第25話 戦場
「海は広いなあ」
「そうだが、俺は前回の任務を思い出して憂鬱だよ」
館野がぼやく。
「前回の任務?」
「ああ。俺が研究所へ担ぎ込まれた原因」
「任務中の怪我だったのか?」
「そうだ、俺もモンスターにやれらたし、散々だった」
「そうか」
今回の任務、俺達の他にも、十人ほどのサポートアーマー部隊がくっ付いてきている。
場所は、前回奴らが逃げ帰ってきた所。
聖獣型ロボがいるところ。
『放射線濃度が上昇中、艦内へ避難』
アナウンスが流れる。
「入ろう」
艦内は、出入り口がすべて二重になっており、一段目でエアシャワーを浴びる。
ランプグリーン点灯で、内側のドアが開く。
「俺達は、また部屋で待機か」
「そうだな。酒でも飲んで寝よう。作戦が始まれば飲めないしな」
寝ていると、艦内放送が来る。
『総員準備』
「行くか」
ベッドメイクをして、構える。
階下の、倉庫部分に設置された更衣室で着替え、サポートアーマー改三型へ乗り込む。
俺達の四機は、いつもと違い、つや消しブラックに塗られた。
電波吸収塗料らしい。
ヘッドセットから、命令が届き出撃を開始。
艦内では、サポートをオフにして移動。
歩いて、外に向かう。
後部ハッチから出たとき、外は砂のため足を取られる。
〈足下が不安定だ、気を付けろ〉
〈はいよ〉
館野だな。
ここではまだ、無線が通じたがレーダーかく乱用の長時間浮揚タイプジャミングスプレーが噴霧中のはず。
〈無線のモードを、赤外に変更。アシストオン。行くぞ〉
そう言って、走り始める。
陣形は、横並び。
敵を発見後。包囲。
そこまでは決めている。
飛ぶように走り、荒廃し破壊された市街地を進んでいく。
周りに、探査レーダーを走らせる。
まだ濃度が薄く捕えられるが、陣形が崩れている。
ビルのせいで狭いし、俺達の機体が早すぎる様だ。
〈その場で、スリーマンセル。周囲警戒。余った一機は俺達と合流〉
全体で、ダイヤモンド型に陣形を構成、汎用型にスピードを合わせて進んでいく。
〈来ないな〉
〈開けたら一度、探査レーダーを走らせる〉
〈りょ〉
そして、市街地を抜けて、高速道路だろう高架を進むか地面を進むかで悩むが、構造物の強度が不安だと考えて、下道を進む。
すると、ぽつんと立つ四足歩行型の戦車が目に入る。
〈前方十一時。敵発見。攻撃とともに地下へ向けて、探査。ワーム型注意〉
初めての銃。狙いをつけロックと、射撃アシストをオンにする。
三点バースト射撃を開始。
だが敵は躱し、こちらに向かってくる。
予測方向へ、データリンクで都合五台の機関砲が火を噴く。
壁となって迫る弾は避けられなかったようだ。
まず、一機撃破。
地中の移動物は存在なし。
〈よし。警戒しつつ前進〉
周囲のカメラで、町の様子は撮影をしている。
人がいない証明が、必要だと聞いている。
その後も、散発的に現れる個体を撃破して進んでいく。
だが、現れる敵戦車は少なかった。
だが、警戒中の機体が撃破されたことが、敵側に通じていなかっただけであった。
思ったより、ジャミングスプレーの効果が高かったようだ。
大回りに、警戒をしつつ艦へ帰投する。
後部ハッチが閉められ、放射性物質洗浄用のシャワーが降ってくる。
船の中では、護衛艦が警戒してくれているはずだが、ジャミングスプレーが噴霧中は、船のカメラのみが警戒の要となる。
動く物は画像解析により検知され、自動でロックされる。
後は、撃つだけ。
サポートアーマー改三型は、省エネタイプだが実働時間は六時間程度。待機状態で九時間。
あまり広くは探査できないので、チェックしたところに陣を広げていく必要がある。今は、上陸部隊が作戦中で、その内命令が来るだろう。
次からは、コンテナハウスで野営だ。樹脂製で、柱部分に空気を入れれば建ち上がる。複数それを建て、その上に全体を覆う天井が張られる。
それが簡易型の基地となる。
そう思っていたら、補給が終わったから、移動がてら前線基地の警備という命令が来た。
早速で、人使いが荒い。
ぶつぶつ言いながら、また出撃。
基地へと向かう。
到着すると、除染とコーティングが、まだ終わっていない段階だった。
待機状態で、基地の周りを全周囲警戒。
すると、時たま四足歩行タイプが顔を出す。
一時間に一回程度。
待機モードで、内気の浄化はしてくれるが、エアコンも弱いし息苦しい。
静かにしていると、発電システムのうなりが聞こえる。
燃料残量とにらめっこし、ただ立っている。
時々発砲音が外部マイクに拾われるから、敵は全方位から来ているのだろう。
〈ぼちぼち順番に補給。汎用機各方向から一機ずつ〉
命令すると、俺の右横から順に補給に戻る。
基地は設営中だが、補給はできる。
長時間の待機のため、とうとうスーツのトイレも使う羽目になった。大人になってお漏らしをする感覚。
慣れないなこれは。彩佑達は大丈夫だろうか?
克己が心配するとおり、我慢に我慢をして耐えきれず使ったようだ。
誰も見ていないが、真っ赤になっていた。
大人になって、トイレ以外でする排泄は精神的に、ある種の背徳感が支配するようだ。
そして、そいつらはやって来た。
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