時齢

輝空歩

時齢

きっかけはあの映画だった。 ほんの一日前のことだが、夜三時。CCレモンの横のパソコンで、俺は映画を探していた。もうすでに、課題を終わらせる気などなかった


カーテンで隠された窓の向こうでは少しずつ光が街に戻ってきているころだろう。それでも僕は、変わらずに光がともる部屋の中僕はパソコンで映画を探す。 まるでただ落ちる布団を探すように。アプリをスクロールしていった。


“あ..”


見覚えのある映画がスクロールの波に流されている。僕は流れを引き止め、もう一度見た。そうだ。あの映画だ。 まるでその記憶が映画の内容だったかのように


その情景が浮かび上がってくる。




中二?中一の秋か夏か、僕は部活の女の子とこの映画を見に行ったんだ。 あれが初めてで最後の、「デート」と呼べるものだったろう。異性と出かけるというのは初めての経験で。塗りつぶされた僕の中学生活の中では、それこそ自分からかけ離れた映画のワンシーンのように。今でも輝いている。




たしかその一週間後、彼女には彼氏ができたんだった。年上だったか, どこの部活だったかも覚えていないけれど、彼は僕よりもっと、ずっと高嶺の人だった。


バス待ちの時に見えた二人の歩く姿は何の付け所もなくお似合いで、それが悔しくて、僕は走った。


そこからどうなったのか、僕はそのまま家まで走ったのかわからないけれど。


僕と彼女はその瞬間から、ただの部活仲間になった。


….



私は覚悟を決めて再生ボタンを押す。


・~~~


暗い画面に浮かぶタイトルの文字。流れ始めるBGMの音。 それらは僕の心をゆるやかに吸い取っていった。あの時から5,6年。染み付いた僕の心事を、強くなった心を、型作られた力を。


ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと。


過去に戻るように。覚えたものが消えるように。忘れたものを取り戻すように。


反作用的に心が戻っていっく。 


………………………………………



まるで世界の常識思い出したかのようだ。周りが疑わしく思う。 中1も中2も中3はっきり、分かれて思える


僕は数週間の休みを申請するメールを大学に送り付け、パソコンを閉めた。


本当の自分に、戻れた気がした

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