1月31日 14:50 クラブハウス内・新チーム背番号
3年部員がチームを離れて1ヶ月近く。
下級生にとっては、主要番号を誰が引き継ぐか、という問題がある。
特に陸平の6、瑞江の7、立神の11は3人が3年間つけていたために、非常に重い番号となっている。
この件については、結菜と我妻も当人や陽人の立ち合いもあった方が良いのではないかと提案していたが、当事者にとっては「いなくなる者が口出しするのもどうかと思うし」というのが正直なところである。
もちろん、その他番号もそれなりには重い。
U17ワールドカップメンバーがつけていた鹿海の1、林崎の4、稲城の8、園口の9、戸狩の16などがそれにあたる。
その中で、誰からも文句が出ないのは1番だ。水田以外につけるものがいない。
また、9番は園口がつけていたとはいえ、元来は純然たるストライカーがつける番号だから、万丈が向いているだろうというのも衆目の一致するところだ。
16は戎が立候補している。体力には依然として若干不安があるので、フルタイムでプレーするよりスーパーサブ的な希望もあるのかもしれない。
結菜が想定した7番候補の筆頭は加藤である。
司城や草山も候補ではあるが、浅川も含めて10、14、21と比較的良い番号を保持していて、本人に変えるつもりがない。
番号を変えるつもりがある選手の中で、もっとも期待できるのは加藤だ。瑞江ほどのトータル能力の高いアタッカーではないが、ドリブルなど匹敵する能力ももっている。
この際、重圧をかけてより覚醒してもらいたいという意図があった。
しかし、打診したところ本人は「8がいい」と答えた。
結菜は「8?」と目を丸くした。
稲城のようなタイプではないし、世間一般でもドリブラーが8番をつけるのは珍しいイメージがある。
「7になると、また球離れが悪くなりそうで……」
「ああ、そういうこと……」
ドリブラーのイメージが強い7番となると、周囲……特に校外が「もっとドリブルを」と期待する。球離れの悪いドリブラーから段々バランスのとれたプレーができるようになってきている状況だから、本人はむしろドリブラーのイメージのない番号が良いらしい。
本人に考えがあってのことならやむをえない。
「そうなると、7番はいないなぁ」
「無理に2年から選ばずに1年からでもいいんじゃない?」
我妻が答えて、辻と末松も同意している。
「1年か……」
1年にも瑞江のような選手はいない。
新人戦では白籏凛久がつけている。まだ復調途上だが、元々は優秀なアタッカーという存在だ。
完全復調すれば、あるいは近い存在にはなるのかもしれない。
「……じゃ、期待の表れということで7番は凛久ということで」
「11も特にいないから、来年はもっと頑張れということで、至輝でいいんじゃないか?」
辻の言葉に末松が目を丸くする。
「ええ、俺、たまに交代要員で出たくらいだぞ? 17とか目立たない番号がいいんだが」
「それは甘えだ。立神先輩の番号を受け継ぐくらいして、自らにプレッシャーをかけないと陽人さんのようにベンチの重石になってしまうぞ。それに17が目立たないなんて言うと芦ケ原さんが怒るぞ」
「そうよね。兄さんは選手としてはアレだったからベンチしかなかったけど、至輝はまだまだ選手としての自分を諦めるべくじゃないと思う」
辻と結菜は、遠く名古屋にいる陽人が何度もくしゃみをしていそうなことを口にして説得を試みる。
「……分かった」
末松が説得に応じた一方で、我妻が苦笑いしながら首を傾げている。
「重石とかアレとか、芦ケ原さんより失礼なことを、天宮さんに対して言っているような……」
残ったのは6である。
この周辺……2番から6番にかけて、守備的役割を担う選手が空いている。
「響太(神田)は3がいいって言っているのよね」
「目立ちたがり屋だから6つけたがると思ったけどなぁ」
「6は中央のイメージがあるのと、あと『いわゆる一つのですねー、3がいいですねー。3でキャプテンでミスター高踏ですねー』って似合わないモノマネをしていたわ」
「3でミスターは野球だと思うけど」
我妻が苦笑するが、結菜も言うように6はセンターのイメージであり、2や3の方がサイドバックの番号であるから本人が3がいいというのなら否定する理由はない。
「候補者としてはツル(弦本)、洋典(神津)、功志郎(神沢)か」
「ツルは陸平さんと稲城さんに鈴原さんがいたからどうしても出番が限定されていたけれど、新チームではもっと中心になってもらいたいのよね。6番与えてしゃきっとさせたいところだけど」
「あるいは、聖恵君を6にして4と5を洋典とツルにする手も?」
気づいたら身長が185センチまで伸びていて、技術的なレベルも高く、フィジカルも稲城のアドバイスで無駄がない。
そろそろ身長の伸びが止まり、じっくりと鍛えて試合出場が増えそうな聖恵は確かに陸平級の期待をされても不思議がない。
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