第25話 初めての城

やっぱ順番大事だ。


一個村すっとばして、その先で手っ取り早く経験値稼ごうとして痛い目見るのと同じだ。



「ようこそ旅の方。」

城の入り口で声をかけられる。

デジャブだ。

しかも城なのにALLウェルカムなのか。


どんどん中に進むと、簡単に王の前に行きついた。


「ようこそ旅の方。そなたは何の職業を希望する?」



これって!

これって!

これって!

子供の頃噂に聞いていたアレじゃん!


自分の職業変えれるやつだ!



オレはまだ小さかった頃のことを思い出した。

学校で、「どこかの王様が、生まれ持った職業を変えてくれるらしい」って噂で持ちきりになったことがあった。


家に帰って親父に

「オレ、いつか『遊んで暮らす人』になりたい!」

と言ったら、

「お前はずっと『勇者』だ!」

って、グーで殴られた。


グーで殴るとか、今なら大問題だ。



でもさ、オレだって、なんとかのムチとか、かざすだけで楽できる杖とか持ちたかったんだよ…



「ねぇ、もしかして『魔物』も変えられる?」

と、キルトが聞いてきた。


『魔物』は職業なのか?


「わからない。」

そう答えると、キルトは王様に聞きに行った。


「あの、おれでも職業変えれますか?」

「うぬぬ…魔物は職業ではないので変えることはできぬ。」

王様は、魔物のキルトにひるむことなく即答した。


「…そっか。」

キルトはそう言うと、黒い羽根を広げてどこかへ飛んで行ってしまった。



「お主は何の職業を希望する?」

王様がオレに聞いて来た。


もちろん、「遊んで暮らす人」だ。

子供の頃から夢は変わっていない。



けど…



ここでオレが「遊んで暮らす人」になったら、キルトは?




「あー、このままでいいです。」

オレはそう言って、その場を立ち去った。




あ…

そう言えば、隣の塔の鍵は?


誰も何も言わなかった。

そもそもここ、入り口に一人と王様しかいなかったし。


どこかで鍵を手に入れても、どこに鍵がかかった場所があったかなんて…絶対忘れてる…

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