第15話『審判の時』(3/4)
ヒロは字面としては理解しているものの、具体的にどう保護するのか疑問でもありつつ言った。
「はい。そう聞きました。具体的には、我々が保護をすることで裏を描くことができると……」
ゴダードもその保護の仕方ややり方については言及せずに、話を次へ進めた。
「そうだな。それが終われば今度は、我々を弱体化するワクチンの計画が織り込まれているんだ」
それについてもラピスから聞いていたので、物珍しくはないものの、ヒロは確認のため言った。
「そうですね……。それに一気に感染させて間引くほうが見分けやすいし、全体の時間も作業の効率もいい」
納得し目を伏せてゴダードは頷きながら言った。
「そうだ。そこまで考えられた計画なんだ」
ゴダードは続けていう。
「だからいかに、勇者ウイルスを発症した者を保護できるかが鍵でもあるんだ」
ヒロはこの保護こそが一番難しいと思っていた。素直なら良し、強力な魔法により増長していたら眼も当てられないと思っていた。そこで勇者ウイルスの後のことを、ヒロは尋ねた。
「仮に保護できても、次のワクチンの対策をしないとならないのですよね?」
ゴダードは役割を割り切っているようで、ヒロとラピスがどうやらワクチン担当のようだ。そこでゴダードはヒロに言う。
「そうだ。それはラピスたちに依存するところだ。対抗ワクチンを先に作っておく必要がある」
そこでヒロは気づいたことがあり言った。
「そうか。セトラーたちは、我々を美味しく『食べる』か『食べられる』か、どちらかの方法でしか考えていない」
ゴダードは蓄えたヒゲに手を当てながら考えながながら言った。
「……そうだな。受容とするか強制とするか……」
ヒロはゴダードの言わんとすることを理解し言った。
「前者が全員に罹患させて時間をかけて飼育し、後者は強制的に加工食肉にするイメージですか?」
何をイメージしているのか、目をとじ顎髭を撫でながら、ゴダードは言った。
「そんな感じをわしも予測している。後者は即時実行されるから選択肢がないんだよ」
ヒロふと、人が家畜にしていることを思い起こす。
「人も確かに、美味しくなることがわかっているなら、時間をかけるのは惜しまないですからね……」
ヒロとゴダードが話し込んでいるところに、ようやくリナが加わってきた。ヒロとゴダードは、話し込むといつも長くなる傾向が高い。ゆえに、ある程度は話をさせてからリナが加わるのは、研究室にいるときのいつものパターンだった。
リナは片方の手を腰に当てて、もう片方の手は人差し指を立てながら指揮者のようにふり、身振り手振りで話をした。
「そうよ。ある意味私たち人がやってきたことに近いわ。因果応報かしらね……。でも私たちは生き残るの。そうでしょ?」
ヒロは一も二もなく答えた。
「ええ。もちろんです」
ゴダードも同じく即答をした。
「そうだな」
ヒロは不吉な予感を抱いていた。それは、この力が支配するような世界の変わりようから、私利私欲のため活動する者がいても不思議ではないと思って聞いた。
「スパイが存在することは、ないのですか?」
ゴダードはそれについて即答で返てきた。
「それはないな。ウイルスによると、魔人のとき以外は完勝で傲慢さがあるとのことだ」
リナも同じ結論に至ったようで言う。
「そうね、私も同じことを聞いたわ。だからこそ隙があるの」
かなりシンプルで突破力のある方法でもあり、原資的なやり方の可能性もあるとみてヒロは言った。
「つまり、傲慢さにかまけて、力まかせに来ると?」
ゴダードは腕を組みながらヒロへ答えた。
「恐らくはな」
リナは何か考えがある様子で、ニヤリと口角を上げながら言う。
「仮にスパイもどきがいても、策は二重、三重と張り巡らすわ」
ゴダードもリナが考えていることがわかるのか、同意して言う。
「そうだな。まだ時間はある」
リナはいつになく意気込み、拳を握りしめながらヒロとゴダードに向けて言う。
「生き抜きましょ。日本はあたしたちの物で、セトラーの物じゃないわ」
ゴダードは両腕を腰にあて胸を張りながら言った。それはまるで自信満々と言ったところだ。
「そうだな、大和魂を見せてやるかの!」
ヒロもラピスと協力しながら、自分の役割を果たそうと告げる。
「俺もラピスと相談しながら、やり遂げます」
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