第169話 久しぶりの戦闘
夕食を食べて再びログインした。地下書庫の本は、まだ少し残っているけど、大体が機械とか兵器とかに関する本だったので、取り敢えず、後回しにする。それよりも、身体を動かしたいという欲求の方が大きいからだ。
スノータウンに転移した私は、すぐに外に出る。今回は、しっかりとHPを管理する事を心掛ける。そのために必要な事は、【真祖】と【吸収】と白百合によるHP回復だ。そこに【貯蓄】の効果を合わせれば、外でも十分に活動出来る。まぁ、定期的にモンスターと戦えたらの話だけど。
そこの部分で言えば、雪原エリアは、安心出来る。その理由は、雪兎の存在だ。リンクモンスターである雪兎と戦えば、HPの補給は十分のはず。
【調教】と【操氷】を入れ替えておく。今日は、スノウには休んで貰う。スノウにモンスターを倒されると、HPを回復出来ないから仕方ない。
「スノウには、申し訳ないけど仕方ないよね。今度、沢山遊んであげよう」
スノウに心の中で謝りながら、蝙蝠を出して、雪原を駆け出す。そして、蝙蝠の超音波から、雪兎を見つけて一気に近づいて、双血剣で首を二度斬り倒す。クリティカル二連続で、雪兎のHPが消える。
「よし!」
これで、雪兎のリンクが始まる。周囲の雪兎が集まってくる。私は、双血剣で雪兎を、次々に倒し続ける。いつもはリンクを広げないために、あまり最初の戦場から動かないようにして戦うけど、今日はリンクすればする程良いので、戦場を変えていく。
雪兎の数が、どんどんと増えていくけど、【操影】と【操氷】を使って、一気に大量の雪兎に近づかれないように気を付けつつ、雪兎を倒していく。
その最中、雪兎とは別のシルエットが見えた。雪熊だ。動き回っていたから、雪熊の場所まで来ていたみたい。
「【感知】で、モンスターの種類まで分からないのは、こういう面で不便だね。今は、雪兎を集めているところだったから、同じように集まってきたら区別が付かない。そういうスキルがあれば良いけど」
【操影】と【操氷】で群がってくる雪兎を吹き飛ばし、高速移動で雪熊の身体に蹴りを入れる。脚がお腹の中にめり込む。その最中に黒百合を突き刺して、出血状態にさせる。直後に、蹴りの威力で雪熊がノックバックしていく。
「ん?」
距離が離れた事で、一つ気付いた事があった。【感知】とは別に、雪熊の居場所が分かるという事に。
「何だろう……? 【血液感知】?」
感覚的に、血を感じていると思った。これは、ある意味で強い能力だ。出血状態の敵の居場所が分かるから、狙うべき相手が分かりやすい。
でも、何だかそれだけじゃない気がする。この感覚は、戦闘の中で知っている。【血液武装】というか、【血装術】や【操血】の感覚だ。
出血状態の雪熊の血液を操って、身体を縛る。この距離では、【血液武装】で血を操る事は出来なかったけど、普通に使う事が出来る。突然、自分の血が自分を縛った事に雪熊が戸惑う。
近づいてくる雪兎は、【操影】と【操氷】で蹴散らしつつ、【血液感知】の検証をしてみる事にした。やることは、血液を武器に纏わせる能力。私の戦い方では、かなり重要な部分だ。
【血液武装】を発動すると、雪熊から血液が飛んできて、いつも通りに双血剣が血を纏う。
「……遠距離でも血装術が使えるって、割と強スキルかも。どんな距離でも強化出来るって事だし。後は……」
黒百合を投げて、雪熊の足元に突き刺す。そのタイミングで、雪熊が血の拘束を解いて、突っ込んでこようとする。直後に、私は、黒百合に纏わせている血を操って、雪熊の脚を突き刺した。雪熊は、それを無視して突っ込んできた。血を使った攻撃は、そこまでの威力はないと分かっていたから、これは予想通り。私がしたかったのは、足止めではなく、遠距離でも黒百合に纏わせた血を操る事が出来るかどうかという事。
それが出来たという事は、ここからも更に戦闘の仕方の幅が広がる。考える事が多くなるのは、ちょっと嫌ではあるけど、面白いとも感じる。
「【共鳴】」
黒百合を呼び戻しつつ、突っ込んできた雪熊の顔を、思いっきり蹴る。顎に上手く命中したからか、雪熊が気絶状態になる。黒百合を掴み、連続で斬りながら、雪熊の真上に跳び上がる。
「【震転脚】」
雪熊の頭に踵落としを入れて、雪熊を倒す。そこに、また雪兎が群がってくるので、一旦全滅させる。
「ふぅ……ものすごい数の雪兎の素材が集まっちゃった。【操影】と【操氷】で、自分に有利な状況を作り出せるのが大きいかな」
雪兎の強みは、集団での同時攻撃で捌く暇を与えないという点にあると思う。それを、【操影】と【操氷】で防ぐ事が出来るから、私には通用しない。だから、私にとっては、良い経験値稼ぎになる。
それに、雪兎の素材でお金稼ぎも出来る。多分、効率は悪いけど。
「さてと、もう少し身体を動かして……ん?」
次の雪兎を探そうと思った直後、【感知】が反応する。また雪熊かなって思って、【感知】の反応の方を見ると、雪女のような白装束を着ている何かが飛んできていた。そう。地面を歩いていない。完全に地面から浮いているし、足もない。
「うわっ……怖っ……」
幽霊系のモンスターだ。表情が見えると、余計に怖い。名前は、氷雪怨霊。今まで見た事がない事を考えると、雪原エリアのレアモンスターだろう。
「怖いけど、雪兎よりも良い運動になりそう。それに、【霊気】と【退魔】の効果を見る良い機会になりそう」
氷雪怨霊は、手から大鎌を生やす。どういう仕組みなのか、凄く気になるけど、気にしている余裕はないだろう。
ブラックレオパルドが、ジャングルエリアにおいて、異常な強さを持っていた事を考えると、この氷雪怨霊も異常な強さを持っていると予想出来る。必ず勝てるとは思えないけど、今の私なら何とか出来るかもしれない。それだけのスキルと武器は持っているのだから。
「よし! 頑張ろう!」
私も氷雪怨霊に向かって駆け出す。久しぶりのレアモンスター戦だ。
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