第8話『青ノ力』(4/9)

 ダンジョンにいる魔獣は血も流すし、息もしている。さらに感情もどうやらあるようだ。そうした姿を見ていると、本当に作り出されたのかと疑問すら思えてくるほど精巧に作られた生き物だった。

 

 周囲の環境はというと、ダンジョン内は24時間前に作られた物とは思えないほど、緻密な作りで仕上がっていた。どういう理屈か、壁面はぼんやりと明るく光ることで視界を確保していた。


 さらに、洞窟というよりはレンガを積み重ねたような壁面で人造の構造物にも見える。足元は、石畳で敷き詰められておりとんでも科学としか言いようがない。

 ところどころ、通路は入り組んでおり道幅は車ならなのかつ並走して5台は余裕で通れそうな広さだ。


 ――数分後。


 どこか忍者を思わす黒装束の覆面の者たが白の魔人であるヒロを取り囲む。

 唐突に火炎を浴びせてきたかと思うと、背後から雷撃と思われる物を放ちさらに接近戦を挑んでくる。


 ラピスはヒロに促す。

「やる気よ? やっちゃえば? 今更躊躇なんてすることないでしょ」

 

 ヒロは状況を声に出して確認していた。

「前後左右に一人ずつか……」


 各々が一斉に各部位を狙い踏み込んできた。

 かなり素早く、一瞬にして懐に入られると鋭利な刃物を腹に突き立てようと押し込むものの、強固な装甲でまるで刃が通らない。


 一瞬怯んだ隙に正面から挑んできた者の首をつかむと、そのほかの者がその腕に向けて攻撃を仕掛けてくる。


 肩口を背後から襲う者もいれば脇腹を狙う者や、首筋に突き立てようと飛び上がる者が同時に迫る。

 ところがそのような者たちに構うことなく、一瞬で掴んでいた首を握りつぶすと魔人の手から体は落ちていき、首は地面に転がる。

 そして、地面には膨大な血溜まりを作った。


 敵対者は女性と男性がそれぞれおりいう。

「貴様! よくも仲間を!」


「許さん! 仇を討つ!」


「仲間の死償ってもらうぞ!」


 この時ヒロは呆然としてしまった。

 ラピスもおかしくなったのか吹き出しながらいう。

「おかしいよね? あんたらが襲ってきてそのセリフ」


 ラピスのいう通りだと、ヒロも同じく思う。

「なぜこいつらは、襲っておきながら仇と言うんだ?」


 三人の黒装束は、距離を置き各々それぞれ得意なのか、魔法を使う。

 ところがまるでそよ風以下の物でしかなく、おそらくこの時ヒロの顔をみたら、ひどく無表情な顔をしていたに違いない。


 なぜなら、こんな者かと。


 ヒロは人差し指を突き出し正面にいた一人へ狙いを定めると、そのまま光弾を一発放つ。

 光弾の大きさは人の頭ほどもあるため、命中した首から上は蒸発し消えて仰向けに倒れてしまう。


 そのまま右横にいた者へも放つと胴体より上は吹き飛んでしまう。


 最後の一人は、憎悪を燃やしつつも退却を選択したようだ。

「くそー! 覚えていろ!」


 ヒロは逃げる者はとくに追わず、黙って見送った。

 ここまでは、魔人の力の絶大さで助かったものの変化が起きる。


 ラピスは何かをすぐに察知したのかヒロへ告げる。

「ヒロ……どうやらここまで見たいね」


 自身の手を見つめながらヒロも声に出した。

「これは……」


 魔人の姿は黄金色の粒子に包まれて、霧散するとそこには普段着のヒロが佇む。

 理由はわからず、解除されてしまった。


 時間なのか、魔力ぎれなのか、それとも他の要因なのかはラピスもわからないという。

 そこでラピスはヒロへ別の手段を提案し、このまま続行を伝える。

「ひとまず、あたしが作った液体金属で、大抵はなんとかなるわ」


 そういえばあの注射以来、何もしていないとヒロは思い出しいう。

「液体金属って俺の体内に流れているのか?」


 ラピスは若干答えにくそうにしてヒロの質問に答えた。

「うーん。説明が難しいんだけど……。出入り口がある感じ?」


 率直にわからず、そのままをヒロはラピスへ伝えた。

「なるほど、わかるようでわからん……」

 

 ラピスは強引に話を推し進めた。

「とりあえず仕込んであるから、それで行こー!」


 そこでヒロは先ほどから普段着のままで丸腰な状態なのでラピスを呼び留める。

「待ってくれよ……。それって、どう使うんだ?」


 ラピスは考えずともできると変わらず大雑把な説明に終止した。

「液体金属をヒロなりに思い浮かべてみて、それでわかるわ」


 ヒロは言われるまま想像してみた。すると……。

「マジ? え〜っと……。ウワッ!」


 ラピスは手で口を隠しながらヒロを見てニヤつき笑う。

「あら? イヒヒヒ。ヒロのえっち」


 ヒロは思わず普段見ているラピスを思わず想像してしまうと、目の前には全裸の状態のラピスが存在した。とはいえ、全身が銀色の金属で造形されているものだから彫像に近い。


 ちょっと想像しただけで、ここまでダイレクトにへんかしてしまうのはやや扱いずらさをヒロは感じていた。

「どうしたものか……」


 ヒロが消そうとした時に、慌ててラピスはヒロを止める。

「あっ、ヒロ消さずに待っていて」


 するとラピスは何を思ったのか、何か唸っていた。


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