第324話 大洋エリアの海底
大洋エリアの上空に来た私は、エアリー、レイン、マシロを召喚する。エアリーは空気、レインはモンスター、マシロは灯りを担当する。今から行くのは、海の底だからマシロの光は結構重要になってくる。暗いところでも視界を確保出来るスキルはあるけど、実際に明るい方が見やすいのは変わらない。
「さてと、エアリーお願い出来る?」
『はい。空気の確保ですね。お任せ下さい』
見ただけじゃ分からないけど、【暴風武装】のおかげで、私達の周囲に風の膜が出来たのを感じた。そのまま皆と一緒に降りていき、海の中に入る。風の膜のおかげで、私達の周りにある水が押し出される。呼吸も問題なく出来る。膜の上部に、エアリーが空気の通り道の管を作っているので、新鮮な空気が補給されるようになっていた。
『私は、空気の循環で手一杯になりますので、戦闘はレインとマシロに頼みます』
『水の中は、私の専売特許だから任せて』
『じゃあ、私は、出来るだけ広く照らすわね』
レインが張り切り、マシロが光で遠くまで照らす。潜っていく毎に暗くなっていたのに、既に地上と同じくらいの明るさになっている。
「結構深いね。モンスターの数も深くなる程多くなってるし、大洋エリアは、潜ってからが本番って感じかな」
『モンスターは片っ端から倒してるけど良いの?』
「今はいいよ。水中での吸血は、ちょっと面倒くさいからね。それに、地上と違って、本当に何が起こるか分からないから、安全第一でいこう」
海の中で何かが起こったとしたら、地上と違ってしっかり対応出来るとは限らない。水中じゃ、私の速度も活かせない。なので、ここのモンスターの吸血は、それ目的の時までお預けとする。
そのまま海の中を落ちていくと、ようやく海底に着いた。
「何だか砂浜みたい……」
海底には、砂が広がっていた。【大地武装】で動かせるので、一部の砂を取り除いてみると、岩肌が剥き出しになる。どうやら砂が積もっているだけみたい。辺り一面には、特に何もない。
「金銀財宝があったらなぁ。まぁ、正直要らないけど」
既に金銀財宝を見つけている事もあり、お金には困っていない。だから、すぐに欲しいという訳では無い。沈没船とかがあったら、テンションが上がるけど、見た感じ沈没船がある雰囲気はない。
「エアリー、どのくらいの速度でなら移動出来る?」
『走る速度くらいなら大丈夫です。ですが、お姉様の本気の速度となると、少々厳しいですね』
「それじゃあ、駈け足程度で走ろうか。マシロ、遅れないようにね」
『分かってるわ』
エアリーに合わせて動くので、マシロにだけ伝えておく。レインに関しては、既に海の中の方で泳いで楽しんでいるから、言う必要もない。ギルドエリアに海を作っておくかな。お金に余裕はあるし、レインも喜びそう。多分、スノウも大はしゃぎだろうし。
大洋エリアの海底を走って調べていると、本当に沈没船を見つけた。かなり大きな船で百メートル以上はあった。
「取り敢えず、あそこに行こう。何かあるかもしれないし」
『では、あの船全体を空気で覆いましょう』
「出来るの?」
『動けなくなりますが、出来なくはありません』
「無理はしてない?」
レインは、コーラルタートル戦の時に海を割るという無理をしていた。エアリーが広範囲の風を操れる事は知っているけど、心配にはなる。
『はい。このくらいでしたら、大丈夫です』
エアリーなら無理をしそうではあるけど、ちゃんと申告してくれるはず。なので、エアリーを信じて任せる。エアリーは、沈没船を覆うように空気の膜を作り出した。エアリーの表情的には、大丈夫そう。でも、その場からは動けないみたい。集中しないといけないからだと思う。
「レイン。モンスターを倒しておいて」
『うん。近づいてくるモンスターは全部やっつける。エアリーも守るよ』
「お願いね。マシロ、行くよ」
『ええ』
マシロと一緒に沈没船の甲板に降り立つ。ずっと水の中にあったにしては、かなり丈夫で、私が乗っても抜けるという事はなかった。何か魔法的な何かで強化されているのかもしれない。
『念のため、全体を照らしておいたわ』
「ありがとう。中にはモンスターは残っていないみたいだね。レインが全部やってくれたのかな」
『そうだと思うわ。一応、浄化もしておいたから、レインに倒せないモンスターも倒れてるはずよ』
「ありがとう。それにしても、本当に大きいね。調べるのに時間を掛けてもいられないし、駈け足で調べて行こうか」
『ええ』
マシロと一緒に掛け足で調べていく。甲板には何も無いので、一番上にある部屋から調べ始める。一番上の部屋は、船長室のような場所で、大きなテーブルとかが倒れていて、同じように倒れていた机も豪華な物だった。ただ、そのどれも藻が張っているので、元の綺麗さはない。
その船長室っぽい場所の中央に靄があったので固めてみると、一枚の紙が出て来た。その紙は、結構ボロボロだったので、慎重に拾い上げてみると、そこには地図が描かれていた。
「海図? 全然分からん。マシロ、分かる?」
『私も分からないわ』
「う~ん……アク姉なら知ってるかな」
『海の人なの?』
「ううん。陸の人だよ」
『……さすがに、分からないんじゃない?』
「いや、アク姉ならあり得……ないか? いや、フレ姉ならいけるか!?」
『まぁ、分かるといいわね』
「ね」
他には船長室に何もなく、次に船内の方を調べて行く。船内は、何層かの構造になっているみたいで、下り階段が続いていた。一層目は、かなり広い空間で大砲みたいな物が置かれていた。
「海賊船か何かだったのかな?」
『財宝?』
「あるかもね。でも、一番ありそうな船長室は海図だけだったんだよね……そんな下の方に仕舞っておくかな?」
『どうかしら? 海賊じゃないから分からないわ』
「まぁ、そりゃそうか。ちゃっちゃと調べちゃおう」
『ええ』
マシロと船室を次々に調べて行くけど、特に何かがあるというわけじゃなかった。そうして一番下まで降りていくと、空の宝箱を見つけた。
「空っぽ……」
『藻が生えてるから、沈んだ時かその後に取られたみたいね』
「靄もないから、ここの手掛かりはなしか。周囲に何かありそう?」
『見える範囲には何もないわ。暗いところも全部照らしているから、見落としはないはずよ』
「う~ん……この海図が手掛かりになるのかな。まぁ、これはまた今度にしよう。そろそろ時間だから、一旦ギルドエリアに戻ろうか」
『ええ』
沈没船の調査も終わったので、一旦浮上してギルドエリアへと帰り、ログアウトした。夜に再びログインして大洋エリアの海底探索を続けた。成果としては、宝石みたいなものが落ちていたり、ボロボロの剣が落ちていたりしたけど、それ以外は特に何も無かった。
もしかしたら、宝石はあの船から落ちたものなのかな。まぁ、ここで拾って売っていけば、金策の一つにはなりそう。海の中のモンスターをどうにか出来ればだけど。
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