第3話『東京新異世界研究』(2/2)
このニュース以来すでに、魔法を扱える者が次々と生まれてきており、もはや傍若無人な振る舞いで治安維持が困難になりつつあるわけだ。
当然一部の者は警察や軍との衝突もあり、死人すら出る始末だ。
言えるのは魔力を使う魔法は、圧倒的に力として有利で、戦う者が素人な分まだ隙はあるというところだろう。もう世の中が魔法一色で混沌とし始めてきた。
リナはこうして目立つ形で存在はわかったものの、ゴダード教授の行方がしれない。
少なくとも、テレビで見たリナはかつてのリナではなかった。演技なのかそれとも魔法ウイルスによって変貌したのか、ヒロが知る由もない。
ふとラピスは、ヒロの心中を察していう。
「多分ね、ウイルスの影響が強く出ているのね」
ヒロはどのようなことかわからず、聞いてみた。
「影響?」
ラピスは持論を述べる。
「ええそうよ。あたしはヒロが大好きなんだけど。他のウイルスが個々に感染した対象を気にいるとは限らないわ。ましてや個を尊重せず乗っ取ることも十分あり得るし……」
愕然としてしまうも、リナがあくまでも演じていると信じたいヒロがそこにいた。
「そんなことができるのか……」
ラピスは大胆にもヒロに求婚まで始めていた。
「でもね安心して、あたしはあくまでも一時的なものよ? いずれ肉体ができたらそちらに移動してヒロと結婚するから」
あまりにも唐突なことなので、逆に気が削がれてしまう。
「はあ……」
ラピスは笑いながらも、真剣な眼差しでいう。
「まああまり、悠長なこと言っていられる時間は、ないんだけどね……」
急なラピスの変容と暗雲が立ち込める未来像が予感させるものであるため、ヒロは尋ねる。
「それは一体……」
ラピスは囁くようにいう。
「あたしがヒロを最強にしてあげる! イヒヒヒ」
なんというか、締まりのない会話だった。
「はぁ……」
ラピスは楽しそうにクルクルと回りながら、 ヒロに魔法をかけるように振る舞う。
「ララピス・ラピス、ララピス・ラピス。大きくな〜れぇ〜。イヒヒヒ」
ラピスの特徴は、ウイルスの中でも技術特化。
なんでも技術で解決できると信じている。
実際ヒロの肉体強化や液体金属などを開発し、相応の強さにラピスは強化してくれている最中だ。
ラピスは言う『技術は世界一よ!』と。
ラピスはヒロが好きすぎて、ヒロとの子を成し、ヒロとラピスの子だけで占められた町を作るのが夢。
ヒロ当人は、このような状況でも一つ気がかりなことがあった。
あの感染する直前に見た物だ。体内に吸い込まれていく力の本流と『ゲボアに気をつけろ』とは何なのか。
ヒロはぼんやりとしながら、研究室のパソコンで今回の魔法事件に関するニュースを調べていた。
想定した通りというか、異質な力をもってそれが自由にできると、皆やり放題で好き放題に振る舞っている。しかも力は大きく、個人差はあるにせよそれぞれが様々な魔法を駆使していた。
ここで調べているのも研究室に通うのも、気心知れたリナやゴダード教授が心配だというのが本心だった。
ヒロの人付き合いはほとんどなく、リナとゴダード以外の関わり合いがない。
しかもこの研究室は変わりすぎており、学生ではヒロしか参加していないのも事実。だからこそ余計に気がかりだったのかも知れない。
リナはテレビで見た通りの我が道をゆく形で突き進んでおり、所在という意味では判明したものの依然として意図がよくわからない。
導く』などと言っているものの、たった数日程度で得た知識や経験を知る程度だ。
そのため、何か別の目的があり、あのように派手な態度をとっているとしかヒロは思えなかった。
そんな時だ、またとんでもないニュースが目に飛び込んでくる。
思わずヒロは言葉を漏らす。
「おいおい、マジかよ……」
ニュースの見出しにはこう記されている『統合魔法国家日本王国』を目指すと。その元帥としゴダード教授が写真付きで掲載されている。
あの慎重でありながらも果敢な教授がまた随分と大胆なことをしでかしたという印象でしかない。
しかも彼がウイルスを全世界に拡散しようとまで言い出している。
唖然としながらも書かれている記事を目を皿のようにして一字一句読み込んでいく。
ここでもリナと同じく、『導く』と言い出している。
どういうことなのか、互いに合わせているとも思えないし、かと言って違うとも言い切れない。
悩んでいると、そこにラピスが囁くようにいう。
「はじまったわね……」
何が起きたのかまるでわからないと思って言う。
「一体、何がなんなんだ?」
するとラピスはそんなことも知らないのと言いいたげな表情を向けてくるという。
「あたしたちの本当の目的よ」
何を言っているんだと思うものの、ウイルスたちにそうした何かがあっても不思議ではないとヒロは思い言う。
「まさか、日本征服とかじゃないよな?」
すると首を横に振り、ラピスは言った。
「そういうものじゃないわ。もっと大変なことよ。それは……」
ヒロはただ不安でしかなかった……。
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