』
皆でボスエリアまで歩いている途中、サクラトレントに襲われたけど、ソイルが地面を割って、サクラトレントを落とし、一気に押し潰した。そして、ラウネの方も周囲の桜の木を操って桜幽鬼をボコボコにしていた。それぞれの威力が上がっている。多分、進化出来たからだと思う。
「二人とも調子はどう?」
『絶好調なの!』
『今までより……遠くまで……操れる……それに……出力が……出るよ……』
進化したので、より遠くまで届くし強さも上がっているらしい。頼もしい二人になった。スノウも戦わせてあげられればよかったけど、今日はこの三人で行く事にしているので、またお留守番だ。
大暴れしながらボスエリアへの転移場所に着く。転移前にウィンドウが出て来るけど、的違って、一つ文面が足されていた。
「ん? 『一対一の戦闘のため、テイムモンスターは使用出来ません』? せっかく二人の強さを確認出来ると思ったのに。悪いんだけど、皆は先に帰ってもらうね」
『お気を付けて』
『うん……』
『分かったの』
皆をギルドエリアに帰してから、桜エリアのボスエリアへと転移する。桜エリアのボスエリアは、開けた円形の場所だった。その中央には、赤い鎧の武者が膝を突いていた。名前は桜花武者。
桜花武者は、少し長めの刀……多分、太刀かな。それを装備していて、その柄に手を添えている。私は白百合と黒百合を取りだして、血で強化する。そして、【蒼天】と【天聖】の複合熱線をチャージしながら、【電光石火】で突っ込む。この時も【心眼開放】でスローモーションにして、確実に攻撃を当てられるようにしたのだけど、これは別の形で役に立った。
凄い速度で太刀を引き抜いた瞬間周囲から風が生まれて、その中にある塵が当たり判定を持っていて、ダメージを受ける。その風を【暴風武装】で退けて、黒百合で斬る。【黒百合の一刺し】で状態異常を与える。与えたのは、呪いの状態異常だった。ついでに、魔眼を使って魅了状態と暗闇状態にしようとしたけど、その二つは無効化された。どうやら、状態異常に対して完全な耐性を持っているみたい。
状態異常で弱らせるのは諦めて、他で攻める事にする。桜花武者の背後に移動した私は、影を出して桜花武者を縛り上げる。これで動きを止められたら、吸血で終わりなのだけど、すぐに影が斬られた。そして、そのまま振り向きざまに太刀を振ってくる。夜霧になって背後に抜けて実体を取り戻し、白百合と黒百合を大斧に変えて振う
この攻撃を桜花武者は、鞘を使って防いできた。鞘と大斧がぶつかり合った直後に熱線を放つ。桜花武者の身体が熱線に飲まれて、大きくHPを削っていく。でも、思った程HPが削れていない。その事に違和感を覚えたのと同時に嫌な予感がした。【電光石火】で背後に移動すると、私がさっきまでいた場所を太刀が通り過ぎていった。熱線を吐いている途中で口を閉じたので、身体中に熱が回るけど、ダメージは一切ない。熱系のダメージは無効化されるからだ。
熱線から出て来た桜花武者の鎧が落ちる。どうやら、あれが熱線のダメージを軽減していたみたい。中から出て来たのは、筋骨隆々のおじさんだった。
鎧を脱ぎ捨てた桜花武者は、凄い勢いでこっちに向かってくる。なので、思いっきり【神炎】を出して目眩ましにする。私の姿を隠して、【電光石火】で背後に移動する。そして、再び【電光石火】を使い桜花武者の身体に突っ込み、【加重闘法】を使って前のめりに倒れさせる。そこに血液、水、影、土を使って拘束する。さらに、白百合と黒百合を突き刺して、地面に縫い付けてから、吸血をして倒した。
「ふぅ……不味い……」
口直しにうちの畑で採れた果物を食べながら、手に入れたスキルを確認する。
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【精神統一】:一定時間同じ姿勢を取るとステータスが上昇する。控えでも効果を発揮する。
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ステータスが上昇するのは嬉しいけど、同じ姿勢を続けないといけないのは面倒くさいので、そこまで使わないと思う。
「武器スキルが手に入ったら良かったけど、隠れ里のスキルだし、吸血じゃ手に入らないとかあるのかな?」
ドロップアイテムも桜花の太刀と桜花武者の核だけだった。これはアカリへのお土産にする。当然、ここから先に行くエリアも存在しないので、次のエリアのアップデートが来た時にボス戦をスキップ出来るようにだけしておく。
「さてと、まだ少し時間があるし、師匠のところで稽古受けてからログアウトしよっと」
街の探索と桜エリアの探索で時間を使ったので、今日はそれでログアウトした。
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